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政権争奪「秋の陣」真っ盛り=PMDB軸に大揺れの政局=そこのけそこのけ新政権が通る=駒形 秀雄

罷免かどうかの瀬戸際にいるジウマ大統領(Foto: Lula Marques/Agência PT)

罷免かどうかの瀬戸際にいるジウマ大統領(Foto: Lula Marques/Agência PT)

 先月までの大雨の時期が過ぎて、青い空に赤い花がくっきり、心地良い季節になりました。ところでこんな地上の快さとは逆に、政治の世界では近々大型台風が来ると揺れ動いております。PT(労働者党)を基盤とするジウマ大統領を解任しようという法案(IMPEACHMENT、発音は「インピーチメン」だが慣例にのっとり「インピーチメント」と表記)がいよいよ動き出したのです。大統領が代われば政治を動かす人達も代わり、経済運営にも変換が予見されます。この不景気、ドンズマリの閉塞感を吹き飛ばす大風が吹くか、プラナルトを戦場とする〃戦国政治家〃の動きと合わせて、一寸様子を覗いてみましょう。

解任案はどうなっているか

29日、インピーチメント推進派の〃陣中〃の様子(Foto: José Cruz/Agência Brasil)

29日、インピーチメント推進派の〃陣中〃の様子(Foto: José Cruz/Agência Brasil)

 「PTはダメだ。能無しジウマ辞めろ」―3月13日の全国デモは百万人以上の大衆を動かし「政権交代」の機運を高めました。デモはいくら大きくてもそれだけで大統領を罷免することは出来ませんが、この民意の表明を受けて議会が動き出し、規則に則ってまず下院で「大統領罷免審議委員会」が構成されました。
 この委員会構成の手続きに当たっては、自分自身が別の「罷免」告発の対象になっているクーニャ下院議長がハッスルし、異例の早さでことが進んでいます。規定では最低10回の審議を重ねるようになっている内、既に3回の審議を終え、4月半ばには委員会の結論(罷免案)が出ることになっています。
 この罷免案(インピーチメント)は、下院の全員出席の議会で討議され、採決の投票に掛けられることになっています。下院議員、定数513人の3分の2が罷免案に賛成すれば、その後上院の審査に送られることになります。「下院の3分の2=342票」を集めると言うことは、議会の大勢を示すということで、この4月半ばの票決は罷免決定ではないが、非常に重要な意味を持つということが分かります。

誰が賛成で誰が反対か?

 さて、投票で決めるとなると誰(どの党)が賛成で、誰が反対か、その数は?―と知りたくなります。罷免案を否決、潰すには172票が必要となるのですが、まず、この政局秋の陣、各党派の〃陣立て〃を覗いてみましょう。
【A】罷免反対派(ジウマ支持)は言うまでも無くその中心=PT党(58~70)、次にPDT(20~19)、PC do B(13)と続きます。大体110票は固いといわれています。(カッコ内の数字は動員出来る議員票数)
【B】罷免賛成派(反ジウマ)。まず、アエシオのいるPSDB党(48~54)、次いでPSB(31~34)、DEM(28~22)、PRB(22~21)などがあります。大体150票近くです。
【C】どちらかハッキリしないグループ(洞ヶ峠=有利なほうにつこうと形勢をうかがうこと)はPMDB(テーメル副大統領がいる、69―66)、PP(49―36)、PR(40―34)、PSD(33―37)。まあ、220票前後と見られています。
 もし、ジウマ大統領が罷免されると憲法上で、テーメル副大統領がその席に就きます。もちろん、そうなれば各大臣、各省幹部、石油、電力などの有力公社の総裁、幹部も全部入れ替わることになるでしょう。
 と云うことですから、大統領個人の名誉の為だけでなく、自分のメシに繋がる各陣営の〃大名〃達が必死になって勝敗を争うことも理解出来る訳です。

沈没間際、雪崩打って船から逃げ出す?

 以前「ジウマの首を取れ」陣営の主将格は反対党PSDBのアエシオ党首でした。今、インピーチメントが動き出すと、この陣の主役はPMDBに替わりました。
 なぜか―。前記の票(議員)数で分かるように、賛成、反対派とも単独では規定の票数を獲得出来ず、罷免案を確定出来ません。PMDBを中心とするC「洞ヶ峠」グループの向背が、ジウマ政権の生死を決することになるのです。
 更にこれには「なだれ現象」もあります。PP党(49)党首はテーメルに会い「テーメルさん、あんたの党が今のPTとの連携をやめて政権の外に出ると言うなら、俺達もそれに習って外にでるよ。一緒に行こうや」と言っています。
 他の現与党メンバーも同じ様なものでしよう。PT陣営からの離脱と云うか、「沈みそうな船には何時までも乗っちゃ居られないよ」と云うことかも知れません。
 ところでそのPMDBなのですが、これが又、内情複雑なのです。連立のためPMDB党員は現内閣の7省(大臣)を占めています。各省機関、公社のポストには100以上のPMDB党員が就任しています。この人達は折角手に入れたおいしいポストをそう簡単には手放したくない。
 「PTとは前政権時代からのよしみもある。今状況が変わったからと言って、そうそう簡単に友党に背を向けて良いのか。PTに味方しよう」です。カチア農務大臣、鉱業エネルギー大臣などがこの派と言われています。
 同じ党内で(反ジウマ)を鮮明にしているのはクーニャ下院議長などです。政策の違いとかではなく、(政治と金)に対する考え方の違いなどが原因のようですが、このクーニャ氏に同調する人が、また多数いて無視出来ないのです。政治の世界は理屈だけでは割り切れません。

「さあ、おのおの方、合戦じゃ!」

 PMDBは3月29日、党全支部の会合を開き党としての「PTとの連立離脱の可否」を討議決定します。一般の観測では「PMDBはPTとの連立を解消する」ですが、どの程度の(縁切り)をするのかは不明です。
 閣僚など全ポストを引き上げて敵対するのか? 一部未練も有り、関係を残して置くのか? 分かりません。罷免投票の際「全面的に賛成」を党として決めるのか? 一部の主張者が言うように「どちらに票を入れるかは各自の自由」とするのか、多くの選択肢がある訳です。
 ところでそのPMDBの支部中、一部は既に支部として態度を決めています。リオ支部は12人の議員を擁して最大、影響力の強い支部ですが、「政権離脱」を表明しています。先週末までに既に14支部がこれと同様な「離脱」を決定しています。
 このような情勢にジウマさんも手をこまねいては居ません。自分が苦手と思える政界工作、特にPMDBと(良いことも悪いことも一緒にやってきた)ルーラ太閤殿下に再び前線への出馬を御願いして、PT恩顧の大名達に自陣へ入るように働きかけて貰っています。
 また、ジウマ自身も度々TVなどに姿を現し、「正当な選挙で選ばれた大統領を暴力(GOLPE、クーデター)で追放しようとしている輩がいる。この様なGOLPEを許せば民主主義が破壊される。私は絶対辞任などしない」と外国紙記者にまで宣言しています。
 PTでは大手のPMDBに逃げられても、自軍の勝利を諦めてはいません。あと50票確保です。そこで、次のような〃煙幕〃戦術を考えているとの噂が聞こえてきます。
◎ジウマはPMDB籍の大臣を集めて「党がダメでも個人コネがある。インピーチマン否決の味方を増やしてくれ」と依頼。
◎万一、罷免審議が下院を通過したなら、上院審議中に「罷免の手続きに齟齬がある」「罪状として挙げられている事由は誤りだ」などを法定論争に持ち込み、出来れば勝訴する。少なくとも時間稼ぎが出来る。
◎この様な場合、新たに選挙によって大統領を選ぶという憲法規定改訂の議案を提出し、政界を混乱させ、罷免の審議を遅らせる――などなどの〃煙幕〃を張るようです。凡人には思いも及ばぬ、さすがの発想ですね。

昨日の敵は今日の友

 PMDBも今は未だPTの友党ですから、あまり明確な反政府運動はしていません。しかし舞台裏では色々な動きをしているようです。
 もしPMDBが政権を担うようになったら、この様な政策を行うと前向きな政策を発表して同党シンパを増やそうとしています。具体的には次期財務大臣として財界に信頼のある元中央銀行総裁の名を挙げて経済界、国民の支持を得ようとしています。
 また、これとは、別に新政権での政局運営も視野に入れてPP、PSD(党首はカサビ元サンパウロ市長)などの中規模政党の同調も働きかけています。
 最大野党PSDB(セーラ氏)とも会談し「専横のPTを倒し、政権獲得後は手を携えてやりましょう」と表明しております。PMDBとPSDBは、直ぐ先日までは政権側と反政権側に別れていがみ合っていたのですが、「私達はもともと同じMDB(ブラジル民主戦線)から出た兄弟ですね」とか言って提携の道は開けています。
 ただPMDBにのさばらせたくないPSDBのアエシオ党首は、「テーメル大統領の任期はジウマの残りの2年間だけ。2018年からの大統領は選挙で決める」と早くもPMDB政権支持に条件をつけています。
 「昨日の敵は今日の友」―過去のゴタゴタは水に流して、皆で力を合わせて努力すれば、また明るい未来が開けてくる。BRASIL E GRANDE――.

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