ホーム | コラム | 樹海 | 《ブラジル》記者コラム これからが危ない感染ピーク でも年末にはコロナフリー?!

《ブラジル》記者コラム これからが危ない感染ピーク でも年末にはコロナフリー?!

マナウスのノッサ・セニョーラ墓地で完全防備のもと葬儀を執り行う神父(5月2日、Foto: Nathalie Brasil/Semcom)

 高齢者がブラジル生活を送るにおいて、これから2、3カ月が一番危険な時期ではないか―という気がする。
 今までは序の口で、これから「コロナ死者激増」と「大不況」というダブルパンチに見舞われる。今後起こりうるシナリオを列挙すると、以下のようになる。
▼「4月、5月のコロナ対策でブラジル経済が壊滅的に破壊された。100年に一度というレベルの最悪の経済数値が、6、7月に続々に顕在化する。大不況に陥り、今後、数年から10年がかりで回復させることになる」
▼「大不況によって会社や商店の倒産、失業者激増により、生活が成り立たなくなる人が急増して、社会不安が高まる。自殺者や犯罪の増加、治安の悪化という形で顕著に現れるようになる」
▼「コロナと大不況のダブルパンチによる不安定感を背景に、10月にブラジル地方統一選挙、11月の米国大統領選挙に向けて政治抗争が過激化して、右派左派共にコロナを軽視してデモに明け暮れる」
▼「6、7月にサンパウロ州は感染ピークを迎えて医療崩壊し、ブラジル国全体では少し遅れて8、9月にピークが訪れる」
▼「コロナ感染の拡大が止まらない中、外出自粛を解除しはじめたので最終的な死者数は20万人を超える可能性が高い」
▼「ボウソナロ政権は積極的なコロナ対策を今後も採らない」
▼「中央政府と地方政府で統一したコロナ対策は今後も打てない」
 これが起きる可能性が高いことを頭に置いて、「どうやったら自分への被害を最小化できるか」「何が自分にできるか」を考えるしかない。
 常に最悪の場合を想定して備える。それがブラジル的リアリスト(現実主義者)だと思う。

今の感染者数・死者数は2、3週間前の結果

ブラジルの日ごとの新規死者数の推移(From Wikimedia Commons,SBanksX)

 「日ごとの新規死者数の推移」グラフを見てもらえば分かるが、5月中頃から1千人の大台を超えるようになり、現在は1500人台に近づいており、その勢いはまったく衰えていない。
 「サンパウロ州政府が外出自粛措置を6月から段階的に解除する」と5月27日に発表したから、それから死者数が激増したかのように言う大手メディアがあるが、それは本末転倒だ。
 感染症流行の状況を判断する上で大事なのは、「3、4週間前の結果が、今現れている」という点だ。感染してもすぐに症状は現れない。潜伏期間が10日、2週間あり、その後症状が現れる。
 最初に死者千人を超えた5月20日の状況は、外出自粛真っ最中の5月初めの市民の行動の結果だ。ここから分かることは、悲しいことに「ブラジルでは自粛をしても決定的な感染抑制にならない」ということだ。
 第一に「ブラジルは先進国ではない」という大前提がある。先進国と同じことをやろうとしても、民度や教育の違いが大きいから出来ない。同じ事をしても違う結果が出ることは普通だ。
 だが、先進国ぶって「外出自粛制限」「家にいろ」スローガンを叫ぶ声が、社会全体に響き渡っている。先進国ならそれでいい―とコラム子も思う。
 だが先進国の場合、「家にいろ」というのと同時に、休業補償や生活費補助を政府がしっかりと出して、家にいても大丈夫なように手当をしたうえで言う。
 だが、ブラジルのような新興国や途上国の場合、政府は金がないから大した手当ができない。ブラジルでは600レアル×3回+アルファだけだ。4回分出たとしても2400レアル(約5万3千円)に過ぎない。これでどうやって4カ月、5カ月間も「家にいろ」というのか。
 「できることなら家にいたいが、お金がないからいられない」というのが庶民の現実だ。生活費も与えないのに、ただ「家にいろ」というのは「飢え死にしろ」と言っているのに等しい。
 「感染拡大が治まるまで家にいる」のが理想であることは、言われなくても皆分かっている。百も承知だが、できない現実がある。飢え死にしたくないから、皆家を出て仕事に行く。
 家にいられるのは出なくても良い条件に恵まれた人だけだ。

本当に危ないのは、これから

 これからショッピングセンターや商店、事務所、会社も営業を再開して、人の動きが活発化する。それに伴って感染は拡大する。これから危険度が増す。
 外出自粛をやっても今のスピートで感染拡大してきたのだから、それを段階解除する6月からの感染状況はさらに悪化する。2、3週間後に結果が出始めるから、7、8月が最悪になる。
 4、5月に破壊された経済数値が、ちょうどその時期にかぶさるように報道され、社会集団心理的にも最悪になる。
 産業界は「お前には二度と選挙協力しない」という断末魔の喘ぎを強烈に政治家にぶつけているだろう。だから、先進国なら外出自粛やロックダウンすべき感染爆発状況を示しても、ブラジルではもう一度という議論は難しいだろう。
 州政府がロックダウンしたくても、あちこちから邪魔が入ってできず、中途半端でグチャグチャな対処となる可能性が高い。
 その結果として「意図せずに集団免疫に向かう」状態だ。「これからが最悪の状況になる」という前提で注意して暮らすしかない。
 だから「今後の感染拡大に巻き込まれないように、高齢者は特に気を付けましょう」と呼びかけたい。
 高齢者が外出する時にメトロやバスを利用する際はしっかりとマスクをし、うがいや手洗いを励行するべきだ。
 心配なのは、憩の園、スザノ・イッペランジアホーム、サントス厚生ホーム、マリンガ和順会などの日系高齢者福祉施設だ。できるだけ、ボランティアや家族の若者との接触をさけ、医療従事者を含めて従業員で怪しいものがいたら即自宅待機を徹底するなどの対処をしないと、これからが危ない。

年末までにコロナフリーか

 「あと3カ月で20万人死ぬかも」「大不況に陥るかも」を前提に考えよう。その「辛い現実」を前提にして、我々のような力のない一介の外国人移民、一般庶民は、どうしたら自分への被害を最小化できるか―と考えるしかない。
 だが物事は考えようだ。
 もしも自分がコロナにさえ罹らなければ、9月頃にはサンパウロは集団免疫に到達している可能性がある。「集団免疫」とは、人口の6、7割が感染済みになって、コロナウイルスに対する抗体を持つ状態になることだ。そうなるともう流行は起きない。
 つまり「コロナフリー」(コロナの危険性から自由な場所)となり、公衆衛生上、世界でも最も安全な都市になっている。遅くなっても今年いっぱいには集団免疫になる可能性がある。
 世界の国々がいずれ到達しなければならない「コロナへの集団免疫(ワクチンにせよ、感染にせよ)」ゴール地点があるとすれば、ブラジルは一番そこに近い存在になっているかもしれない。世界の国々が目指しているゴールに、一番近いのがブラジルと思えば、「もう少しがんばろう!」と思えないだろうか。
 でもそれは「今後3、4カ月の間にコロナで20万人前後が死ぬ」という「辛い現実」を前提にしている。
 「辛い現実」を単純に悲観するのは簡単だが、「考えようによってはプラスに評価できる側面もある」と考えるのは究極の前向き思考だと思う。
 スウェーデンは戦略的にそれを目指しているが、ブラジルは残念ながら「意図せず、結果的になる」という形だ。
 皮肉なことに、徹底して「家にいろ」が実行できる先進国は、いつまでたっても抗体所持率が低く、第2波、第3波に怯えなければならない。早くワクチンができないか、特効薬ができないかと右往左往し続ける。
 だがブラジルは、今の勢いで感染が拡大すれば年末ごろには安全になる。今年中に国内の大半の都市が集団免疫になるようなら、ワクチンは間に合わない。
 なぜかブラジルでは、製薬会社が喜びそうなワクチンや新薬開発を期待する報道が多い。ブラジルのメディアには、既存薬での試行錯誤を頭ごなしに否定するような風潮が強いのが謎だ。
 当地ではあまり聞かないが、日本では既存薬で効果が見られる薬がいろいろ報道されている。新型コロナは既知のウイルスの亜種であって、既存薬で対処できれば一番良いはずだ。それが最も早く人命を救え、安上がりで、実践的なのは言うまでもない。

公式感染者数は「氷山の一角」

都市別の抗体所持者比率リスト(EPICOVID19-BR)

 朗報といえるニュースも届いている。「すでに抗体所持者が4人に1人に達している都市が北伯にある」からだ。このような町は、2、3カ月で集団免疫に達する可能性が大だ。
 これは5月25日に発表された、ペロッタス連邦大学の研究チームが発表した保健相主導の全伯抗体調査(EPICOVID19-BR)第1回報告書だ。
 この調査はちょうど1カ月前、5月14~21日の間に、全伯133市で2万5025人の市民に対して行われた。調査レポートに含まれたのは、そのうちの21州都を含む90市のデータだけだ。各都市200人以上が抽選で無作為に選ばれた。
 この90市の平均抗体所有率は1・4%。これらの都市はブラジル人口の25・6%(5420万人)に相当するので、これだけで76万人が感染済みと推測される。
 同報告書には専門家のコメントとして《大事なことは、今後ブラジルの感染者数を語る場合は、何千人(milhares)という表現ではなく、何百万人(milhões)を使うべきだ》とある。
 さらに《この研究プロジェクトのロゴマークが氷山なのは、偶然ではない。公式発表数値は、氷山の一角に過ぎないという意味を込めている。巨大な本体は水面下に沈んでいる。コロナウイルスの壮大な実態を知るには、人口規模の調査を実施することは義務である》と書かれている。
 6日現在でも「感染者64万人」が公式発表されている中で、研究者として「実際には何百万人いる」と主張するのは勇気ある行為だ。
 同調査によれば、実際の感染者は公式数字の7倍いると推測する。6日現在であれば、ブラジルだけで448万人だ。「全世界で654万人」と公式数字が言っている時に、この数字を公表するのはコロナの真相究明に大きく役立つ。
 であれば、ブラジルにおける実際の致死率は0・78%だ。このようなきちんとした数字で実体を把握すべきだ。
 それに日本のテレビ番組の専門家によるコメントを聞いていると、40歳以下の人は、もともと身体に備わっている自然免疫でコロナウイルスを撃退できることが多く、そうなると抗体すら残らない。だから実際にはコロナに罹患していても、抗体がない人が多いという。
 となると、罹患者はさらに多くなり、致死率はもっと下がることになる。であれば、数年後に科学的に評価した場合、「通常のインフルエンザよりも少し致死率が高い」ぐらいの感染症として対処するのが本来の在り方だったということになるだろう。

抗体所持者が多い北伯、北東伯

都市別の抗体所持者比率リスト(EPICOVID19-BR)

 同調査で凄いのは、ブラジルでもすでに抗体所持率が24・8%(住民の4人に1人)に達している都市があることだ。パラー州ブレヴェス市だ。ベレンから150キロほど上流に向かったところに位置するマラジョ島西部にある人口9万9千人の町だ。
 2位のアマゾナス州テフェ市は19・6%。マナウスから300キロほど上流に登ったところにある人口約6万人の町だ。
 続いて日本人会もあるパラー州カスタニャールが15・4%、同州都ベレン(人口148万人)も堂々の15・1%と4位だ。日本企業も多いアマゾナス州都マナウス(人口218万人)も12・5%であり、アマゾン地域の両州都だけを考えても、ベレンの抗体所持者が22万人、マナウスが27万人となり、これだけで約50万人だ。
 公式感染者数64万人がいかに現実離れした数字かが分かる。

マナウスのコロナ死者専用墓地ではブルドーザーで一気に棺を埋める(Fernando Crispim/Amazônia Real)

 ベレンの地元紙オ・リベラル紙電子版5月27日付も、この件を報じている。研究チームのコーディネーター、ペドロ・ハラル氏に取材して「この研究では10%以上の都市が幾つも見つかった。とくにパラー州、アマゾナス州に集中しているという結果に、とても心配している。これを世界の研究成果と比較した場合、こんなに所持者比率が高い町は極めて稀だ。(中略)地域的な差異の原因を調べるには、もっと時間をかけて調査することが必要だ」(https://www.oliberal.com/para/breves-no-marajo-e-o-municipio-com-maior-proporcao-de-casos-de-covid-no-brasil-1.271111?page=1)と述べている。
 州都別の抗体所持者リストによれば、上位10都市のうち五つが北伯、三つが北東伯、二つが南東伯だ。
 北東伯でもっとも所持率が高いのは、感染者数で全国3位のセアラ―州の州都フォルタレーザ(264万人)の8・7%だ。
 都市別トップ15の中で、最多4都市を占めるのはパラー州。北伯が最も高く、南伯が低いという傾向が如実に表れている。おそらく衛生知識や教育水準などの基本的な部分が、感染拡大防止の決定的な要素になっていることが伺われる。
 残念なことに、だからブラジルは拡散防止が難しいのだ。

早ければサンパウロ市は8月中に集団免疫?

EPICOVID19-BRの報告書

 同調査で驚くのは、サンパウロ市がすでに3・1%になっていることだ。1220万人都市の3・1%だから、これだけで38万人が抗体を持っている計算になる。同様にリオ・デ・ジャネイロ市(670万人)も2・2%が持っているから14万7千人だ。
 聖市に関しては別の調査がある。市内で最もコロナ感染者と死者が多い6区に限定した抗体調査が5月初旬、サンパウロ州立総合大学(USP)とサンパウロ連邦大学によって実施され、5・19%だった。18歳以上の520人に検査が行われ、うち27人が抗体を持っていた。
 エザミ誌サイトに転載された5月16日付エスタード紙記事(https://exame.com/brasil/estudo-inedito-em-sp-encontra-anticorpos-da-covid-19-em-5-da-populacao/)によれば、同調査で判明した抗体所持者の91・6%は公式統計に入っていない。
 スペイン政府の同様の調査では国民の5%が抗体所持、フランスでは4・4%だった。これに対し、医療検査会社フレウリのクリニック・デレクターのセルソ・グラナト氏は、「スペインは3カ月のロックダウンを経てこの数字。我々の場合は右肩上がりの中で5%で、意味が大分違う」と見ている。この調査は毎月行い、次回は6月10日に実施される予定だ。
 4月28日付ブルームバーグ電子版でもニューヨーク州の抗体所持率は14・9%弱、4月初旬の調査でカリフォルニア州サンタクララ郡では住民の2・5~4・2%が持っているとの報道があった。
 やはりブラジルの数字はかなり高いと言える。
 生物学者のフェルナンド・レイナッキ氏もこの研究メンバーで、「保健省の公式な致死率6・9%に対し、この調査からは0・95%になる。今までは症状が軽かった人、無症状の人が感染者の数字に入っていなかったからだ。当たり前のことだが、重症の人だけ検査をしてその中で致死率を出してきたから数字が高くなった」と同記事で語っている。
 レイナッキ氏がエスタード紙5月18日付に寄せたコラムでは、《このまま(5・19%)の感染拡大のスピードならブラジルは2カ月で集団免疫に達する》との衝撃な数字を発表していた。
 8月18日ごろには集団免疫になるという説だ。レイナッキ氏の計算では、サンパウロ市内の感染最多地区の免疫所持率5・2%をベースに、現在の感染拡大比率をかけて計算したもの。15日間で9・7%、30日間で18・3%、2カ月間で65%だ。
 その間、罹らない様に徹底的に注意すれば、その後は普通に生活できるかもしれない。
 とにかく、この2、3カ月間を今まで以上に注意して暮らすことをお勧めしたい。(深)

image_print

こちらの記事もどうぞ