ホーム | Free | 【サンタクルス病院開院80周年祝う】永田筑波大学長ら9人来伯=サンパウロ市議会が記念顕彰

【サンタクルス病院開院80周年祝う】永田筑波大学長ら9人来伯=サンパウロ市議会が記念顕彰

集合写真

 在ブラジル日本人同仁会が1939年4月29日に落成し、「日本病院」として親しまれたサンタクルス病院(石川レナト理事長)。その開院80周年記念事業が6月1日から5日までの5日間開催された。1日には日本から筑波大学、今川医療福祉グループ、現地のサンパウロ州総合大学(USP)と共に「第4回サンタクルス病院日伯学術協力セミナー」をサンパウロ市のインターコンチネンタルホテルで開催し、250人が出席。日本からは9人の来賓が駆けつけた。同セミナーは4日にも行われ、さらに5日には今川グループによる「今川セミナー」も開催され、節目の年を盛大に祝った。

 同開院80周年記念には、16年から連携協定を結んでいる筑波大学から永田恭介学長、平松祐司副病院長、大根田修国際室長、田中秀峰医師、丸島愛樹医師の6人、今川医療福祉グループから今川美明会長、今川医療福祉グループ筑水会副理事長で特別養護老人ホーム筑水苑の今川武彦施設長、藤原忠志企画開発部長の3人が来伯した。
 6月1日には「第4回サンタクルス病院日伯学術協力セミナー」と題し、表彰式及び特別講演が行われた。午前の部には、山田彰駐ブラジル全権特命大使、野口泰在サンパウロ日本国総領事、佐藤洋史JICAブラジル事務所長、元保健大臣及び医学博士の続正剛氏、サンパウロ州議の西川パウロ氏、各日系団体の代表者らが出席した。
 石川理事長はあいさつで「サンタクルス病院は、34年に昭和天皇陛下から御下賜金を賜ったのを機に募金活動が始まり、39年に開院した」と歴史を紹介。動画を観ながら、大戦中にブラジル政府に敵性財産として接収されそうになる等の苦難に見舞われつつ、今日まで発展した軌跡を振り返った。
 現在は国家病院認定機関(ONA)でレベル2に認定された優良医療機関として認知されている。今後さらに質を向上させるべく、「病床を170床から370床、手術室を16室、集中治療室の病床を70床、500台分の駐車場スペースを増やしていく」との展望を語った。
 山田大使は「また筑波大学等との学術交流を行い、ブラジルの医療・健康増進に非常に大きな役割を果たしている。日本政府としてもさらに支援していくつもり」と同病院の功績を讃えた。
 野口総領事は「サンタクルス病院は、ブラジルの医療水準向上に貢献してきた。トヨタ生産方式、おもてなし文化等の日本が世界に誇る魅力をブラジル社会にPRしてきた。今後も協力していきたい」と力強く述べた。
 来伯した筑波大学の永田学長は石川理事長に、80周年祝いと、兼任しているブラジル日本文化福祉協会の会長就任祝いの祝儀を贈呈。続いて「21世紀の医学 デジタルサイエンスの時代にSDGsを全うするための医学」と題した特別講演を行なった。
 SDGs(持続可能な開発目標)とは、15年に国連サミットで採択された世界を変革するための17の目標。永田学長は、これを達成している代表例として、日本はGDPが上がっているにも関わらず、エネルギー総消費量が減少しており、科学の進歩とエネルギーの削減に成功している事実を紹介した。

医療用ロボットスーツの講演の様子

 さらに同大学が「すべての人に健康と福祉を」を達成するために行っている三つの研究を紹介。睡眠の研究、医療用のロボットスーツ、病気になる前に病院を見つけるプロジェクト等について話した。
 さらに同病院の医師でUSP教授のマノエル・ジョコブセン・テイシェイラ氏の講演や、病院経営を日系社会に復帰させた功労者、続正剛氏(元保健大臣)ら関係者も続々と祝辞を述べた。
 サンパウロの野村アウレリオ市議と羽藤ジョルジ市議により、サンパウロ市議会から山田大使、野口総領事、永田学長、原晃病院長代理の平松副病院長、テイシェイラ医師の5人とサンタクルス病院が表彰を受けた。
 バイオリン奏者のルーカス・ガルシア・ムラモトさん、ビオラ奏者のリュウ・ワダさんによる演奏の後には、日伯学術交流プログラムが開始。筑波大学の大根田修国際室長、サンタクルス病院の佐藤エミリア医師、西国幸四郎医師が講演を行った。
 大根田国際室長は、筑波大学とサンタクルス病院の関係から同大学の国際戦略について語った。同大学では、ブラジルからの留学生が南米では最も多く、唯一の拠点をサンパウロに置いている。今後も同大学と同病院の関係を更に密にし、ブラジルに日本の科学技術を提供していくこと述べた。

乾杯の音頭を取った永田学長(望月二郎提供)

 同病院の開院80周年を祝し、二宮正人副理事長がサンタクルス病院と皇室の関係を記した『絆 皇室とブラジル』を刊行し、出席者らに配布された。
 式典後は昼食会を開催。永田学長が乾杯の音頭を取り、一同は和やかに交流した。
 午後からは日伯の専門家によるセミナーが開催され、医療用ロボットスーツ等の最新医療技術の紹介等が行われた。

 

 

 


日系社会と共に歩んできた80年の感謝=サンタクルス病院 理事長 石川レナト

挨拶する筑波大学の永田恭介学長

 おかげさまで、サンタクルス病院は開院80周年を迎えることができました。これも、日系社会の皆様をはじめとする、たくさんの方々のご信頼の賜物と心より感謝申し上げます。
 現在のサンタクルス病院は、日系社会、ブラジル社会の皆様へ最先端の医療を提供すべく、おもてなし教育を通じた人材育成、最新の医療設備投資、日本の大学との医療学術交流などを行いながら日々発展の努力を続けております。
 これからも皆様の変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


サンタクルス病院創立80周年を祝して=筑波大学 学長 永田 恭介

挨拶する石川レナト理事長

 この度は、貴院創立80周年、誠におめでとうございます。
 1939年の創立以来、ブラジル初の日系医療機関として、最新技術と高い医療レベルで、日系社会のみならず、ブラジル全体の医療や福祉に大きく貢献している貴院のご功績に対し、深甚なる敬意を表する次第です。
 貴院と本学は2016年に連携協定を締結して以来、サンパウロ大学での日伯学術セミナー開催、本学附属病院を中心とした研究者・医師・学生の派遣・受入れなど、学術交流や人的交流など、様々な連携活動をすすめてまいりました。
 本学と共同で申請したさくらサイエンスプランは、次世代に活躍する若手医師育成を目標に協働で取組むプログラムです。また、つくばグローバルサイエンスウィークへもご協力、ご支援を頂いています。
 学術分野での協力関係にとどまらず、石川レナト理事長の所有するアリアンサ農園の、薫り高く高品質なコーヒーが、株式会社サザコーヒーにて「筑波大学アリアンサエステートコーヒー」として販売され、大変好評を得ております。2018年10月には学内に、同農園をイメージしたサザコーヒー筑波大学アリアンサ店がオープンしました。
 これまでの多大なるご協力、ご支援に感謝申し上げるとともに、伝統ある貴院の益々のご発展を祈念いたします。


80年の歴史=幾多の病死をうけ日本病院創立=御下賜金と募金で悲願の建設

御下賜金を報じる当時の新聞

▼初期日本人移民の苦悩

 1908年にブラジル移住が始まり、781人が6月18日にサントス港に到着した。当時のサンパウロ州内陸部のコーヒー農園における日本人移民の状況は、困難を極めた。炎天下の中、十分な食事もとらずに一日に何時間も働いた。また、百年前の日本には、熱帯特有の病気は知られておらず、無防備な日本人移民をマラリアやその他の熱帯病に苦しんだ。
 当時は奥地に入植したため、近くに医療機関はなかった。医師の往診を受けるには多額の費用がかかり、更に言葉の壁もあったため、多くの移民が命を落とした。
 こうした日本人移民を支援するために、サンパウロ市内の日本人団体は、26年に「同仁会」と呼ばれる在ブラジル日本人慈善協会を設立。さらに同年10月、ヴィラ・マリアナ区のサンタクルス通りに1万4千平方メートルの土地を購入した。

1939年の落成当時の「日本病院」(『サンタクルス病院の歴史』サンタクルス日伯慈善協会、2017年より)

▼募金活動で約100万円、病院建設着工

 33年には、移民25周年(33年)を記念して、「日本病院」という名前で定礎式を挙行した。これにより、ブラジル国内外の全ての日系社会や日本政府を巻き込んだ大規模な募金活動が始まり、34年には昭和天皇名で5万円の御下賜金を賜った。
 その後の募金活動で約5千コントス(約100万円)の寄付が集まり、36年に病院建設が着工。39年4月29日、昭和天皇の誕生日に、サンタクルス病院は開院した。当時の正式名称は「日伯慈善会サンタクルス病院」だった。
 しかし41年に太平洋戦争が開始し、42年1月にはブラジル政府は枢軸国との外交関係を断絶。同病院は敵性資産として接収されそうになった。その後、長い間、運営権は日系社会の手から離れた。

▼70万人の署名、日系社会に経営権戻る

 80年代末に、サンパウロの日系人の間で、サンタクルス病院の運営権を取り戻したいという要望が高まった。
 地道な署名活動の末、90年に70万人の署名が集まり、経営に日系人が参画する協定が結ばれた。名称も「日伯慈善協会サンタクルス病院」となり、経営権が戻ってきた。
 その後、同病院は医療設備等を向上させ、14年には安倍昭恵首相夫人が訪問。翌15年には秋篠宮同妃両殿下がご訪問される等の機会も得た。
 日系社会への復帰後の約20年間の努力が実り、国家認定機関(ONA)評価レベル2の認定を受けた。今後は病院の設備を拡大させ、更に今年は低侵襲手術(顕微鏡を使って小さな傷口でする手術)や医療ロボットの導入を実施していく計画だ。

image_print

こちらの記事もどうぞ