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《ブラジル》孫悟空の輪っかと電子足輪

GPS電子足輪(FOTO: AKIRA ONUMA/ASCOM SUSIPE)

GPS電子足輪(FOTO: AKIRA ONUMA/ASCOM SUSIPE)

 数年前、カーニバル観光に来た若い日本人女性から「リオの地下鉄で足首に携帯蚊取り線香を付けていたら、満員なのに私の周りだけガラガラ。どうやら蚊取り線香を電子足環と勘違いしたみたいなんです」と聞いて大笑いした。
 実物を見せてもらうと、たしかにソックリ。おもわず「〃悪い虫〃が寄ってこなくて良かったね」と冗談を言うと、「ちょっとぐらい寄ってきても良かったのに…」と残念そうにした。
 この「GPS電子足輪」(tornozeleiras eletronicas)は、とてもブラジルらしいハイテク電子機器だ。刑務所がいっぱいだから凶悪犯以外は極力、自宅軟禁に切り替える。その自宅から逃げないように衛星追尾システム(GPS)で監視するもの。
 エル・パイス紙電子版1月5日付によれば、ブラジルには62万2202人(2014年)もの刑務所人口があり、堂々の世界第4位。刑務所の平均収容人員が本来の150%と圧倒的に満杯状態だ。
 1位は米国(221万7千人)、2位は中国(165万7812人)、3位はロシア(64万4237人)、ブラジルを挟んで5位がインド(41万8536人)。不思議なことにアメリカ+BRICsだ。ちなみに日本の刑務所人口は8万人805人(2007年)。
 恐ろしいことにブラジルでは刑務所人口が急増中だ。2000年には23万人〃しか〃いなかった。それが15年後の今は3倍弱、いくら刑務所を作っても足りない状態だ。警察ががんばって犯人を捕まえても刑務所はいっぱい。警察が怠慢なのではなく「犯罪の方が多過ぎる」とも言える。
 しかも囚人を刑務所に入れておくには莫大な金がかかる。
 G1サイト1月25日付は《マット・グロッソ州では生徒一人当たりにかかる経費は月500レアルだが、囚人には10倍、5千レアルの経費がかかる》と衝撃の数字を報じた。
 囚人を養うために子供への教育費が削られて、その結果、非行が増え、犯罪予備軍を生む悪循環に陥っている。
 しかもいったん刑務所に入ったら大変、別名「犯罪専門学校」と呼ばれる通り、優秀で経験豊かな〃先生〃たちがビシビシと実地指導する。ただのコソ泥で入学しても卒業する頃には立派な銀行強盗に昇段しているという具合だ。
 それよりは自宅軟禁した方がよいとの現実的な判断から、どんどん足輪が使われている。
 この電子足輪、昔でいえば、孫悟空が頭につけている輪っか『緊箍児』に似ている。孫悟空の場合は『定心真言』という呪文を唱えると頭をしめつけるが、残念ながら電子足輪にはその機能がない。
 この電子足輪を作っている会社は、いくら作っても生産が間に合わないぐらい商売繁盛だと報じられている。こんなに不景気で治安が悪化し、政治汚職が蔓延しても、それゆえに儲けられる業種というのはあるものだ。
 16年8月30日付G1電子版によれば、パラナ州クリチーバ市に所在するSpacecom社(www.spacecom.com.br)は、この足輪市場の90%を握る寡占企業だ。2003年創業で、もともとは携帯電話部品生産をしていた。
 08年に電子足輪製品を開発し、10年には聖州政府から初契約をもらって以来、大躍進を続ける。同社サイトによれば昨年11月時点で18州政府と契約し、計3万7251人の監視をしている。うち最大の顧客がリオ州とマット・グロッソ州で各5千人ずつ。
 足輪をした囚人が規定外の地域に立ち入ったり、規定外の時間に外出した場合は、地元警察に通報するが、対応は後手に回りがちだとか。
 そこで日本企業が〃電子呪文〃で足に電撃を与えるなどの新機能を持った電子足輪「Songocu」を開発したら、警察は出動しなくて済むので喜ぶかも。もちろん法的には難しいだろうが。
 日本や韓国、米国でも電子足輪は使われているが、おもに性犯罪の前歴者向けだ。生産している日本企業があれば参入してみたら。悲しいことに、この分野、当分は成長産業間違いなし?! (深)

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