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《リオ市》警察活動禁止で死者7割減少=コロナ自粛中のファベーラで=実は治安向上に非効率的?!

2017年12月6日、リオのファヴェーラで逮捕された大物麻薬販売人ロジェリオ157を囲んで記念撮影する警察官(Foto: Redes sociais )

 新型コロナウイルス感染拡大期間中、リオ市のファヴェーラ(貧民街)では警察活動が禁止されたことにより、リオ大都市圏ではむしろフェヴェーラ地域に関連した死者数が70%減少しただけでなく、殺人事件が48%と強盗犯罪が40%と大幅に減少したことが分かった。
 このデータは、フルミネンセ連邦大学(UFF)の新違法性研究グループ(GENI)による「警察活動と犯罪発生:質の高い公的議論のために」研究により、3日に発表された。3日付エスタード紙が報じた。
 最高裁(STF)のエジソン・ファキン判事が判断した、自粛期間中のファヴェーラでの警察活動禁止命令は、犯罪組織の活動抑止の妨げになると、リオ州警察は反対していた。しかし、同研究グループが、警察活動禁止の効果を計測するために、2007年以降の同期比の1カ月間の平均値を比較した。すると、ファヴェーラ地域で警官も含めた30人の住民の命が救われたことが分かった。
 コロナ感染拡大時の警察活動禁止措置は、法令の期限が終わる今週、改めて延期するかどうかが最高裁で審議される。警察は同措置に反対しているが、リオ州人権擁護局(DP)は禁止措置を支持してきた。同擁護局はまた、治安研究所(ISP)や、リオ大都市圏での銃撃事件を地図上にリアルタイムでマッピングするアプリ「フォゴ・クルザード」の協力により、フルミネンセ連邦大学の同研究活動に参加している。
 GENIの平田ダニエル研究員は、「犯罪発生データと警察活動のデータを掛け合わせてみると、警察活動は犯罪発生を減らすには非効率的で、逆に犯罪増加を促しているように見える」と話す。
 自粛期間中の警察活動禁止は、ブラジル社会党(PSB)によって提起され、リオ州人権擁護局との連携によって最高裁に持ち込まれ、ファキン判事が6月5日に判断を下した。

 その決定は、リオ大都市圏のサンゴンサーロ市で14歳のジョアン・ペドロ少年が、警察の作戦中に自宅内で殺害されてから、18日後の出来事だった。母親のラファエラ・コウチーニョさんは「息子をウイルスから守っていたのに、彼はもっと悪いウイルス、国を殺すウイルスの犠牲者になってしまった。他の人の命を救うために(STFの判断に)賛成する」と話した。
 7月5日までの間に、ファヴェーラでの警察活動は78%減少していた。にもかかわらず、ファキン判事の予測通り、軍警は緊急性が高い作戦行動は続けていた。対立が激しい地域の一つ、リオ市西部のプラサ・セッカ地区では、麻薬密売人と私兵組織の間で抗争が続いている。7月28日、軍警は近隣地区で作戦を決行した。その前夜には、リオ最大の麻薬組織コマンド・ヴェルメーリョが、私兵組織によって支配されているファヴェーラを奪還しようと3時間以上も銃撃戦が行われていた。
 同地域の密売人との抗争では、私兵組織を支援するために軍警が参加していると指摘する声さえある。私兵組織には元警察官が多いためだ。リオでの銃撃事件のうち、私兵組織が支配している地域での発生率はわずか3%。つまり、軍警は同グループとの襲撃を避けていることで、誤った安心感を住民に与えてしまっている。
 フルミネンセ連邦大学研究者グループの研究ではファキン判事の決定以降、医療施設周辺地域での銃撃戦は61%も減少した。なかでも、軍警がらみの銃撃戦だけみれば、その減少率は82%とさらに大きくなる。
 同研究の結論として研究者らは、リオの犯罪活動の実態を解析するには、もっと広範な調査が必要だとしている。しかし、同研究者たちは「30年以上前からリオの治安対策の中心にある警察活動には、深刻な人権侵害が増加し、大都市圏住民が治安向上を享受できていない現実を考えれば、我々の調査データが警察活動の非効率性を指摘するのは当然のことだ」としている。
 3日は司法休廷期間後の最初の勤務日だ。最高裁の判事らは4日までに、このファヴェーラ案件に関する判決結果を公表しなければならない。オンライン裁判で11人中5人が禁止に賛成票を入れ、反対したのはアレシャンドレ・デ・モラエス氏だけとなっている。

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