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大らかなブラジルに感謝=平間靖旺

特集 コチア青年移住55周年・花嫁移住51周年

ニッケイ新聞 2010年10月23日付け

 サントスに上陸したコチア青年達は、一抹の不安と野望を胸にサントスの埠頭からスタートしました。 
 あれから50余年、コチア青年と言われた諸兄も「還暦」はもちろん、「古希」も過ぎ、「喜寿」「傘寿」を迎えつつあります。 
 陸上競技のマラソンは42・195キロメートルを走れば完走ですが、人生マラソンは何キロメートルになるだろうか。
 私の53年間を計算してみますと、1日平均5キロメートル×365日×53年=96、725キロメートル、日本への2往復以上の距離になるようです。 約10万キロメートルは決して平坦なコースばかりではありませんでした。
 配耕地での見習い、独立、転業、結婚、子供の養育、付き合い、奉仕等々には、山あり谷ありの連続でしたが、先輩、友人からのアドバイス、妻と子供からの声援を受けながら走り続けています。
 時々、先駆者から開拓初期の話を聞く事があります。言葉でいい尽くせない苦労があった事も、旺盛な開拓心と強い精神力をもって、家族の幸せを願い日本人の誇りをもっていた事。
 ともすれば失いそうになった希望をお互いに励ましあい、助けあって日本人の植民地をつくり、第一に学校で子供の教育に取り組み、教育こそ、将来子供が幸せになるのだと信じ熱心に努力された事。その御陰で今日ブラジル社会で信用ある日本人の基礎をつくって下さいました。 
 このような先駆者の働きと信念に深い尊敬と感謝を新たにしております。そして、日本移民を快く入れてくれた寛大なブラジル国に、心から敬意と感謝を忘れてはならないと思います。
 ロンドリーナ在住の沼田信一さんが「日本人がつくった植民地がどの位あるだろうか」と調べたところ、その数、実に2350の植民地ができたことがわかりました。
 サンパウロ州が最も多く約1800(75%)、パラナ州約470(20%)、南マット・グロッソ州約50(2%)、その他が3%。沼田さんはこれを調べるのに10年かかったそうです。 
 私は宮城県出身、第1次9回、1937年2月11日(建国記念日)生れの73歳、アポゼンタード。ブラジル丸で40日間の航海を経て、1957年6月12日サントスに上陸しました。
 あれから53年、夢と希望は果たしたのだろうか、と思うとき、今、はっきりと云えるのは「ブラジルに来て良かったなあ」ということ。「我が人生に悔いなし」と大声で叫ばなくても、50余を過ごしてきたブラジルの大地に、大らかなブラジルに、感謝の念を新たにしております。 今は週に3、4回パークゴルフを30人位の仲間と和気藹藹。「健康にはこれが一番だね」と、いいながらコースを廻っています。2カ月毎に行われる大会は150名前後の参加者で、プレーを楽しみ、親睦、交流を深めています。 
 20歳から43歳までは「第一の人生」の始まり。配耕地は旧コチア国道19キロメートル加藤保松養鶏場で、見習いの4年間を終え、いよいよ独立の時、赤間学院の赤間みちえ先生に相談に行き、コチア産組養鶏課から誘いがあることを話しますと「自営する前にブラジルは広いのよ、良い所も沢山あるからコチアに世話になって、それからにしては」とのアドバイスを頂き、養鶏技師としてコチア産組に14年、北米系飼料会社に5年勤めました。 
 1963年にロンドリーナに転居。北パラナ地方の養鶏指導に当たり、後の自営の勉強になりました。 
 結婚は32歳、妻は一世、子供は1女2男に恵まれました。 
 44歳から63歳代は「第二の人生、自営、教育」。ブラジルに来た目的、希望は自分の土地で自営することでしたので、採卵養鶏、コーヒー、果樹、野菜等を14年間営み、子供たちの教育費つくりにかかりました。 
 子供達には教育が財産だから自分の好きな勉強をしたらいいと、各自で決めさせ、現在下記の所に勤めています。 
 長女、法科卆、司法判事、クリチーバ。長男、工業デザイナー卆、銀行勤務(バンコ・オブ・アメリカ)、副支店長、北米ボストン。次男、経営科、会計士、法科卆、裁判所勤務、クリチーバ。 65歳から「第三の人生、人生を楽しむ、夫婦で趣味を持つ、奉仕」。2000年、養鶏場、農場を売却、アパートを購入(貸しアパートにしている)。
 パークゴルフ、カラオケの他に妻は舞踊、茶道、琴、私は文協の評議委員長、高齢者の集いのコルデナドール、郷土民謡教会支部長、アリアンサの高齢者部長、パークゴルフ顧問、宮城県人会ロンドリーナ支部長等の役職があり精一杯やっているつもりです。 
 子供達は私達の人生を楽しんでいる姿、日系社会での活動をみるのが何より嬉しいと、言っているようです。 
 2人での旅行もできました。訪日は6回。特に娘夫婦と車でフォルタレーザまで30日間、翌年にはチリ、アルゼンチンの30日間の旅は印象に残っています。今年2月アルゼンチンのパタゴニアの観光もよかった。
 さて、コチア老年諸兄、健康管理は良くいっていますか。「俺は歳だから」「いまさら俺が」と言っていませんか。「自分の健康は自分で守る」を念頭に残りの人生を楽しみましょう。 
 在ブラジル日本人の健康のために、森口幸雄博士著、ニッケイ新聞社発行「すこやか長寿秘訣」を熟読、実行をお勧めいたします。 
 最後にコチア青年移住55周年式典が盛大かつ有意義に終了し、コチア老年諸兄のご健勝とご多幸を祈念いたします。(ロンドリーナ文化体育協会評議員長、ブラジル・パークゴルフ協会顧問)

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