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《ブラジル》新保健相がG20保健相会議に参加=WHOの重要性は認めたが

ボルソナロ大統領(右)とタイシ新保健相(Marcello Casal/Agencia Brasil)

 【既報関連】ネウソン・タイシ新保健相が19日、G20保健相会議に参加し、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に対峙するために世界保健機関(WHO)が果たしている役割とその重要性を認めたが、ブラジルの社会的隔離策への明言を避けたと19、20日付ブラジル国内紙、サイトが報じた。

 社会的隔離は限定的にし、経済活動再開をと訴えているボルソナロ大統領が、WHOが勧める社会的隔離を積極的に擁護していたエンリケ・マンデッタ前保健相を解任した直後だけに、新保健相がWHOの立場や方針を支持するか否かは、世界中が注目していた。
 そういう意味では、新型コロナウイルスはどの国にとっても大いなる脅威であり、ブラジルもWHOの役割と重要性を認めている事や、他国と共に解決法を見出すために働くとタイシ氏が明言した事は、WHOやG20の保健相達を安心させた。
 タイシ氏は会議後の声明で、積極的に検査を行い、実態を明確にする必要がある事や、予防接種ワクチンの開発や、(特定医薬品の適用も含む)有効な治療法の確立までは、感染拡大抑制のための方策が必要である事を認めた。また、州や地域の特性や特殊性を尊重する事も明言した。
 ただ、会議に出席した他国保健相やWHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長らに、「外出自粛緩和はその国での流行が終息した事を意味しない。新段階に入ったという事だ」と曖昧なニュアンスの発言をした。
 マンデッタ氏は、保健省の方針と大統領の言動が一致せず、国としての方針が明示出来ないと苦言を呈し、軍人閣僚からも不評を買った。だが、国の方針が明示されていない事が流行終息を遅れさせ、社会的隔離を長引かせる事、医療崩壊や経済危機をより深刻化させる事は歴史的な事実だ。
 米国では1919~20年のスペイン風邪流行時、外出自粛をいち早く採用した市は流行終息も早く、経済の落ち込みも小さくて済んだが、外出自粛を疎かにした市は死者数も急増、経済活動の回復も遅れた。
 ブラジルでも、外出自粛策採用が遅れたセアラー州は、感染者数急増を見、国内で最初に集中治療室がなくなるという事態に陥った。北東部では、同州州都フォルタレーザやペルナンブコ州州都レシフェで感染者が出ていたのに、住民達が他州や他市に自由に旅行し、感染を拡大させた。19日現在、セアラー州は感染者数3位、死者数4位、ペルナンブコ州は感染者数4位、死者数3位だ。
 日本の専門家は、隔離率80%なら1カ月で感染者数が減り始めるが、70%なら2カ月かかるなどと明言しているが、ブラジルでは医療崩壊が起き始めているのに、隔離策が緩み始めている。

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