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明治維新は非西洋的大変革=北岡JICA理事長来伯講演=国民の政治参加進めた近代日本

講演を行う北岡理事長

 国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長は「日本開発研究プログラム(フジタ・ニノミヤチェア)」に関する特別講演を4日夜、サンパウロ市セントロ区のサンパウロ州立総合大学(USP)法学部講堂で行い、約400人が聴き入った。北岡理事長は「歴史的に世界を先導してきたのは西欧だが、非西欧で大きな発展をとげたのが日本。だから日本の近代化の歴史を学ぶことに意味がある」と語りかけた。

 JICAとUSPが共同事業「日本開発研究プログラム(フジタ・ニノミヤチェア)」を今年開設したのを記念し、北岡理事長は「日本の近代化の歴史と発展の経験」をテーマに1時間ほど講演した。同理事長は、日本政治外交史を専門とする歴史学者だ。

関係者ら(左から2番目が野口総領事、4番目が山田大使、アゴピアン学長、北岡理事長、二宮氏)

 まず「明治維新は国民の政治参加、能力主義を導入した大きな変革だった」と説明。約260年続いた江戸幕府、約700年続いた武士の時代を終わらせ、天皇中心の政治に移行させた。士族が新政府に戦いを挑んだ西南戦争で新政府が勝利すると、武力で勝てないと悟った士族を中心に自由民権運動が始まった。
 その運動の高まりを受けて、1885(明治18)年には内閣制度を創設。内閣総理大臣に就いた伊藤博文は高い身分の出身ではなく、これが能力主義の導入となった。89年には非西欧で初の憲法を発布。90年には議会が開かれた。
 明治天皇が1868(明治元)年4月に示した明治政府の基本方針「五箇条の誓文」にある「万機公論に決すべし」(国家の政治は世論に従って決定せよ)を、明治政府は尊重した。国民の声を引き出し政治に参加させることが近代化につながると考え、予算を否決する権利を衆議院に持たせ、国民の声を反映させる仕組みを作ったと語った。
 講演後、バハン・アゴピアンUSP学長は「日伯をつなぐ長年の交流には常にJICAが関わっていた」と功績を認め、「フジタ・ニノミヤチェアも必ず大成功を収める」と支持した。
 日本開発研究プログラムは、USP法学部国際法・比較法学科に日本の近代化を学ぶ講座を開設し、日伯の関係強化に貢献する人材を育成するプログラム。日系人初の外交官の故藤田エジムンド氏とUSP法学部教授を務める二宮正人氏の名前をとっている。


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 USPで行われた北岡伸一JICA理事長の講演では、質疑応答の時間が設けられ、日系人からは「ブラジルには日系人も多く、日本との縁もあるのだから、日本は先進的な技術、経済力を生かしてブラジルへの支援をより積極的に進めてほしい」との意見が出ていた。また北岡理事長の方からは、日本にくる外国人留学生に向けて放送大学と提携し、日本の近代化史を学ぶ番組を英語で制作していることが明かされた。これのポルトガル語字幕版をつくって、ブラジルでも見られるようにすれば、日本の近代化に興味があるブラジル人も見られる。グローバルな視野を持つ歴史学者らしい事業アイデアか。

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