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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(43)

博打と拳銃

 ところが、この斉、町では博打ばかりしていた。70コントス負け、兄から貰った20アルケーレスの土地を渡してしまった。後年のことになるが、サントスへ行って400コントス負けたことがある。が、顔色一つ変えず小切手を切った。相手の方がオロオロしてしまった。もっとも一方で、1千コントスで買ったカフェザールを、右から左へ倍額で売ったこともあった。
 ピストルを撃たせると名人級で、銀貨を空中に投げて撃ち抜いた。土地の警察署長と、互いに射撃の自慢話をしていた時、腕比べをしようということになった。署長に煙草を一本持って立たせ、ピストルを抜いて構えた。署長は冗談と思っていたのに、斉が真剣な表情で狙いをつけたので、震え出してしまい、腕比べは中止となった。


命がけの人集め

 この斉が1929年、汽車(ノロエステ線)で旅行中、車内でスイス人のファゼンデイロと知り合った。話が弾んで、そのファゼンダのカフェー50万本の植付けを、請け負うことになった。大仕事である。場所は、プロミッソンから北西へ100キロ以上奥の、グアララペスであった。現地に向けて出発する時、兄の浩は、高級車一台を贈って門出を祝った。
 請負の仕事は、まず人(コロノ)集めから始めねばならない。が、当時はコロノ不足だった。斉は、リベイロン・プレット地方の幾つかの大型ファゼンダを廻った。そこには日本移民が、大量に配耕され就労していた。
 兄から贈られた高級車で乗り付け、日本の領事と名乗った。ファゼンダの主や支配人は、その肩書を信用して丁寧に応対した。斉は、その目前で、そこで働く日本人をまとめて引き抜いた。日本語でやるから判らない。しかし命がけの仕事だった。ばれたら、ファゼンダのカッパンガ=用心棒=に殺されていたろう。
 数日で200家族、引き抜いた。リベイロン・プレットの駅に集合させ、駅長と交渉、客車を二輌増やして貰い、一度に輸送した。
 斉は、このカフェー50万本の植付けの仕事をやり遂げ、さらに5500アルケーレスの牧場造成を引き受けた。それまで、幾人もの請負人が、途中で投げ出した仕事だった。


銃撃戦も…

 その牧場造りの折は、西部劇の様な銃撃戦をしている。 
 造成地はグアララペスのジャンガーダという所に在った。そこでは依頼人が隣接地の地主と、境界線を巡って争っていた。当時は、その種の抗争が多く、銃で撃ち合うため、血が流れた。
 斉は配下とコロノたちを率いて現地入りした。
 すると、隣の地主がカッパンガを集めて、馬で侵入してきた。斉は男たちを指揮して戦った。双方とも銃を持っていた。小雨の降る夕方であった。こちらは兵隊経験者が多かったため、狙い撃ちだった。初めから勝負はついていた。死者も出た。その数を斉は語らなかったが「自衛上、止むを得ず殺してしまった。死んだ人や遺族には、まことに申し訳ない」と生涯悔やんでいたという。

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