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〃福島の今〃内堀県知事が講演=JHで特別セミナー=復興状況と五輪展望を語る

講演中の内堀知事

講演中の内堀知事

 「県内の原子発電所10基を廃炉し、原子力に依存しない社会作りを」――。21日、内堀雅雄福島県知事(53、長野県)によるセミナー『福島の今』がジャパン・ハウス(以下、JH)で開催された。内堀知事は2011年の東日本大震災からの復興状況と20年東京五輪に向けた展望を講演し、野口泰在サンパウロ総領事やギリェルメ・ムロ副館長など招待客約80人が集まった。

 

 挨拶に立った野口総領事は、同セミナーがJH開館以来初の地方連携事業であるとして、「福島県の復興状況を伝えることができて嬉しい」と開催を喜んだ。

 内堀知事は、震災時の支援に感謝を述べ、震災から6年半経った現在の福島の『光と闇』について紹介した。

 明るいニュースとして紹介された『光』は、県内の12%を占めていた非難区域が3%に減少したことや、除染作業が進められ非難区域外では放射線量が0・04~0・15毎時マイクロシーベルトと世界主要都市と変らない量になったことを挙げた。

 また、多くの観光地を持つ県内の温泉が日本の旅館ランキングで1位を受賞し、農産物輸出も来年には震災前最大となる見込みだ。

 一方、『闇』では県内全体人口が約200万人から180万人程度に減少したことなどを挙げた。

 また、日本国内の福島県産生産物の価格が震災前より低く設定されていることに触れ、「福島県産のものを避ける国民も多い。観光客の増加も厳しい」と震災の影響を説明した。

 続いて、福島県が震災から明るい話題を増やすために取組んでいる『挑戦』について紹介した。

 2020年に震災から10年目を迎える同県は、県内生産物の品質を保証するGAP(農業生産工程管理)認証数日本一を目指している。また、同年までにロボットの試験環境「ロボット・テストフィールド」の整備を終え、ワールドロボットサミット開催を計画。東京五輪では野球とソフトボールの開幕試合が行われる予定だ。

 講演終了後には質疑応答が行われた。「日本国内では原発に対しどのような扱いが求められているのか」との質問に、「福島県は世界でも例のない事故に遭い苦しんでいる。私達は県内10基の原子炉を廃炉し、原子力に依存しない社会を作りたい」と語った。

 一方で、「自民・公明党は原子力発電を重要な電力発電と考えている。2030年に国内の原発0を目指している党もあるが、具体的な道筋はなく実現するかはわからない」と説明した。

 講演に参加した丹治ズミーラさん(67)は福島県系人と結婚し、同県を訪問したこともある。講演内容について「私達は危険性については知っているが、詳細は何も知らない。日本国外の人にも知らせなければならない内容だと想う」と感想を述べた。

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