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不景気風に身内の突き上げ=この難関どう切り抜ける= ジウマ政権に最大の危機=反政府デモに200万人=駒形 秀雄

「Fora PT(PT出て行け!)」と連呼する群集

「Fora PT(PT出て行け!)」と連呼する群集

 3月15日、何時ものような穏やかな日曜日でしたが、この日、今までになかったような大規模の反政府デモがブラジル全土の主要都市で催行されました。日系人の皆さんは大抵このような抗議デモには参加されないので、余り身近に感じなかったかも知れませんが、サンパウロ市のパウリスタ大通り、それに接続するメトロなどは黄や緑のシャツを着た人、人、人で、むんむんとする熱気で溢れ返っていました。抗議デモには「ジウマ追放」「汚職撲滅」のプラカードが沢山見られましたが、政権発足して2カ月も経っていないのに、何故こんな事態になったのでしょうか。

 一体、政権の当事者はそんなに国民一般の気持ちから離れているのでしょうか? そんな疑問を解き、私達や子弟が生活するブラジルは今後どう変わっていくのか? それやこれやを皆さんと一緒に調べてみたいと思います。

▼ドン底に落ちたジウマ人気

 ジウマ政権は今年1月、閣僚を一新してその二期目がスタートしました。経済閣僚には経済、財政の専門家を選び国内外から好評でした。また、それぞれの省の大臣には各自の利害に配慮して、与党のPT、PMDB、PPなどに上手くポストを配分し、議会では与党がほぼ過半数を占め、順調な船出と思われていました。
 ところが、今年1月、2月になって昨年の経済実態を示す数字が出て来始めたら、内容が悪いのです。国の経済成長率はほぼゼロ、石油は国際価格の下落に大スキャンダルが重なり、石油公社の信用と株価はガタ落ちです。産業の中心の自動車産業はどうかと見ると、これまた販売減で310万台、前年割れの惨状でした。
 こんなに景気が悪いなら、日本のアベさんみたいに、金利でも下げて金の廻りを良くしてくれるかと思えば、逆に何度もこれを引き上げて12・75%、金利の高さで世界一を競う始末なのです。
 それで無くともここ1~2年、不景気風に悩まされていた一般庶民の不安は一気に高まります。◎また、あの怖いインフレが来るのでないか? (81%の人が心配してる)
◎仕事が減って失業者が増えるのでないか? (62%が心配)
 選挙期間中には散々上手い話を聞かされて来た反動もあって、ジウマ政権への不満が噴出してきたのです。

▼一人じゃ出来ない政界運営

 国の運営は政府だけでは出来ません。議会の支持を得られなければ、政府の望む政策も実行出来ません。ブラジルには30もの政党があり、それぞれが勝手なことを言うので、これのまとめが大変なのです。現政権なら、自党PTの他に、他党特に実力第一のPMDBの協力は不可欠です。ところがジウマさんは先の選挙で自分が中心で激戦を制して勝った、という自負があったのか、ウルサイ与党連にあまり「根回し」をせず、気心の知れた自分のチームだけで人事や法案を決めようとしたのです。
 これには「俺たちに相談もせず何だ。政治を一人で出来るとでも思っているのか」老練幹部は面白くない、反発します。下院議長の選出、所得税の免税率など政府側が敗北しています。
 その上、まずいこともあります。ドルの対レアルの相場がドンドン上がっているのです。今年の初めR$2・61だったドルUS$1・00が、3月13日にR$3・25になりました。2ヵ月半で24%の上昇です。
 3月13日には「財務大臣が辞任」というデマまで流され、1日で2・8%もドルが上がりました。ドルの値上がりは国外の要因もあり、ジウマさんだけのせいではないのですが、国民の眼には「ジウマの政策が悪いからドルが上がり、国内はインフレになる。我々の資産は目減りだ」と映るのです。

▼不正摘発は第二幕へ

 民衆が怒っている理由のもう一つにペトロブラスを核心とする汚職、不正の問題があります。何しろペトロブラスの一部長が不正手段によって得て、スイスの銀行に預けていたお金が1億8千万レアルもあると分ったのです。
 「何だ畜生、俺たちが汗水たらして働いて、それで月5千レアルにもならないのに」でしょう。私達と不正を働く奴らとの差が余りに大き過ぎるのです。
 ペトロブラスの汚職、不正摘発は3月で丁度1年なります。この間、石油公社の社員、納入業者、中間ブローカーなどの捜査は地方の警察、検察庁、裁判所で行われており、今後も摘発はなされるでしょうが、今一寸一服です。
 これから有罪、無罪の判決が出てくることになります。一方、国会議員、知事たちの犯罪捜査、検証は特別扱いが必要なのでブラジリアの最高裁判所に舞台が移されます。現上下院議長、元大臣、知事を含む大物政治家50人ほどを舞台に上げて、「金銭不正受け渡し」摘発の第二幕がこれから幕開けです。
 議員のからむ犯罪疑惑を検察だけに任しておくのはまずいと思ったのか、検察と並行して議会でも「不正調査委員会」が開かれ、事実審議、質疑応答などが行われています。今までは贈収賄などの実行犯の検証だったので、調べられる側も神妙に証言、告白している印象でした。
 ところが、今度は百戦錬磨の政治家が被告席です。民間組とは態度がまるで違います。「わしは潔白だ。やましいことなど一切してない」「金を払ったなどと言う男は見たこともない(会ったことはあるが仕事以外の話しはした事が無い)」と主張します。

▼「検察庁の方がおかしい」と開き直る政治家

 親や先生から「人間ウソをついてはいけません」と教えられた私共としては、「こんなにハッキリしているのに、何と白々しい」と怒りがこみ上げますが、上級被疑者達の証言はさらにエスカレートします。
 「我々の名前を被疑者に含めたのは贈収賄容疑の奴らでないか。そんな犯罪者の言うことを基にして国の最高機関で奉仕している我々を被疑者扱いするとは何事だ。検察庁の方がおかしい」です。
 「国会の偉い先生方がこうも堂々と主張されるのだから、もしかしたら告発した方がウソで、先生方の言われているのが本当かな?」
 そんな気持ちにもさせられるから、人間の気持ちとはおかしなものですね。
 この裁判で更に私たちの常識とズレが感じられる点があります。最高裁判所でこのような案件を詮議、採決するには判事5人で構成するグループで当ります。今回、このグループを組むのに判事が4人しか居ず、もう一人の補充が必要でした。3月、「ペトロ汚職」が裁かれるとなってから、ジウマ大統領から選任された新しい判事がこの席につく事を申し出て、承認されました。自分を選任してくれた恩義あるお方の党派の不正容疑を裁くことになりますが、変なことを疑ってはいけません。
 最高裁判所判事なら立派なお方でしょうから利や情に流されることなど無いのでしょう。でも日本式では、つい『梨下に冠をたださず』なんて言葉を思い出さされる事になります。

▼それでどうなる

リオの海岸に集まった抗議行動参加者の様子(Foto: Tasso Marcelo/Fotos Públicas)

リオの海岸に集まった抗議行動参加者の様子(Foto: Tasso Marcelo/Fotos Públicas)

 反対の声に苦しむ政権側ですが、「私が悪かった」などとムザムザ討ち死にはしません。自党グループには戦略に長けた優秀な人が沢山います。全力を上げて体制建て直しに動くでしょう。
 その第一弾は『政治改革』の実行です。これは以前から言われていて中々実行が出来ずに居たことですが、近日実施内容が発表されるとのことです。その目玉は「企業による政党への政治献金」の規制(禁止?)でしょう。政権と利害の繋がる企業からの献金を禁止として『政治と金』の腐れ縁を断ち切ろう、という狙いです。
 日本でも永年言われているが、自民党がぐずぐずしてまだ、実施されていませんね。他、政党間を渡り歩く議員の規制、業者との癒着を生み易い多選の禁止などなどありえますが、まあ、お手並み拝見です。
 経済政策では現経済閣僚の唱えている「収入(税金)を増やし、無駄な支出を抑え、財政を健全化する。こうして家を整え信用を取り戻して、それから発展だ」は変えられないでしょう。ただ、国民に対しては「ブラジルは大国です。じっと我慢の時が過ぎれば明るい未来の光は見えています」と上手く説明することになるでしょう。
 また、『ブラジルは民主主義の国で、大統領も国民との対話を大切にしています』と暫くは低姿勢で難局乗り切りを図ると思われます。

▼レアル安で良い面も

 ところで、ドルレートの上昇はネガティブ面ばかりではありません。大豆やオレンジなどの生産者は輸出により(レアル)の手取りが増えてニコニコになるでしょう。輸出代金の入る6月ころから金回りも良くなると期待されます。また、ブラジルでの製品生産者も『これで輸入品が割高となり、我々国産品の売り上げが増える』と歓迎しています。
 もう一つ、身近なところで日本で働いている日系子弟にはドル高はプラスになるでしょう。例えば、日本の会社で月3千米ドルの収入を得ていた人がこれをブラジルに送ったら7830レアルでした。これと同じ額を3月13日に送金したら、ブラジルで9750レアルになります。同じ仕事でレアルの手取りが2千レアル近くも増えるのですから、有り難い話です。3月中は雨も十分に降り、用水、電力不足の懸念も解消されそうです。「神さまはブラジル人だ(DEUS e BRASILEIRO)」は本当なのでしょう。
 ハイ、日本の先生は教えてくれました。「石油汚職に出てくるような、自分の額に汗せず大金を得ることを考えてはいけません。悪いことをしてもいずれは天罰が下ります。神様は天上からちゃんと見ているのです。真面目に働いていれば、必ず良い報いがあります。この国で明るい希望を持って努力しましょう」 ―以上―(ご意見はーkomagata@uol.com.br へ)

 国会政党別議員数 3・2015

政党名

下院

上院

 著名人

政府与党 (約214)

PT(労働者党)

70

14

ジウマ大統領

PMDB (民主運動党)

66

18

テーメル副統領

PP(進歩党)

37

5

マルフ元知事

PSD (社会民主党)

37

4

カサビ元市長

PR (共和党)

34

4

PTB (ブ労働者党)

26

3

独立系

PSB (ブ社会党)

34

6

野党 (約125)

PSDB (ブ社会民主党)

55

11

アエシオ元知事

DEM (民主党)

22

5

定員

513

81

注・ 少人数党派はこの表には含まれていません。

 

 

 

 

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