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戦中の日本人迫害に政府謝罪を!=奥原監督、沖縄県人会に協力依頼=サントス強制立退きを語る

謝罪運動への協力を求めた奥原監督

謝罪運動への協力を求めた奥原監督

 「日本移民110周年だからこそ、戦争前後の移民迫害に政府の公式謝罪を」――映画『闇の一日』(2012年)の奥原マリオ純監督は24日、沖縄県人会で催された講演会で、謝罪運動への協力を同会に求めた。重大な人権侵害として1943年7月8日に起きたサントス市からの枢軸国民の24時間以内強制立退きでは、585世帯の日本人のうち375世帯が沖縄県人だった。奥原監督は15年12月に損賠賠償を伴わない謝罪要求訴訟を起こし、法務省で受理されている。だが審議は進まず、沖縄県人会から謝罪運動の支援を得たうえで加速させたい意向だ。

 ドキュメンタリー映画監督の松林要樹氏が16年8月、強制立退時のサントス在住日本人名簿を発見した。記載者の大半が沖縄県人であったことからブラジル移民研究塾が調査を始める流れで、この講演は企画された。約100人が参加、注目の高さを伺わせた。
 奥原監督、エスタード紙の保久原ジョルジ淳次論説委員、ブラジル沖縄県人移民研究塾同人誌「群星」の宮城あきら編集長が登壇し、強制立退きの真相を紐解いた。
 まず保久原論説委員が、なぜ強制立退が生じたのかを当時の歴史的文脈から説明した。1937年から45年までのヴァルガス独裁政権の新国家体制のもとで、敵性国民として日本人が弾圧された。迫害の史実を当時の法令から解説し、サントス沖の独潜水艦による貨物船魚雷撃沈事件が引き金となり、国防上の脅威としてサントス強制立退きを迫られた事実に言及した。
 宮城編集長が「立退き者の大半が沖縄県人と知り衝撃を受けた。被害者は生活基盤を破壊され、戦後ゼロからスタートし、家族を形成し、子供を立派に育ててこられた。そんな先達の無念に対し、今まで史実を十分に認識してこなかった」と残念そうに語った。
 「群星」第3号では、在住日本人名簿全てを掲載し、当時を知る4人の生存者の証言を掲載。第4号に向けて調査を深めるなかで新たに得た証言を紹介しつつ、「この事件を徹底的に追及していく」と意気込んだ。
 最後に奥原監督が、13年にサンパウロ州議会で日本移民迫害に関する公聴会が開かれ、謝罪要求訴訟に繋がった経緯を説明。「謝罪要求を行うために沖縄県人会に支援をお願いしたい」と訴え、島袋栄喜会長に嘆願書を手渡すと、拍手が沸いた。
 参加した兵庫県人会の松下瞳マルリ会長は「米国やカナダの日系人が強制収容された事実は知っていたが、ブラジルでもこんな事実があったとは…」と驚きを禁じえない様子だった。
 父母方の家族ともに強制立退をさせられた島袋カミロ文協理事は「日本移民に対して政府が行った過ちを認めさせるこのイニシアチブは重要。日本移民に理不尽な損害を与えたことに対する謝罪運動は理にかなったもの」と理解を示した。
 今後、県人会役員会で協力について検討される。島袋会長は「初めて知ったという人も多かった。これは非常に重要な問題で、この事実をブラジル社会に認知させる必要がある。あらゆる形で協力できれば」と前向きな姿勢を示した。講演会後、映画『闇の一日』も上映され、出席者は理解を深めていた。


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 奥原監督によれば、法務省管轄の真実究明委員会には、およそ2万件以上の訴訟案件が付託されており、そのほとんどが軍事政権下における人権侵害関連の訴訟案件という。以前、ブラジル日本文化福祉協会にも支援を打診したが、「これは議論が分かれる問題。全日系社会の代表である文協としては、どちらかの側に立つことで立場を偏らせる訳にはいかない」と断ったという。戦時下の日本移民迫害は先祖の名誉に係ることであり、サントス強制立退における被害者の大半は沖縄県人であることから、沖縄県人会は前向きな姿勢だ。同県人会の支援があれば飯星ワルテル連邦下議も力添えすることになっているといい、移民110周年の節目に審議が進展することを期待したいところか。

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