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新日系コミュニティ構築の鍵を歴史に探る=傑物・下元健吉=その志、気骨、創造心、度胸、闘志=ジャーナリスト 外山脩=(15)

産青連(下)

 1938年、下元健吉は動き始めた。中央会に属する組合を各地に訪れ、若者に産組論を説き、目標を与え奮起させ、結集させようとした。
 1939年の年頭には、コチアの機関誌で、こう唱えている。
 「我々は、此処ブラジルで産業組合を組織した。組合運動の究極の目的は、新しい社会の建設にある。新しい社会とはなんであるか、それは言わずと知れた共存共栄の社会である。従来の利益社会から共存共栄の社会を創造する。利益社会人から組合人となる」
 文中「利益社会から」は「資本主義社会から脱して」の意味であろう。
 ここで下元が使った「新しい社会」という言葉は極めて重要である。以後、死ぬまで彼の目標となる。この目標を命をかけて追求し続ける。
 その下元が動員しようとした若者は、かつての彼と同様、少年期に移住して来た者が多かったが、それが青年期に入り、この世代特有の現状に対する物足りなさ、不安感に悩んでいた。
 何かをしなければならないと焦りつつも、どうしたら良いか判らぬ無力感に苦しみながら、農場あるいは組合の職場で、苛立たしい日々を過ごしていた。何かが起こることを期待していた。
 そこに、ピニェイロスのじゃがいも市場での仲買人との抗争勝利で一躍その名を轟かせた「下元専務」から声がかかったのである。強烈な電波を受けた様に敏感に反応した。
 下元は弁も立った。講演会では壇上から説き来たり説き去り、座談会では独特の話術で諄々と語り続けた。どんな田舎の土くさい若者にも「団結は力だ。団結すれば必ず勝つ」と自信を持たせた。
 若者たちは時の経つのも忘れて聞き入った。前途に光を発見、奮い立った。
 1939年、下元は彼らの代表者をサンパウロに呼び寄せ、農村中堅青年講習会なるものを開いた。そして叫んだ「立て!」「産組運動に身を投じよ!」と。
 下元の論には、自分たちが支配する自分たちの新社会を自分たちで建設する――という燃える様な夢がこめられていた。国づくりにも似た目標であった。
 講習会は1941年まで計4回開催された。回を重ねるごとに熱気を増した。下元は「産組運動以外に、我々百姓を救う道なしと断じ、「ブラジルにも産青連を結成せよ」と迫った。
 4回に渡った講習会を通じて、受講者の精神の高揚状態は、異常なほどのモノがあった。その雰囲気は1941年の4回目の講習会で最高潮に達し、終了後の6月29日「全伯産業組合青年連盟」が結成された。
 委員長には下元健吉が選出された。後に盟友5千、邦人史上、最大の組織といわれることになる。
 下元は、一旦こうと思ったことは何がなんでもやり抜く性格で、そのエネルギーは凄まじかった。
 かくして、日系農業界を網羅する新社会を建設する――という目も眩むような大事業に手をかけたのである。
 郷関を出でてから27年、43歳であった。高知県高岡郡半沢村で過ごした少年時代、そしてその後の青年時代に育んだ志が、遂に現実のものになりつつあった。
 なお、産青連運動は、コチア産組に於いては、組合員増に大きく影響した。その数は1941年に2千人を超した。自然、事業量も伸びた。邦人農家の青年層に広まった下元人気によるものであった。(つづく)

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