サンパウロ州アンドラジーナ市長を8年間も務めあげて無事に後継者に渡した小野秋夫ジャミルさん(56、三世)は、任期中に受けた日系社会からの理解と協力を感謝するために27日午前に来社し、「市民一人あたりの市予算額を500位も上げ、今ではサンパウロ州で61位です」と報告した。「来年の日本移民110周年に積極的に協力したい」との力強い抱負を述べた。
サンパウロ州には約645市があり、小野さんが市長に就任した2009年、同市はビリに近い561位だった。それが昨年末には61位まで500市をごぼう抜きし、市民はより豊富な公共サービスを受けられるようになった。
「市が使える予算を増やすには、企業の投資を集める必要がある。工業団地を2つ開設し、ポウパテンポ、医者が30人も勤務するAME(州立専門医診療所)、州会計監査院支所などの州機関を誘致した。その結果、市民が受けられるサービスが向上し、それが評価された昨年の選挙では、私の市政で教育局長をしていたイノウエ・タミコ氏(PCdoB)を後継市長として当選させられた」と報告した。
具体例を聞くと、「09年当時、市立学校(生徒数1万1千人)の給食はバウルーの民間企業に委託し、毎月23万レアルを市が負担していた。それを市が独自に作るようにしたら10万レアルで供給できるようになり、13万レアルを別の使途に使えるようになった。道路の舗装率は09年には50%に満たなかったが、昨年は94%に向上した。そんな積み重ねです」という。
小野さんが就任した当時、「2千万レアルの大赤字を抱えていた。それをキレイにした」という。昨年来、全伯で財政非常事態宣言を出した市は62市もあり、リオを始め地方自治体の財政はひっ迫している。同市の例は実に稀だ。
「でも市民の理解が根本です。例えば昨年のクリスマス、市は街路の電飾に1万2千レアルしか使いませんでした。それに今年カーニバルは開催しません。それよりも大事な使い道があると市民が納得してくれたおかげ」と市民に感謝する。
小野さんはPT所属で、後継市長はブラジル共産党であり、ジウマ罷免という左派党への大逆風の中でも市民からの信頼は揺るがなかった。「でも僕はもうPTを離れ、別の小政党に移る」との見通しを明かした。
次の市政の課題はとの質問に、「もっと企業を誘致して雇用を創出することが一番の課題。そのためにもっと大規模な工業団地を建設する必要がある」とのキッパリ。
さらに「僕は福島県人会長、アンドラジーナ文協の会長もやった。日本移民110周年は大事な節目。積極的に手伝い、日系社会へも貢献したい」との抱負を語った。
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小野ジャミルさんに次の目標を尋ねると、「ノロエステ線でアラサツーバから奥は、森本州議(後に連邦下議)以来、40年以上も州議を出していない。あの地域を代表する声を州議会に届ける存在になりたい」と州議選出馬をほのめかした。奥ノロエステ地区で、日系・非日系を問わずサンパウロ州議になった最後の人物は森本アントニオさんだとか。森本さんは1955年にアンドラジーナ市会議員を経て、62年にサンパウロ州議員に当選(計3期)し、のちに連邦下院議員になった。自治体の財政を好転させる手腕は、ブラジルで今、最も必要とされているもの。その力を110周年で日系社会にも使ってほしいもの。