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移民史料館=第3期工事完了、お披露目=研究センター、斎藤広志記念室=書道、折り紙など日本文化普及

主催者と主賓で乾杯

 サンパウロ市466周年とブラジル日本文化福祉協会(文協)創立65周年を記念して、ブラジル日本移民史料館(山下リジア運営委員長)は23日午後、文協ビル9階で第3期工事の終了式を行い、「生きた史料館」スペースのお披露目を行った。これは「移民・日本文化研究センター(梅棹忠夫先生記念室)」(3階)と「斉藤広志先生記念室」(8階)の二つで、スポンサー企業約30社の代表者やブルーノ・コーヴァスサンパウロ市長代理のルイス・アウヴァロ国際関係局長ら関係者約60人が出席した。

 まず同史料館を運営する文協の創立65周年ビデオが上映され、グローボTV局のマルシオ・ゴメス元日本特派員が語り手を務めていた。文協の石川レナト会長はあいさつで「市創立466周年に合わせて一般公開した。若者を引き付けるには、近代化は不可欠。企業の協力に感謝する」と語った。

 協賛企業を代表してブラジルトヨタ自動車の下村セルソ副社長は、改修工事後に娘を連れて史料館を訪れた際、彼女がとても感動していたエピソードを紹介。「サンパウロ市は移民が作った町。ここには日本移民だけでなく、全ての移民に共通した体験が展示されている。このプロジェクトはとても意義深い市へのプレゼントだ」と語った。他に協力したブラジル・ホンダ、MUFGバンク(ブラジル)など主だった約30社の紹介映像が展示映像に組み込まれた。

 アウヴァロ国際関係局長に続いて、野口泰在サンパウロ総領事は「史料館は日本とサンパウロの友情のシンボル。日本移民を快く受け入れてくれた友情が永遠に続くことを祈念します」との祝辞を贈った。

 1978年に開館されて以来、ほぼ40年間そのまま展示されてきた同館では、エアコンや電気設備の老朽化や展示内容のマンネリ化が問題とされるようになっていた。そこで2017年に近代化プロジェクトが作られ、日系企業に改修資金を依頼し、日本移民110周年を記念してご来伯された眞子内親王殿下のご出席のもと、2018年7月に第1期工事(8階)の再開館式が行われた。

 第2期工事は昨年4月に7階部分の改装を完成させ、今回は「移民・日本文化研究センター」と「斉藤広志先生記念室」の二つを完成させた。この二つは、梅棹氏(故人)の「生きた史料館」というコンセプトに基づいたもの。彼は日本の文化人類学のパイオニアで、国立民族学博物館初代館長として移民史料館の基本構想に関わった。移民史料館の初代館長が斉藤広志USP教授(故人)だ。

 「生きた史料館」は梅棹氏の《歴史的な古い物品を並べるだけが史料館ではない。資料を調査して研究活動ができ、歴史の真実を発掘し、新たな知識を共有するなどの活動があってこそ、本当の生きた史料館である》という言葉からきたもの。

 今回3階にできた「移民・日本文化研究センター」は、同史料館の収蔵品を研究する場所として用意され、史料の撮影やデジタル化、研究者が活動する場所になる。8階は日本文化を体験する場所として、映像を見ながら習字や折り紙ができ、さらに教育に力を入れてきた日本移民の歴史を表す映像の上映が繰り返し行われる。多目的スペースとして特別展、映画上映、セミナーも行うことができる。

 

史料館=残るは9階、第4期工事のスポンサー募集中

 

 ブラジル日本移民史料館では、最終段階となる第4期工事を進めるべく、急ピッチで準備を行っている。9階を改装して、1960年代から現在までの戦後の歴史展示を行い、円形シアターでは現在の日本文化を映像で堪能できるようにする。移民関係の書籍や史料館グッズの販売所や、今までなかった喫茶スペースも作る予定。

 企業の場合は、連邦政府の文化振興法(旧ルアネー法、LIC)の許可が出ており、事業利益の連邦税分を史料館に寄付することで替えられる。

 同様にサンパウロ州政府に支払うべき税金を寄付に替えることも可能。法人だけでなく、一般個人が所得申告するときも史料館への寄付を控除できるという。詳しくは同史料館事務局(電話=11・3209・5465)まで。

  

■ひとマチ点描■=斉藤広志氏の長女も感激

左から篠原ベルナルドさん、文子さん

  「生きた史料館」スペースのお披露目に出席した、斉藤広志氏の長女、篠原文子(ふみこ)さん(76、二世)は父を顕彰した記念室が改修されて立派になったのを見て、「素晴らしい部屋になっていてビックリしました」と感動の面もちだった。

 文子さんの夫ベルナルドさん(75、二世)も「仕事の関係でマット・グロッソ・ド・スル州に住んでいたので、20年ぶりぐらいに史料館に来た。全館が改装されていて驚いた。全く別の史料館のよう」とのこと。

 山下リジア運営委員長は、「斉藤先生が亡くなった時、遺族から多額の寄付が史料館にあったことを受け、教授の名前を付けた記念室が設けられたんです」との経緯を振り返った。

 もちろん展示品は古いものばかりだが、展示手法や考え方はどんどん最新式に。移民110周年というタイミングを一番活かした組織の一つは史料館に違いない。(深)

 

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 アウヴァロ国際関係局長は「市創立466周年と文協65周年を同時に祝えて光栄だ。コーヴァス市長は移民にゆかりの深いサントス市で生まれ、本人には日系人の子どももいる。理解が深いから、イビラプエラ公園自体は民営化しても、そこにある日本館の運営権は今まで通り文協に属するように市長は決めた」と語り、拍手が送られた。

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