ホーム | 日系社会ニュース | 《ブラジル》CKC農協連携=種撒き終え、具体化の段階へ=中南米日系農業者委託事業=農水省、継続に前向きな姿勢

《ブラジル》CKC農協連携=種撒き終え、具体化の段階へ=中南米日系農業者委託事業=農水省、継続に前向きな姿勢

南米4カ国から参加した農協関係者

南米4カ国から参加した農協関係者

 今年で最終年となる農林水産省の五ヵ年事業「中南米日系農業者委託事業」の一環として、中央開発株式会社(以下CKC、本社・東京)は、『第一回日系農業者団体連携強化会議』を14日、サンパウロ市内のEZアクリマソン・ホテルで開催した。ブラジル全土をはじめパラグアイ、ボリビア、アルゼンチンから32団体が参加し、今年度の方針や事業内容が説明された。

 中南米四カ国で推定25万人とされる日系農業者組織間の連携強化や、リーダー育成のための技術交流の促進、日本との農業交流の維持・発展を図ることを目的とした同事業。新たにロライマ日伯文化協会、イボチ日伯文化協会が加わった。
 午前は各団体からの近況報告で、主要作物の生産販売状況や、風土に応じた栽培や品質改良等の工夫、今事業を通じた付加価値向上等の成果が報告された。
 午後は今年の事業内容を説明。「日系農業関係者技術向上研修」「農業・食料の付加価値向上研修」が引き続き行われる他、従来の「婦人交流を目的とする訪日研修」を廃止し、「中核的リーダー育成交流研修」に統合されるとした。
 日本から農業や食品企業関係者を招き意見交換やセミナー、商談の場も設けられるほか、事業後も続く連携構築のため、OB会設立に向けた準備を行う予定。今後の日本との連携のあり方について質疑応答の時間が取られると、意欲的な意見が相次いだ。
 カッポン・ボニート文協の岡村ケンジ・エミリオさんは、「交流事業を通した気づきから『こうしたらいい』とのアイデアはある。でも具体的道筋をつけられないのが現状」とし、日本企業等との協力関係の具体的な枠組み作りを求めた。
 イビウナ農村組合のタチバナ・マウリシオさんも、「小農業者の機械化や技術遅れており、先進的な日本の技術や機械を皆が渇望している。日本企業の進出を支援し、現地生産も含めて検討して欲しい」とした。
 レジストロ日伯文化協会の福澤一興会長は、「ラポウザでは混農林業による村おこし運動を始めている。いずれはリベイラ河沿岸の観光産業にも繋げていきたい」と語り、本事業を通じた協力を要請した。
 本年度で終了する同事業に対し、参加者からは総じて継続を求める声が相次いだ。出席した農林水産省の山田英也参事官は、「この事業をきっかけに日伯関係、さらには南米日系社会も発展している」と評価した。
 さらに「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書」のなかで日系農業者との連携交流が盛り込まれたことに触れ、「皆さんの活動をこの事業を通じて支えていくのが農水省の使命」と語り、事業継続に前向きな姿勢を示した。
 同社ブラジル事務所の大森麗裕コーディネーターは「事業の種撒きは終わった。これで基盤はできたのでは」と振り返り、「広く浅くでなく、専門化して対応してゆくことが次段階になるはず」との見通しを述べた。

 

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 CKC海外事業部の岩野奈緒さんによれば、「最初の頃、会議をしても沈黙が続いていたが、今ではすごく積極的に。雰囲気がだいぶ変わりました」と微笑む。会議では参加者からの積極的な質問や要望が相次ぎ、時間を押す場面が目立ったほど。CKCサンパウロ事務所長の山口達朗事務所長は閉会の言葉で、「農業を通じた日系社会の結びつきの強さを実感。日系社会に共通する課題も見えてきた」として次世代育成や持続可能な農業発展、婦人会活動の重要性を指摘した。そのように、地方日系団体が互いに課題を共有し、農業を儲かる強い産業に育ててゆくことは、地方日系社会の基盤となるはず。今年で最終年というが、せっかく出来上がったネットワークを強化するためにも事業を継続して欲しいところか。

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