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特別寄稿=聖市/羽田=コロナ禍でどう変わる?=空港や機中での過ごし方=金剛仙太郎=(下)

5月19日フランクフルト発 全日空羽田行き

フランクフルト空港で中国行きのフライトを、間隔をあけて待つ乗客たち

 機内に入ると広々とした空間にまばらに乗客が既に座っていた。聞くと、エコノミークラスの乗客は26人、ビジネスクラスは数名だという。素人が見ても赤字は必至だが、こんな状態でも運行しているだけでも感謝したくなる。
 ここでもアルコールによる消毒の儀式を終えて出発に備えた。ルフトハンザ航空同様、毛布は支給されたが、万が一を考えて持参したタオルケットを足下に置く。
 ただ、一度使ったから菌がどこかについている、と考えるのが妥当だが、もう既にそんな細かなことに気を遣っていられないほど、疲れきっていた。衛生面の穴を突き始めたらキリがない。対策を講じたらあとは運を天に任せるつもりでやり過ごすしかない。
 実際、衛生面に関しては過剰なまでに気を遣うまでになっていて、妻と揉めることや、自分自身が疲れてしまったこともしばしばあった。こんなことではとても日常生活が遅れないし、精神が病んでしまうと気付いた時から、良い塩梅で付き合って行く術を少しずつ身につけて今日までやってきたつもりです。
 離陸前に客室乗務員から厚生労働省より配られた衛生面に留意した過ごし方、並びに検疫官に提出する書類を渡され、いよいよPCR検査という戦いの場に挑むのだな、と一人決意を新たに致しました。
 軽い機体はあっという間に飛び立ち、東京へ進路を定めたのでした。機内を見渡すと家族連れ、単身者、外国人など、人数が少ない分、一人一人に注目してしまう。それぞれが神妙な面持ちで(マスクで顔は見えないけれど)帰国をしていると思うと、自然と同志のような気持ちが自分の心の中で湧き上がって来た。
 羽田までよろしく!
 食事はエコノミー、ビジネス、ファーストも一律同様、飲みものは種類を限っての提供、アルコールを頼む人はいなかったので、選択肢からなかったのかもしれない。日本行きの安心感からか、あっという間に眠りに落ち、目が覚めた時には既にロシアの東端、日本海の手前まで来ていた。

5月20日8時00分、羽田着

羽田空港に降りてすぐ、最初の受付

 予定通りの時刻にスムーズに着陸、とうとう日本まで帰って来てしまったと実感。ブラジルへ渡って以来、10回ほど日本へは帰国しているが、今回の帰国が最も早く感じたものでした。それが何を表しているのか分からないが、それだけブラジルに根っこを生やしていたということなのか、と。
 とにかくあっという間に日本へ着いてしまった。それと同時に、もはや家族とは地球の反対側に位置するようになってしまった、と。時間の早さとは裏腹に、物理的に離れていることを実感せざるを得なかった。
 到着後、ドイツのようにしばらく待たされるのかと思っていたのだが、人数が少ないせいか、10分程で案内され、降りてすぐにある搭乗口にて待機させられる。テレビやインターネットでいくらか情報収集をし、気持ちの面でもシュミレーションして来たとはいえ、これから起こる未知の出来事に緊張していた。通常であれば日本の雰囲気を楽しみ、味わい、家路に着くところが、今回は完全なる監視下に置かれ、自由の無い帰国者であることで、かつて無い気持ちに支配された帰国だった。
 機内で渡された書類は次の通り
(1)税関申告書(通常通り)
(2)申告書(待機場所までの移動手段、滞在期間、待機場所、連絡先など)
(3)質問表(過去14日以内に流行地域に滞在していたか否か、症状のある人との接触があったか否かなど)
(4)LINEアプリ等を活用した健康確認。個人情報の取り扱いに関する説明書兼同意書
以下は持ち帰れる書類
(5)保健所からのお知らせ(健康状態のチェックなど、14日間の過ごし方など)
(6)厚生労働省からのお願い(LINEに登録して健康状態を保つお手伝い)
 この時期に帰国する人は何らかの事情がある人がほとんであろう。それゆえ、空港でこのようなことが行われるということはあらかじめ想定してあった可能性が高い。コロナヴィルスの危険性も相まって、皆さん、一言も発せずに粛々と待機しているのでした。
 さて、ここでは乗客全員が一同に集められ、優先順位が配慮されたグループに分けられた。
 つまり、(1)小さいお子さんを持つ方、介助が必要な方など、(2)家族などが迎えにきていたり、交通手段を確保し、実家やホテルなど、移動手段と移動先が決まっている人、(3)上のどれにも当てはまらない人。私の場合は前もって確保していたウィークリーマンションでの宿泊であったので、(2)に該当する。と言っても自己申告なので、どこまで真実を伝えるかは人それぞれだし、ブラジルにいた頃はどうしようか迷っていたけれど、何となく本当のことを言おうと思い、ウィークリーマンションに1週間いた後は、新居に移ることも申請した。
 余談であるが、このウィークリーマンションでさえ、コロナの影響で帰国者には一定期間、貸さないと判断するオーナーが大半であった。至極普通の発想だと感じた。

到着早々、「アベノ毛布」の洗礼

羽田空港のPCR検査会場

 さて、子供連れや高齢者を経て、ようやく自分の番が回って来て、いざ決戦へ、という気持ちで一歩前へ歩を進めた。準備された長テーブルと椅子の受付で書類のチェックを行い、一人ずつPCR検査会場へ。
 PCR検査自体は通路に設けられた質素で簡易的に準備された場所で行われ、5秒間、綿棒を鼻に入れ終了。そのまま別の受付に移動した。
 あっけなく終わったが、他者に綿棒を鼻の穴に入れられる体験も人生でそうないだろう、と思えば貴重なもの、と前向きに捉えることとした。
 ここでは次の目的地までの移動手段や待機場所の確認をされる。また、検査結果が出るまでは約12時間と伝えられ、帰国早々で疲れているにも関わらず、次なる戦いに対して気合いが入り直す。
 別室(と言っても搭乗口のベンチだが)へ移動し、検査結果が出るのを待つ。周りにいるのはざっと20人、既に前の便で到着した乗客が待機中であった。気がつくと子供を連れた家族の姿は見えなくなっていたので、恐らく行き先が自宅で、かつ迎えが来ていたのだろう。この条件を満たした人は検査結果を待たずして空港から出られた可能性が高い。
 今回程事前の調査、並びに対策の有る無しでここまで結果が変わってくるとは夢にも思わなかった。ここまで来たらもうまな板の上のコイで、言われるままに身を任せる他ない。

洗わないアベノ毛布

 入国に備え、歯を磨いて顔を洗い、服装を整えた。午前中だからか、まだ少し肌寒い。冬に入りかけていたサンパウロから持参したダウンジャケットを羽織り直していたところ、検疫の職員の方から毛布の差し入れがあった。気が利くじゃないの、と感心して少し横になったところふと気付いた。「この毛布、綺麗だよな」、と。
 ところがふと見ると、毛布の所々に長い髪の毛が付着している。疑いが確信に変わった瞬間で、今回ばかり怒りさえ覚えた。どうしてこういう大切なポイントを省略しようとするのだろうか。ここまで帰国者は必死で守ってきた何かがプツンと糸が切れるように、がっくりしたものだった。
 これについてはアベノマスクを揶揄した、アベノ毛布と呼ぶとしよう。ただ、その後、弁当とペットボトルのお水が配られた時には有り難かったが、唐揚げにお新香とあんかけ卵が入った、老舗のお弁当やさんのもので、アベノ弁当にしては美味しかった覚えがある。
 ただ一方で、これ以外の選択肢は無く、完全なベジタリアンである私の妻や、より厳しいルールに沿って食材を選んでいるベーガンの人にとっては全く有り難くなく、この辺りはまだまだ考慮すべきだと感じた。

あっけなく4時間で結果が出たPCR検査

検査後の受付

 肝心の検体を採取したのは午前9時、結果的には13時半には結果が判明し陰性であった。
 実は、検査結果が出るまでの時間を見越して、朝8時に到着する便で帰国したものの、夕方18時にハイヤーを予約してあった。それだけ多くの人が結果を待つために空港で過ごしたという話を聞いていたからで、30分や1時間で終わるとは思ってはいなかったが、4時間と少しで結果が出るとは想像だにもしなかった。
 おかげさまで陰性ではあったが、検疫官の方から今から1時間の内に空港から出てください、と無表情のまま伝えられた。空港での水際対策は大切なのは十分分かるけれど、指示だけして全くフォローの無いのもどうかと思うな、とぶつぶつ言いながら搭乗口に1台だけあった公衆電話に10円玉を入れ続け、ハイヤー会社に連絡し、1時間半後、無事に空港を後にした。

検査終了後の対応の違い
聞いた範囲と予想

★検査結果が出る前でも、移動先が自宅で、かつ家族が迎えに来ているなど、移動手段が確保されていれば解放されている(滋賀県から家族が迎えに来ている方もいた)
★移動先がホテル、ウィークリー、マンスリーなど、かつ移動手段が確保できている人は結果が陰性であることを条件に解放されている(私のケース)
★上記のどれにも当てはまらない人は陰性であっても、移動手段と待機場所が決まっていない場合、その場(検疫官の前で)確保させられていた。さもなくば、「検疫バス」に乗り最寄りの用意されたホテルへ移動(と思われる)。陽性の場合も検疫バスに乗り最寄りの用意されたホテルへ移動(と思われる)
 私のケースはウィークリーマンションを都内に確保、そこまではハイヤーを使用する旨を申請したので、陰性という結果が出た後に解放された。ハイヤーは下記を使用。ちなみに検疫官がハイヤー乗り口まで付き添うことはなかった。
https://www.rakurakutaxi.jp/
 検疫官に直接聞いたところ、最近では陽性は出ていない、とのこと。今回私が乗り合わせた乗客、並びに同じ場所で待機していた乗客の中には陽性はいない模様。以上ですが、実際には様々な便の人たちが一緒の部屋で待っていたので(それでも30人ほど)、誰がどの便で、どのような状況なのかは分かりませんでした。

※備考ーチケットの購入方法

 全日空のオフィシャルサイトから購入
(理由:当初はブリティッシュエアー+日本航空のヒースロー経由のフライトを日本航空アメリカのオフィシャルサイトを通じて購入していたが、サンパウローロンドン間が運休に、それに伴い変更を全ての行程の変更を余儀なくされた。ただ、この際に日本航空から直接電話があり、日本語で色々とアテンドしていただけたことが有り難かった。
 一方で、これに伴いブリティッシュエアーから送られてきたメールには変更やキャンセルには自ら本国のブリティッシュエアー(イギリス)に電話をしなければいけない、と書いてあり、少なくとも対応の差を感じた。
 最終的には日程の都合がつかなかったが急遽、ルフトハンザー全日空、フランクフルト経由に変更し、全日空のオフィシャルサイトから購入した。オフィシャルサイトから購入した理由は、変更、キャンセルに伴う返金対応の正確さと迅速さ、日々変わるフライト状況、コロナに伴う旅行代理店の従業員の減少、情報更新の遅れ、タイムラグなどを考慮したからです。(終わり)

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