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特別寄稿=ブラジルだけが犠牲者増大=対コロナ戦争の勝ち方とは=サンパウロ市在住  駒形 秀雄

病院側の配慮で、オンライン通話を使って家族と久々に会話するコロナ入院患者(Foto: Marcelo Seabra/Ag. Pará)

 ブラジルでコロナウイルスの感染が確認されてから、この3月で1年が過ぎました。
 当初は「風邪の一寸重いものーGRIPEZINHA、その内何とかなるだろ」と甘く見られて居たのですが、どうしてどうして、相手は手強い「世界的感染病」(PANDEMIC)と判ったのです。一年経過した今、コロナはブラジル全土を襲い地方の中心都市では重症者に対応する病室もベッドさえもなく、恐れられていた「医療崩壊」が現実のものとなっています。
 サンパウロやパラナの州や市が事態を重視、規制の赤信号を掲げ、種々の感染防止策を打ち出していますが、国との施策や指示がバラバラだったり、規制を受けても従わない人々が多数居たり、中々成果が挙がっていません。一般の市民(POVO)は「どうしたら良いんだ」と右往左往、混乱は収まっていません。
 ではと手を拱いていては事態は解決しませんね。ここは皆さまと一緒に、このコロナ病の問題点などを整理し、それにどう対処したら良いのか、考えてみましょう。

コロナ退治が先か、明日のメシが先か

 コロナ病を食い止めるのは保健・医療関係者が度々言っているように、手指消毒、外出自粛、密集禁止です。しかし先生方の言われる通り、これを実施していると商売が上がったり、収入がなくなる人々、業種が出てきます。街中に沢山あるバーや食堂・日用品販売業・運送業などなどがそうで、営業差し止めはその人たちの死活問題となるのです。
 先日ブラジリアでは突然ロックダウンが宣言されました。それ迄ケーキなどを作って生計を立てて居た小母さんは「店を閉めろなど何事だ。我々は明日からメシを食えなくなる。規制大反対!」と他の大勢と一緒にわめき上げました。
 ここへ出て来たボルソナロ大統領は「そうだ、そうだ、皆は働きたいんだよな。仕事場を提供せよだ!」
 群衆は「そうだ!」「仕事を呉れ、大統領!」と呼応します。ボルソナロさん、規定のマスクもせず密のデモ隊の前で熱弁を振るっています。
 地元の知事が感染拡大防止のために種々規制を発出しているのに、大統領がこの様に真逆の行動では「一体この人は知事の施策の賛成者なのか?」「あるいは反対党の党首なのか?」。それをTVで見て居る人々は混乱します。
 この様にコロナ対応の現場では「保健規制」か「生活手段第一」かの厳しい判断を迫られることになりますが、ブラジルの現場では理屈の規制派より、実利の自由派が優るようです。
 で、その結果はどうなるか? 行政機関の力が弱い地方都市などでは、コロナ患者が増大することになります。アマゾン地方のマナウスや南端のポルト・アレグレ市などでは患者を治療するUTI(集中治療室)を用意することが出来ず、設備さえあれば問題なく治療出来る人々を手当せず、みすみす死なせてしまうことになります。
 病院に助けを求めて来ている人達を「放置」グループに仕分けせざるを得ない女性医療者は病院の無力さ、自身の措置の非情さに涙を流して嘆いて居ました。考えさせられるシーンですね。

ワクチン打てば問題解決?

ワクチン接種を受けた「サッカーの王様」ペレ(Rede Social)

 そこに登場して来ましたのが、「コロナ病にならないワクチン」の登場です。ワクチンを接種して病気がうつらないとなれば上述の「規制派」対「開放派」の問題は一挙に解決となります。
 これには今まで兎角対抗していたサンパウロ州当局と連邦政府(保健省)が共に協力してその推進に取り組んでいます。2月からは既に医療従事者向け、高齢者向けの接種が開始され、現在は70歳代への接種が進行中です。
 今までの接種に使われたのはA)中国、CHINOVAC技術に基づきブラジル「ブタンタン研究所」で製造したものと、B)英国OXFORD/ASTRA/ZENECA技術でFIOCRUZで生産したもので、他にC)米国ファイザーやJANSSENなどの導入が発表されております。
 A)CHINOVAC接種者はその3週間後に2回目を接種、B)ASTRA-ZENECA接種者はその3か月後に2回目を接種と間隔が異なりますので、ご注意下さい。
 C)JANSSEN製ワクチンは皆さまおなじみのジョンテックスと同じグループが生産していますが、その接種は1回のみでOKなんだそうです。
 別表のワクチン開発社リストを見て、「中国やインドの会社があるのに、何で日本の会社が入って無いのか?」と不審がる人も居るかと思います。日本では(東京大学・河岡ラボ)のワクチンが出来ているが、現在動物実験の段階なのだそうです。
 新薬の開発には=(薬開発)→(動物実験)→(人体実験テスト)の段階を踏み、それぞれが一定の期間を必要とするので、開発は急いでも、2―5年は掛かるのが普通なのだそうです。
 ところが実務優先の国では幾つかの実験テストを同時並行して行い、その期間を短縮しています。
 識者古川先生によると「日本の役人や学者はクソ真面目に手続きを守るからこうなるんだ。《早くワクチンを使うことによって救える人の命》と《ワクチンを打って病気にかかる万が一の可能性》の軽重を判断することが出来ないのか!」「これは平和憲法に規定があるから敵から攻撃を受けても自分から銃、砲を打ってはイカン。敵弾に当たって死ぬんだというバカ指揮官と同じ考え方だ」との事でした。皆さんのご意見は如何ですか?

躍り出ました変異株

 先般ブラジル・マナウスから帰国した人(4人?)が日本の空港で検査を受けたところ、コロナウイルスに罹患していることが判明ショックを与えました。その後更に発表されたところによると、この人達が罹っていたのは今までの型と異なるコロナ病の変異体(VARIANTE)新型という事でした。今のCOVID―19だけでもほとほと手をやいているのに、更にその新型ー変異株出現と言うのですから、これは泣き面に蜂です。
 この変異株はP1と呼ばれていますが、従来のコロナウイルス(日本では新型コロナウイルスと言う)に較べ患者の体内では他の型の何倍とかになり、且つ、他の人にうつる感染力が従来型に較べ4~5倍も強い。更に前に一回罹患していても再感染して発病することがあるというのです。現在のコロナ病発病者中、この新型P1の感染者は既に相当な割合を占めているとされています。
 このコロナウイルス、相手に応じて攻めの手を変えてくる、中々手強い敵の様です。
(閑話休題・ここで古川先生からもう一言「日本ではいつまで〝新型〟コロナと言うのかね。今度新しい変異体が出てきたら〝新〟新型コロナと呼ぶのか。頭は生きているうちに使うもんだぞ」〉

内輪で響く不協和音

 我等がブラジルには他にも問題があります。それは内部で響く全く相反する声です。
 感染防止に躍起の医療界、州知事などは既述の防止策を唱えて居ますが、国の方針を決めるボルソナロは違います。「インテリが声高に唱える対策は(裏付けの資金面を考えない)キレイ事だ」(集中治療室増設なども、その資金は全部国に出せと要求するだけ―フレスクーラーじゃないか)
 他方、コロナで仕事を失い、収入が無くなった困窮階層は「生活保護金を払って呉れ、それなしではこちとら死ぬしかねえんだ。こんな金を出し渋る大統領なら殺してしまえ」と過激なことを言います。
 これに対してボルソナロは「みんな元気を出せ! 家にばかり閉じこもることは無い、外の空気も吸って、ヒーヒーミーミン泣き声は止めろ」と答えています。
 大統領としては負担すべき費用面も考えなくてはなりません。思った所をそのまま口に出して言ったのでしょうが、その元気もない弱い人たちへの配慮が足りないとも言えます。
 外から見て居るマスコミなどは待ってました。面白おかしく書き立てますからかないません。「ブラジルは国と州で対策がチグハグ、内輪で揉めている」と批判を浴びる事となります。
 そんなこんなの結果はどうか。ブラジルは国で統一した手が打てずコロナ病の数字は上向くばかり、遂には保健行政の世界機関WHOから声がかかりました。
 「ブラジルさん、元気ですか。コロナが大変の様ですね。世界もWHOも心配しています。これ以上事態が悪くならないよう感染防止策をしっかりお願いしますよ」
 世界主要10カ国の死者数が発表されていますが、一週間平均の死者数が右肩上がりに伸びているのはブラジルだけ、週平均、1262人/日です。他の9カ国は全部下向きで減少傾向なのに、です。こんなことで「世界一」になっても誰も褒めてくれません。私たちも日本の兄弟友人に語れない、何とも情けない話ですね。
 さて、ブラジルの死者のこれまでの累計は26万人です。この数字を分かり易く他の例と較べてみますと
★10年前の東北大地震・津波の死者は2万2千人。
★戦争末期、3月10日の東京大空襲の死者が10万人強。
 ですから、コロナの死者はその2倍。これは全く戦争だ、と思わされます。

最後の勝利はどこに

 ボルソナロ大統領としては「みんな元気を出して! たまたま出て来たコロナ病を過剰に怖れることは無い。(政府として出来るだけの事はやってるんだから)信じてついて来て!」と訴えているのでしょう。
 しかし心意気だけでは難敵には勝てません。やはり医療関係者が筋道を立てて説く自粛予防策の方に説得力があります。此処は皆が心を一つにしてコロナ戦争に立ち向かはないとなりません。
 それに今までは防戦一方でしたが、今年からはワクチンと言う強力な武器が手に入って来ました。未だ罹患してない人は医師からの予防策を守る、一方、ワクチン接種を早く実施して免疫力のある人を一人でも増やす。こうすれば政府が言っているように年内に勝ち戦の目鼻がつくかも知れません。
 WHOをはじめ世界の人々は、ブラジルがこの戦いの重要な防衛拠点であると認識し、必要な支援を惜しまないと言っています。私たちブラジル代表もガンバらないとなりません。
 VAMOS JUNTOS! このコロナ戦に勝利しましょう!
(この記事に対するご意見を歓迎します。→ hhkomagata@gmail.com

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