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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(10)

ニッケイ新聞 2013年9月25日

「ふ〜ん、今時めずらしー。しかし、なんであんな所に飾ってあるんだ?」
【買ったはいいが、置き場所がなくてあそこに放置したんだ。ところが意外な事に、それ以来、店が面白いほど繁盛し、前からある七福神と競って店を盛り上げているそうだ。料理はともかく、神ダノミで繁盛する食堂は世界でもあそこしかないだろう】
「なんでシチフクジンと競っているんだ?」
【七福神の中の『大黒天』は食堂の守神で、それと競っているそうだ】
「そんなに幸運をもたらすのなら、有名な仏像だろうな」
【国宝や重要文化財じゃないだろうが、台座の裏には文明元年と記された年代物だそうだ】
「文明元年とは何年前だ?」
【観音像が作られた理由は疫病とかが流行ったからだろうと考えると、例えば、鎌倉時代とか、・・・、と、すると七、八百年前かな】
「そんなに古いジゾウであれば盗品かも知れないな」
【それから、あれはジゾウではなく観音さまだ。それに、オーナーの前田がサンパウロ市(サンパウロ)に因んで『聖(ひじり)観音』と命名した】
「ヒジリとサンパウロとどう云う関係があるんだ?」
【サンパウロは漢字で『ひじり』と書く、だから・・・】
「サンパウロ・カンノンにすればいいのに」
【カタカナじゃ観音さまが可哀相じゃないか。しかし、偶然に同じ字で『聖(しょう)観音』と云うのが日本にあるそうだが、前田は強引にそのままにした】
「二世にはカタカナのサンパウロ・カンノンの方が、ピンとくるんだがな」「聖(ひじり)観音の方が、聞こえがいい・・・」
「しかし、そうやって、勝手に新しいカンノンを創っていいのか?」
【前田もちょっと勉強したらしく、彼によれば、観音さまは色々な姿に化身して現れる仏さんだから、もう一つくらい増やしてもいいだろうって言っていた】
「じゃー、食堂に似合ったミソシル・カンノンとかツケモン・カンノンにすればいいのに」
【もっと品のある名前を考えろよ、例えばサシミ観音とか定食観音・・・】
「同じ様なもんだ」
【ジョージからの電話でなにか面白い事件でもあったのかと期待したのに、最近、日系人が絡んだ傷害事件が起きているから、その件かと思った】
「日系人! 犯人は一世か?」

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