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「本当のヴェシャーメ」に陥らないために

W杯予選でまさかの敗退のイタリア代表(Svenskfotboll)

W杯予選でまさかの敗退のイタリア代表(Svenskfotboll)

 13日、サッカーのW杯の欧州予選でイタリアがまさかの予選敗退を喫し、世界中のサッカー・ファンに衝撃を与えた▼今回のW杯はイタリアのみならず、オランダやチリといった、「まさかこの国が」と言われる競合国が続々と予選落ちする現象が起きている。こうした、「本来起きてはならぬ恥」のことを伯国では「ヴェシャーメ」と呼ぶが、まさにそれが起きている感じだ▼もっとも伯国サッカー界にも2014年、そのヴェシャーメが起こった。言うまでもなく、本国開催のW杯準決勝の対ドイツ戦の1―7の惨敗のことだ。あの後、伯国内ではあのヴェシャーメの後遺症が強く、随分とセレソンに対する悲観論が飛び交った。とは言え、あの敗戦もW杯の上位で起こった話であり、W杯の本戦すら戦えないほどの屈辱ではない。それに比べたら随分とマシな話だ▼だが、過ぎた話になってしまうが、セレソンとて、その「本当のヴェシャーメ」に陥る危機はなかったわけではなかった。2015年のコパ・アメリカでは準々決勝、16年の同杯記念大会では決勝トーナメントに行けずに敗戦。W杯予選でも当落線上で「史上初の予選落ち」という事態があった▼だが、その最悪のシナリオは無事に回避された。それどころか、終わってみればセレソンは南米予選を圧倒的な強さで1位突破。FIFAランキングでも現在世界2位となり、復活を印象付けている▼その立役者となったのは、もちろんチッチ監督の手腕ではあるが、それだけでは正確ではない。その立役者になったのは、それぞれの所属クラブで成長を続けていた若手選手たちであり、チッチ氏はいわば、その良い芽を逃すことなく、的確に自分のチームに活かすことができた優れた媒介者だ▼前述のイタリア、オランダ、チリに共通した点としては、従来のやり方や年齢が上の実績のある選手に頼りすぎて、若手の底上げがなされていなかったことがあげられる。セレソンでも前任のドゥンガ氏のときに同様の傾向が見られ、今や世界的選手となったコウチーニョやカゼミロが見逃されていたような事実があった。「だめだ、だめだ」と焦って全体が見えなくなり、「良い要素」が落ち着いて見えなくなるようだと、こうした危機に陥りやすいということか▼そして、ふと思うのだが、こうしたことは何もサッカーだけにあてはまるものでもない気がする。たとえば伯国では、ジウマ政権からの景気後退やラヴァ・ジャット作戦の後遺症で国民が「伯国政治はもうだめだ」と叫ぶことが続いている▼だが、テメル大統領が不人気で世間からの批判の矢面に立っている裏側で、実はGDPや失業率は改善し、景気は上向いていたりもする。こうした要素に客観的になれずに、根拠も理論もなく不安だけを振りかざす気の焦りが、「本当のヴェシャーメ」を引き起こさないことを願いたいものだが。(陽)

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