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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(34)

ニッケイ新聞 2013年10月30日

「ええ、それから数年後、あのビラ・アマゾニアの日本人無縁墓地に対岸から供養され、その最中、河に入水して消息を絶たれたのです」
「ええっ、どうしてそんな事に?」
「謎と云うしかありません。遺体も見つからないままです」
「アマゾンと云う大自然は・・・、一筋縄ではいかないですね」
「そうなんです。そう思います・・・」
「・・・、ブラジルへは、いつ頃から僧侶が来たのでしょうか?」
「ブラジルへは、百年前の最初の移民船の笠戸丸で『茨木日水(いばらきにっすい)』和尚がサントス港に上陸したとサンパウロニッケイ新聞に載っていました」
「最初の移民船で既に僧侶が来られたのですか。どんな方だったのだろう」
「宗派は本門・・・なんとか、と書いてありました」
「本門と云いますと、『本門法華宗』かな? とすると、『法華経』の後半部を基にして、御題目は『日蓮宗』の『南無妙法蓮華経』でしょう」
「そんな名前ではなかったですね。本門佛・・・りゅう宗とか」
「すると、本門法華宗から分かれた別の宗派ですね」
「新聞によれば、戦前のブラジル移民社会の代表的な宗派だったそうです」
「正に、移住者と共にブラジルに渡った僧侶ですね」

「最初の笠戸丸がサントス港に到着したのが・・・、来年二〇〇八年が丁度移民百周年ですから、それから逆算するとー、一九〇八年ですね」
「アマゾンでは原住民との間に問題は起こらなかったですか?」
「インディオとの摩擦は全くありませんでした。それは、耕配地がインディオも住まない土地でしたから」
「インディオも住まない所?」
「インディオが部落を設置する条件は大変厳しいのです。まず、第一に絶対に水没しない平らで、相撲に似た格闘技や祖先の霊を弔うダンスが部族全員で行える広〜い運動場のような場所がなくてはなりません。第二に清らかな飲み水が湧き出る所、第三に狩が出来る密林と魚が豊富に獲れる川が近くに有る事、四番目に主食のイモや果物、それに薬草も採れる所、五番目は他の部族や白人達から遠く離れている事、六番目は病気がないところ、七番は彼らの守り神が宿ったところです」
「神様が居るところ! 全部の条件を満たすと、まるで極楽浄土ですね」

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