ホーム | 文芸 | 連載小説 | わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇 | わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(45)

わが移民人生=おしどり米寿を迎えて=山城 勇=(45)

 そこで、資金のメドを立てるために会長以下の全役員は、毎週日曜日に各隊員の各戸訪問をし、打診してみることにした。前年の7月から9月までの3ヶ月間、予備調査をし、その結果ようやく一人の代表を青年隊自力で送りだすことができる自信を得たのである。
 しかしながら、それは単なる紙面での予算であり、確実な数字ではない。全伯に散在している青年隊一人一人に会って、直接調査と寄付依頼をするのであるから、並大抵の事ではない。その主旨、目的がいかに立派でも、それに伴う資金が実際に確保できるか、ということが問題であるからだ。
 そうかと云って、今更、投げ出すわけにもいかず、先ずは「当たって砕けろ」だ。青年隊の名において、所期の目的を貫徹する決意を新たに役員一同一丸となって仕事を進めることになった。
 こうして臨時総会で決まった代表は実態調査要綱の作成、役員一同は資金の募金を、と作業を分担し、10月の初日から一斉に活動を開始したのである。
 5枚を一部とするガリ版刷りの調査用紙と写真機、8ミリカメラを駆使して、サンパウロ市を含む近郊に住む青年隊の各戸訪問を1月まで約4ヶ月をかけてかけ廻った。2月に入りゴヤィスを始め、マット・グロッソ、サントス・ジュキア各沿線、サンパウロ州奥地を巡った。
 大多数の隊員は、仲間意識をもって、役員の労をねぎらい、募金に協力し実態調査を確実に提供してくれた。それは、役員にとっても大きな喜びであり、励みとなった。
 かくして3月の中葉までに総走行距離1万キロ余を踏破して調査を成し遂げた。この強行軍は、役員諸君の不屈の協力精神があってこそ、成し遂げえたのであった。
 代表の出発は、4月4日と決定されているためにあます日がなく、役員たちは実態調査用紙の集計整理を昼夜兼行で成し遂げ、会計委員は、未納者の徴収へ東奔西走して各戸訪問を決行した。
 こうして自らは、代表として4月4日の出発の日を迎えることになったのである。代表派遣のために、こんなにも役員たちが自己犠牲的に活動し、会員たちが一致団結するとは、当の会長でさえ予想しなかった。実に涙ぐましい準備過程の結束に私は、益々その責任の重大さを感じるのであった。
 そして是が非でもこの目的に挺身しなければならない、と堅い決意を新たにしたのであった。

 7 沖縄での報告活動

 わが青年隊移民は、ブラジル戦後移民のなかで特異な存在と云える。即ち6ヶ月間の合同合宿訓練で開拓精神を涵養した20歳前後の単独移民である。しかも沖縄産業開発青年協会と琉球政府、そして海外協会に移民金庫などが主体となって送り出し、導入受け入れを在伯沖縄協会が引き受けてくれたのである。
 そのネットワークを考える時、送り出された青年隊移民が、現状の経過報告をすることは当然の責務であることを私は改めて痛感した。じっさい、移民青年隊は、自主的にそれを実現すべく個々の実態調査を実施し、それを母県の各関係機関に報告するために、今まさに代表を派遣し、その責務を果たそうとしているのだ。
 さて私は、屋比久旅行社が企画した故郷への「観光訪問団」の一員に参加させてもらい、戦後見たことのない東京で1泊し名勝旧跡の「日光国立公園」徳川家康を祀った「日光東照宮」の観光もかなえられた。江戸時代の霊廟建築の粋が施されている素晴らしい東照宮は、話しに聞いただけで初めて目のあたりにした。「日光を見ぬうちは結構と云えない」の言葉をしみじみ感じたのであった。

image_print

こちらの記事もどうぞ

  • 《サンパウロ州》外出自粛規制が7地区で降格・厳格化=マリリアは最低レベルに2021年1月16日 《サンパウロ州》外出自粛規制が7地区で降格・厳格化=マリリアは最低レベルに  15日、サンパウロ州保健局が前回から1週間という異例の早さでコロナウイルスの外出自粛規制の見直しを行い、1地区が5段階中最下位の赤レベル、7地区が下から2番目のオレンジ・レベルに落ちて厳しくなった。大サンパウロ市圏は変わらず黄レベル(3番目)だった。15日付現地サイト […]
  • 東西南北2021年1月16日 東西南北  サッカーのブラジル杯の決勝が、リベルタドーレス杯の関係上、日程が組めずに止まっている。問題は、どちらも決勝戦にパルメイラスが進んだことにある。1月30日のリ杯決勝でサントスが勝てば、ブ杯の決勝は2月11〜17日のいずれかになる。だが、パルメイラスが南米一になった場合は、2月に […]
  • 東西南北2021年1月15日 東西南北  13日に行われたリベルタドーレス杯準決勝第2試合で、サントスは本拠地の利をいかんなく発揮し、アルゼンチンの強豪ボカ・ジュニオルズに3―0で圧勝。第1試合が引き分けだったため、これで決勝に進出することが決まった。ボカはチームの功労者で昨年11月に急死したばかりのマラドーナに優勝 […]
  • 東西南北2021年1月13日 東西南北  サンパウロ市ブタンタン研究所が8日に国家衛生監督庁(ANVISA)に緊急使用許可申請をした。これで、新型コロナウイルスのワクチン「コロナバック」の接種が、サンパウロ州が予定しているように1月25日から開始されることが現実味を帯びてきている。そんな中、「誰が最初にコロナバックの […]
  • 篤志家の内村さんに感謝状=長年寄付を貰った援協から2021年1月13日 篤志家の内村さんに感謝状=長年寄付を貰った援協から  サンパウロ日伯援護協会(当時は与儀昭雄会長)の旧年最後の定例役員会が12月17日に開かれ、評議員をつとめながら資金や物資、アパートの寄付などを長年行ってきた内村俊一さん(熊本県出身、85)に感謝状が授与された。  同定例役員会の寄付報告では11月だけでも福祉部・サン […]