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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年11月29日付け

 ブラジル社会における「ジャポネース」という言葉がもつイメージは、実に興味深い。先日、サンパウロFCがサッカーブラジル選手権優勝を決めたとき、モルンビー蹴球場を埋めた七万人のファンから「テレ、ラマーリョ」との大声援を受けたムリシー・ラマーリョ監督は、感極まって「テレ以外はみなジャポーズだ」と語り、翌日の伯字紙スポーツ面にはそのセリフが大見出しになった▼通常、サッカーの試合で「ジャポネース!」と声が上がるのは多くは罵声であり、選手がミスをしたときに「ペルナ・デ・パウ」(木偶の坊)の意味で叫ばれる▼今回もそうかと思って記事を読むと、同チームを二回も世界クラブチーム優勝(トヨタ杯)に導いた名将テレ・サンターナの弟子である同監督は違う意味で使ったようだ。本文を詳しく読むと「サンパウロFCの監督経験者にとってテレは怪物だが、それ以外はみなジャポネースだ」と語っており、ぶっきらぼうなことで有名な彼特有の表現で、努力型の秀才という意味だと分かる▼九〇年代中頃、同チームを一時預かったが思うような成績が残せず、ファンからの強烈なプレッシャーを気に病み辞めた苦い経験がある。地方チームのドサ回りをし、中国にもいった。満を持して戻ってきた今回、この大歓声は「何ものにも代え難い喜び」だった▼つい先日、MPB(ブラジル大衆音楽)の大御所、音楽家トム・ゼーも取材に答えて「僕は天才じゃない。受験のために一生懸命勉強をするジャポネースさ」と語っている。けして悪いニュアンスではない。勤勉なイメージは残したいものだ。(深)

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