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《ブラジル》「貧民街からユニコーンを!」コロナと闘う10大スラム=2月に「G10銀行」も設立

「G10銀行」設立をアピールする映像(Divulgacao G10 FAVELAS)

 サンパウロ市でも有数のスラム街、パライゾポリスは、独自の新型コロナ対策を打ち出し、スラム街でありながら、感染者や死者の拡大を低く抑える事に成功している。

 同スラムでの取り組みは、医師や救急車を用意し、感染予防や感染が疑われる人の早期診断、早期隔離を行う。50軒単位の隣組のような組織を作り、「道の会長」が不要不急の外出回避などを推奨する。マスクや食事を作り、貧困者や医療従事者を支援するなどだ。

 昨年10月にはスラム内の人々への食材提供と雇用提供を兼ねた農園も開設。アグロ・ファヴェラと名付けられた900平米の土地で、60種類以上の野菜や果物の苗1800本を育てている。

 同スラムに住む10万人の大半は非正規の労働者で、同農園開設当時の失業者は約1万6千人。コミュニティが用意する給食や基礎食料品セットを求める人は日増しに増え、農園開設は飢餓問題解決策の一つだった。

 持続可能な農業について学んだ人を軸とするスラム住民が世話をする農園は、給食用の食材などを提供し続けているが、新型コロナのパンデミック長期化で、経済的な必要は益々強まっている。

 だが、パライゾポリスでは当初、約8千人からの寄付を受け、1日1万食の給食、食料品や衛生用品セットなどを配布していたが、9月からの経済再開などで12月の協力者は24人に減少。1月の給食は1日500食となり、医師や救急車維持に必要な5万9千レアル確保も困難になった。

コロナ禍で困窮している住民用に準備される給食(Divulgacao G10 FAVELAS)

 現状打破のため、2月には国内の10大スラムの住民が協力し、「G10銀行」を発足させる。

10大スラムはサンパウロ市のエリオポリスとパライゾポリス、リオ市のリオ・ダス・ペドラスとロッシーニャ、パラー州のバイシャーダス・ダ・コンドルとバイシャーダス・ダ・エストラーダ・ノヴァ・ジュルナス、アマゾナス州のシダーデ・デ・デウス、ペルナンブコ州のカーザ・アマレラ、マラニョン州のコロアジーニャ、連邦直轄区のソル・ナッセンテだ。

 同銀行では、スラム内の起業家への融資やカード用の機械の提供などを行い、持続可能な成長を目指す。同銀行設立に賛同する投資者は資金の3分の1を銀行の経営会社に寄付。収益の3分の1はスラム内の社会福祉活動資金に回される。

 パライゾポリスのリーダーのジルソン・ロドリゲス氏は、金融市場が10億ドル以上の規模のスタートアップを指す「ユニコーン」という言葉を使い、「俺達が目指すのは国内初の貧民街のユニコーン」と語る。また、15年に行った調査で住民の40%が起業を願っていた事に触れ、住民が起業し、スラムの成長を支えてきたとの認識を示した。19年の調査によれば同スラム住民が同年に動かした金は7億600万レアル、10大スラム全体なら70億レアルが動く見込みだ。

 10大スラムの活動は14州300のコミュニティに及び、隣組を利用した食品セットやマスクなどの配布も実施。持続可能な活動を支える銀行や独自の通貨創出のモデルは、セアラー州にあり、23年の歴史を持つパルマス銀行だ。国内のコミュニティ銀行は118あり、14万人が利用している。(1月22日付BBCニュース、20年10月16日付UOLサイトなどより)

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