ホーム | 特集 | 新年特集号 | 2016年新年号 | リオ五輪サッカー=男女共に初の頂点目指す=セレソン密着15年!=藤原清美さん期待語る
五輪代表への期待を語る清美さん
五輪代表への期待を語る清美さん

リオ五輪サッカー=男女共に初の頂点目指す=セレソン密着15年!=藤原清美さん期待語る

 【リオ・デ・ジャネイロ発】リオを拠点に、長年セレソンに密着取材する一人の日本人女性がいる。兵庫出身の藤原清美さんだ。2016年8月に開幕するリオ五輪で、悲願である初の金メダルを狙う男女セレソンへの期待、五輪を迎えるリオの様子などを語ってもらった。(小倉祐貴記者)

 清美さんは兵庫の田舎に生まれ、「都会的で憧れもあった」というリオに01年から定住している。サッカーとの関わりは、大学卒業後に入社したテレビ番組の制作会社で、鹿島アントラーズ時代のジーコとの出会いから。98年のフランスW杯ではセレソンのテクニカル・ディレクターを務めたジーコに、3カ月間密着した。
 「日本でも尊敬されたジーコだけど、ブラジルではそれ以上の存在だった。そんなギャップが面白く感じたし、代表チームに対してもブラジル人の情熱や文化、生活の全てが注がれた存在だった」ということに気付いた。そんな空間の中でどっぷり生活したいと、伯国社会へ飛び込んだブラキチの一人だ。
 以来セレソンの同行取材や、欧米の伯人選手にインタビューを行なう。近年ではトーク番組「アゴーラ・エ・タルデ」などにも出演し、当地での知名度も上昇中。フリーランスのリポーターとして日伯をまたいで活躍している。
 リオ生活も今年で15年目に突入した。ついに開幕する五輪に対し、「何だかんだあった14年W杯だったが、『いやぁ良い大会だった』と皆が帰ったように、五輪でもブラジル人特有の明るさやホスピタリティ(おもてなし精神)を期待。きっと良い大会になるはず」と確信する。
 ただ「結局、W杯前と同じようなことになるかも…」との心配も。要は「また工事が間に合わないとかが話題になっちゃうのよねぇ」とどこか複雑だ。

トンネルの開通式を取材する清美さん(本人ブログより)

トンネルの開通式を取材する清美さん(本人ブログより)

 清美さんは日本向けに、五輪工事の状況も伝えている。南部の道路工事を紹介した際には出演者から、『今工事を始めたばかりじゃないんですか? 衝撃的。2015年一番の驚きです!』との反応があったという。「観戦者が試合に間に合わない、ということがあるかも知れない。自転車競技のコースでは峠道もあり、突貫工事のせいで崩れ落ちて大惨事、なんてリスクも無きにしも非ず。とはいえリオを訪れた人は楽しんで帰ってほしい」と願いは一途だ。
 リオ市民の生活について訪ねると、「渋滞にブツブツ言いながらも、『全部完成したら、きっと生活も良くなるはず』と、合言葉のように言ってます。生活改善のための工事なんだと言い聞かせているよう」という様子を教えてくれた。
 ただ思いのほか渋滞は酷いらしく、「私の住むバーラからコパカバーナまでは通常30分。約束に遅れるといけないから1時間、いや1時間半かかるとみて家を出る。最近じゃそれでも30分遅れて、結局2時間かかったなんてこともあるんです!」。
 インフラ整備が進めば改善されるはずだが、「バーラは五輪後、よりアクセスしやすい地域になる。でもそれによって治安が悪くなったり、ゆったりした雰囲気が少し変わるかもと、市民からの懸念もチラホラ聞きます」。住民は五輪後の変化も、少々心配しているようだ。


悲願の金メダルなるか=ネイマールも出場志願

ロンドン五輪の“忘れ物”を取るため、出場意欲を見せるネイマール。母国開催の五輪で、チームを初の金メダルに導けるか(Foto: Rafael Ribeiro/CBF)

ロンドン五輪の“忘れ物”を取るため、出場意欲を見せるネイマール。母国開催の五輪で、チームを初の金メダルに導けるか(Foto: Rafael Ribeiro/CBF)

 「セレソン? 目標は当然金メダル。まだ獲ったことないですから。でも勝負の世界は予想不可能です」。ただ「前代未聞の準備をしている」というので期待は嫌でも高くなる。
 五輪代表は数回の親善試合の度に召集と解散を繰り返し、大会前に最後の合宿で仕上げるもの。連携を高める期間が少ないという問題点を抱えながら、ネイマールを擁した前回(12年ロンドン五輪)は決勝でメキシコに敗れ、銀メダルに終わった。
 「(年齢制限のない)A代表に五輪メンバーを集めて直前に数試合こなす。これまではそんな強化策が精一杯だった。でも今回は月に1回は親善試合だの、大会参加だので召集機会を増やしている。そんな準備はこれまでなかった。きっと今までとは違う結果が生まれるはずです!」と、期待値もかなり高く、本気度が伺える。
 金メダルへさらに近づくためには、オーバーエイジ(OA)を有効活用しなければならない。23歳以下で構成される男子チームは、24歳以上の〃助っ人〃を3人まで登用できる。「怪我さえなければネイマールは必ず呼ぶ。出ない、呼ばない、なんてことは考えられない。だってネイマールは王様だから。本人も心の底から出たがっている」と、王様の出場はほぼ確実と見る。
 残り2枠の使い方、そしてドゥンガ監督の采配が気になるところ。「伯メディアは前線、中盤、守備にバランスよくOAを配置するのがベストと考えているよう。A代表と掛け持ちのドゥンガは観察、分析、研究の鬼。選手を上手く生かすような戦術で戦っていく。プレッシャーもあるけれど、本人も金メダルは悲願」と信頼を寄せた。


かなりのマスコミ嫌い?=ドゥンガの人柄に迫る

A代表と兼任で指揮を執るドゥンガ監督。会見で笑顔を見せる(Foto: Rafael Ribeiro/CBF)

A代表と兼任で指揮を執るドゥンガ監督。会見で笑顔を見せる(Foto: Rafael Ribeiro/CBF)

 そのドゥンガは14年W杯の大敗後に、自身2度目のセレソン監督に就任した。15年南米選手権でベスト8止まりと結果が残せていないが、国民のサッカー熱は冷めていないのだろうか。そんな質問に、「FIFAやCBFの汚職があって、信頼感が落ちている感覚はある」としつつ、「ただブラジル人からサッカーの情熱が消えることはない」と否定する。
 「ロナウドやロナウジーニョ、リバウドにロベルト・カルロス…。過去と比べれば確かにスターも減った。今はネイマールだけといわれるが、それが時代の変化だと思う。大粒感がないのはどのチームも一緒。ただそれも寂しいけど」。
 こんな時期は監督の手腕が試される。ドゥンガについては、「前回(06~10年)指揮した時より丸くなった印象。当時はマスコミとバチバチやっていたのよ」。
 一例として非公開練習への反発を挙げた。「第一次ドゥンガ政権前は、セレソンが非公開練習をすることは皆無だったんです。『ブラジルたるもの、どれだけ研究されようが止められない』という誇り、余裕があったからね。他国のマスコミにも、ブラジルは全部公開するよって自慢げに話していたのよ」。
 「それなのに、ドゥンガが初めて非公開にした。マスコミもどう対応して良いかわからなくなって、『俺たちは報道する立場だぞ』って怒っちゃった。ドゥンガも『今の時代、全部公開なんてできないだろ!』って突っぱねるんです」。
 会見でもそんな対立は続く。「くだらない質問に、『もっと知的な質問はないのかい?』なんて返す。個人的にはそんなやり取りが楽しかったけど」と振り返る。
 そんな確執もあった前回だが、「今は和やかに、にこやかに受け答えしています。時々皮肉を言いたくなることもあるだろうけどね。マスコミも非公開という形式に慣れ、摩擦はあまりないみたい」と改善された様子。ドゥンガにとってもマスコミを味方につけることは、金メダルに向けて不安材料が一つ減ることになる。
 「W杯の7―1という大敗の後に監督になって、余計な重圧を背負うことに愚痴をこぼすこともあるんです。『前の世代の出来事だろ』って。でもそれがセレソンだから仕方ないよねって立ち向かっています」。


女子セレソンの秘策=〃金メダル獲得大作戦〃

 前代未聞、という点では女子サッカーも負けていない。ブラジルサッカー連盟(CBF)は14年1月、常設代表チーム『セレソン・ペルマネンテ』を始動させた。以来、召集した30数人の固定メンバーが合宿を重ねている。
 「バドン代表監督が、女子チームの環境改善を訴えたことが始まり。CBFがその選手ら個々に給料を払って、常に良い環境で合宿している」という。また全国選手権上位のクラブチームに2、3人の代表選手をくじ引きで振り分け、各クラブの水準を均等にする工夫も。
 「これも『五輪で金』という最大の目標を果たすために始まったこと。名づけて〃金メダル獲得大作戦〃ね。長い目で見たら、メンバー固定の常駐セレソンは良いことじゃないかもしれない。でも、男女ともこれまでにない準備を進めているから、その結果は如何に!という感じです」と胸を膨らませた。

image_print

こちらの記事もどうぞ