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《ブラジル》環境相自らアマゾン木材密輸に関与?=自然保護機関のはずが=違法伐採業者に便宜も

リカルド・サレス環境相(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 連邦警察が19日、不法伐採の木材輸出に関する疑惑に関連した「アクアンドゥバ作戦」を敢行、環境省や国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)などの家宅捜査を行ったと同日付現地サイトが報じた。
 同作戦はアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の裁量で行われ、35件の家宅捜査令状を手にした捜査官約160人は連邦直轄区とサンパウロ州、パラー州に派遣された。
 今回の作戦は欧米への違法木材輸出に関する疑惑を扱ったもので、リカルド・サレス環境相やIbama院長のエドゥアルド・ビン氏の公務停止と、サレス氏の銀行・財政関連の情報開示も命じられた。
 同作戦に関する捜査のきっかけは、2019~20年に欧米諸国で輸出許可書のない木材が押収された事だ。欧米諸国の担当者から、公職者が違法木材の輸出に関わっている可能性があるとの連絡を受けた連警は、今年の1月から具体的な捜査を進めていた。
 連警は違法木材の輸出と2020年2月に出た輸出許可書を不要とする通達との関係を疑問視しており、合法的に伐採された木材である事を証明する許可書は不要とする事で製材業者への便宜を図ったと見ている。通達が製材業者を利した事は昨年3月3日付エスタード紙の「業者達がIbama院長に感謝」との記事からも明白で、この通達も差し止められた。
 モラエス判事が公務停止としたIbama院長は、この通達に署名した人物で、パラー州で先週行われた、サレス氏による監視活動の査察にも同行している。環境省の局長の一人とIbama関係者9人の計10人も役職停止となっている。

サレス氏らを対象とする作戦についてモラエス判事が説明と報じる19日付エスタード紙の記事の一部

 家宅捜索や情報開示、公務執行停止などは、不法伐採や違法木材の輸出に関連する犯罪行為摘発の一端に過ぎない。連警は公職者と製材業者の間での贈収賄や行政擁護、不正行為、密輸円滑化といった罪状について、証拠を固め、捜査を進展させていく意向だ。
 サレス氏は今年に入ってからも環境監視団体の懲罰適用基準などを変更しており、Ibamaの職員らが不法伐採の摘発などが難しくなったと苦言を呈したりしていた。
 また、法定アマゾンの森林保護のための資金枯渇により、Ibamaなどの環境監視団体の活動縮小が余儀なくされ、軍の支援を受けたブラジル・ヴェルデ作戦などの導入にも関わらず、森林破壊が進むなど、環境関連の失政の責任を問う声は国内外から出ている。
 モラエス判事は今回の作戦で18人と五つの企業、団体に対する家宅捜査令状を発行した理由を問われ、サレス氏とIbama関係者には、森林資源の違法な交易を容易にし、不法伐採の摘発を困難にするような重大な疑惑が指摘されている事を明らかにした。
 今回の作戦名となった「アクアンドゥバ」はパラー州の先住民達の伝承に出てくる神で、本来の規範から外れた過剰行為が行われた時は笛を鳴らし、秩序を回復させるのだという。
 今回の作戦に驚いたサレス氏は武装した側近を伴って連警に出頭し、捜査の根拠などについて説明を求めたという。

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