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公共交通機関より優遇される自動車産業

 メトロの乗り換え駅セーはもちろん、お隣のリベルダーデ駅でも通勤時間帯には4、5本をやり過ごさないと乗れないのが当たり前だ。酷い路線では1時間待ちまであるとか。車の渋滞もすさまじくバス通勤も大変だ。98年と比較するとブラジルの人口は28%増だが、車は175%も増えた。「経済が発展した裏返しか」と半ば諦めていたら、それだけではないらしい▼グローボ紙2日付電子版記事によれば、08年の金融危機以来、税金免除などの自動車産業への優遇処置が目立つようになり、IPI(工業製品税)減額や、インフレ上昇を防ぐためのガソリン値上げ抑制支援などに掛かった費用は、約194億レアル(8867億円)。これは13年に公共交通機関向上のために投資された102億レアルの2倍近い金額だ▼同費用はサッカーW杯の工事費約144億レより巨額で、ボウサ・ファミリアの10カ月分に匹敵するとか。これを読んで、庶民の足であるバスやメトロより自動車産業を優遇するのがPT流の政策だったかと考え込んだ▼たしかに自動車産業の従事者は多く、その休業や失業を避けたい意図は分からなくはない。だが、そのために庶民の足が犠牲にされるのは、いかがなものか。それだけの投資があれば、都市部の通勤電車やバスの満員状態が多少なりとも解消され、どれだけ市民が助かることか。より多くが公共交通機関を使う様になれば、車の渋滞も緩和され排気ガスも減る▼野党支持者でなくとも、ルーラ前大統領のおひざ元はブラジル自動車産業の発祥の地で、しかも選挙前に悪い数字は出したくなかったのかな―と勘繰りたくなるのでは。(深)

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