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身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ

2006年10月7日付け

 □インディオの言語について(2)□
 例えば、筆者の名前はTAKASHI MATSUEだが、このような難しい名前をつけている他の民族は少ないわけで、そこでブラジル文化により以上に馴染もうと思えば、ブラジルの現在の文化主流を占めるポルトガル文化を取り入れることが必要なのだろう。
 その第一は、ファーストネームにブラジル名を追加すればいいわけで〔ロベルト〕とか〔ルイス〕とかを最初の名前にしてロベルト・タカシ・マツエだとか、ルイス・タカシ・マツエとかにすれば、もっと早くブラジル化できると思う。
 しかし、純粋に日本人の筆者には、在住三十二年に至っても何か抵抗があって、まだ実行できないでいる。
 日本に例をひいてみると、幕末から明治に日本に来た南蛮人が日本名をつけたのと同じことのようだ。そして現在の日本でも外人が日本に帰化しようとすれば〔必ず日本名を求められる〕のと同じように思う。 面白いですね、力士やサッカー選手の日本名。
 インディオでも同じで、ブラジルに同化しようとした部族では、各自ブラジル名をつけているが、未開地に住んでいて、アイデンティティーを捨てていない、西洋文明化していない種族では、インディオ名だけで生活しているし、ブラジル語をも理解しないインディオがまだ沢山いる。
 この事実は凄い。ポルトガルがブラジルを同化して五百年以上も経った現在でも、そのブラジル文化を拒否し続けている民族がいる、という事実がある、という真実。
 さて、いよいよインディオ語講座。
 現在、筆者はインディオの言語について、その流れを調べているが、この調査したインディオが何族で何語を話しているのか、それについては別の機会に譲って、今回はこの採集旅行で出会った、彼ら三人から学んだ言葉について、その一部を記述しておく。
 まず〔私は 水を 飲んだ〕という文章だが、これは〔ONE NOTERA NATTHUN=オネ ノテラ ナチュン〕となる。文法上は〔水を 飲んだ 私〕という表現にするそうだ。
 食べる=ノカナカディンという彼らの言葉は〔食事する〕という自動詞適用法で使われるという。〔ノカナカディン ナチュン〕で表現され、〔メシを食った ワタシ〕という直訳となって〔私は食事をしました〕という文章で使われるそうだ。
 また、男が話をするときには、どうしても女の話からスタートするのはインディオでも同じようで〔ゼメハルティン=若い女〕とか〔ワイエハロン=綺麗な女〕といいながら、お互い、ニターっと笑うことになる。
 ワニのことをブラジル語で〔ジャカレー〕というが、これは彼らの言葉〔イアカレン〕という単語から派生したものだそうだ。
 アイ・スポット・シクリッド〔=日本ではピーコック・バスといわれるアマゾンのスズキ科の有名な魚〕をブラジル語では〔トゥクナレー〕と呼ぶが、これも彼らの言葉の〔クナレー〕から派生した言葉だという。
 今回はインディオの言語について、現地での採集の合間を利用してノートしてみただけなので、ぜんぜん詳しくないし、この言語が使用されているのはブラジルとボリビア国境地域、アンデス山脈からアマゾン盆地に降りた地域に住む種族の言語である。
 彼らの言語の多くがブラジル語の単語に引用されている、という事実からして、恐らくこの種族はブラジルでも最大級の〔トゥピー・グァラニー族〕の系統だろうと思われる。
 インディオの言語を考えたとき、それぞれの種族で異なり、またアジア地域のどの辺から、どのような時代に、どのようにして、この地域に持ち込まれたかで非常に違うのだろう、と筆者は考えている。
 インディオの言葉について研究しても、一人の人間が一生かけても終わらないような〔インディオ語学〕という領域なので、問題提起の章ということで、今回はこの辺で終わる。つづく       (松栄孝)

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