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先没者慰霊碑に正式な管理権=野村市議が仲介、市が県連に=民営化で撤去の危険も

(左から)コバス市長と山田県連会長

(左から)コバス市長と山田県連会長

 サンパウロ市のイビラプエラ公園民営化計画の検討が進められるなか、権利の所在を明記する書類がないことが懸案事項となってきた「ブラジル日本移民開拓先没者慰霊碑」。その管理権を明記する書類が今月4日、ブルーノ・コバス市長からブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長)に正式に渡された。市長自ら文協貴賓室を訪れ、譲渡式を行った。

 主に無縁仏の移民先駆者の御霊を祀るこの慰霊碑は、故・羽藤マリオ市議の働きかけにより、市から無償永久貸与を受けた土地に1975年に建立された。ただしその管理権を明記する正式書類がないまま、県連が維持管理にあたってきた。
 2月にジョアン・ドリア前市長がイビラプエラ公園を含む市内6つの公園の民営化計画を発表。それに伴い、同慰霊碑の管理権が明記された公文書がないことが発覚。公園が民営化された場合、慰霊碑が撤去される可能性があった。
 そこで県連からの要請を受けた野村アウレリオ市議が市とのパイプとなり、7月19日に管理権が公式に認められた。これは36カ月間の期限付で、随時更新が必要。
 式典で挨拶した野村市議は「民営化検討のなかで、日本館を他目的で利用したいという勢力もいたため、迅速に議題に取上げる必要があった。当初は多くの人が知らなかったが、日本館と慰霊碑の必要性について理解してもらえた」と話す。
 「この施設は単に清掃するだけでなく、特別な配慮を必要とするうえ、日系社会にとっての精神的意義は大きい。これまで日本館は文協、慰霊碑は県連が管理してきたように、日系人の庇護の下に置かれることは必須だった」と強調。実現にあたってのコバス市長の協力に謝意を滲ませた。
 日系妻をもつコバス市長は「サンパウロには世界各地から機会を求めて移民がやってきた。我々の市を信じ、建設に尽くした日本人に拠る所は大きい」と賛辞を贈り、「これらの施設を民営化対象外として例外措置を講じるのは、日系社会が日本文化を普及し、市とブラジルの発展に尽くしてきた先人を忘れず、施設の維持に協力してくれるから」と述べた。
 山田会長は、慰霊碑が天皇皇后両陛下を始め、来伯した日本からの要人が必ず訪れる重要な場所であることを強調。管理権譲渡を受けて「これにより先人の御霊は、安らかに眠りにつかれることになる。この市の重要な財産の後見人としての権利を公式に認められたことに対して、我々日系社会は感謝申し上げたい」と謝意を滲ませた。
 式典には、コバス市長、野村市議、アフォンソ・マソッチ同市国際関係課長、アンドレ・ストゥルム同市文化課長ほか、山田会長、呉屋春美文協会長、菊地義治移民110周年実行委員長らが出席。なお、コバス市長と野村市議には、文協と県連からそれぞれ感謝プレートが授与された。

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