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特別寄稿=東京オリンピック・パラリンピック開催のための目測力・結合力・説得力=元参議院議員 田中茂

東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる国立競技場(Arne Müseler/www.arne-mueseler.com, via Wikimedia Commons)

 新型コロナウイルスおよびその変異ウイルスにより、世界がこの1年半にわたり「海図のない航海」を続けてきた観があります。
 現在、6月20日を期限とする「緊急事態宣言」が10都道府県に、また「まん延防止等重点措置」が5県に発出されています。期限を6月20日とした背景に、「東京オリンピック・パラリンピック」があることは容易に想像できます。
 菅首相は、「国民の命や健康を守り、安全・安心の大会を実現することは可能」と開催に前向きな発言を行ってきました。開催は既成の事実なのでしょう。開催が既成事実だとするなら、菅首相の発言内容の具体的な中身をより詳細に国民に説明する必要があります。
 ウイルスを地方に拡散させる結果となった、昨年の「Go To Travel」のトラウマを国民は抱えています。同じことが起こることを危惧すると同時に、海外から新たな変異ウイルスがもたらされる可能性も案じています。
 菅首相は「感染対策をしっかり講じて、安全・安心の大会にしたい」と同じ発言を繰り返しています。しかし、国民が知りたいのは紋切り型の言葉ではなく、このような時に開催するオリンピックの意義、感染対策の具体的な中身であり、安全・安心を生む具体案です。世界各国からの参加選手のワクチン接種は殆んど終了しています。
 しかし、政府の新型コロナウイルス感染対策分科会の尾身茂会長が国会で、「ジャーナリストやスポンサー、政府要人ら大会関係者の管理はそう簡単ではない」と発言しました。そのような人(観客を入れるなら観客も含む)の流れによる感染の懸念、また感染が広がった際の開催途中での対応、更に新たな変異ウイルスの感染が生じた時の危機管理等々が必要です。
 もし感染が広がるなら、国民の命に関わることとなります。ちなみに東京オリンピック・パラリンピックの来日選手・関係者は現在のところ約9万人と見込まれています。
 このブログで何度も紹介しましたが、中曽根康弘先生はリーダーの条件として、「目測力・結合力・説得力、そして人間的魅力」を挙げています。
 目測力とは事態の推移を予測し、自己の政策を遂行するのにいかに問題点を提起し、その結末に到着させるかを見通す力のことです。昨年の「Go To Travel」以来、菅首相はコロナの感染力を軽く見て、明らかに目測を誤りました。
 オリンピック開催43日前の現在、2回のワクチンを接種した人数は僅か約460万人です(6月7日現在,NHK調べ)。数日前迄は先進国の接種率と比較すると最も低い数字で、今後、急いでどの程度早く進められるか。これからのワクチン接種の進捗状況は大会開催に多大な影響を与えます。
 今度こそ目測を誤らないようにして頂きたいものです。説得力に関しても、東京オリンピック・パラリンピックの開催判断について、「国民の命と健康を守るのが五輪開催の大前提だ」と繰り返しながら、「私は主催者ではない」とも述べ、確かにそうですが他人事の様な印象を与えました。これでは国民の共感を得ることも、国民を納得させることもできません。
 国民に対して、更に海外の方達にも説得力を発揮して頂きたいと思います。結合力は、目的を遂行するために官民・組織等の人、医療関連物資等の物、そして資金を一つにさせる力です。しかし、菅首相はこれら3つの力を発揮しているとはいい難く、また人間的魅力についても、現在の支持率から見れば高い評価が与えられているとは思えない状態が続いています。
 東京オリンピック・パラリンピックは、本来なら「海図のない航海」を終え、コロナウイルスに勝利したお祝いの祭典になるはずでした。しかし、現実は厳しく収益(入場料収入、インバウンド収入)も見込めず、競技運営もさることながら、コロナ感染の防止に失敗が許されない大会となります。
 菅首相には目測力を誤ることなく、結合力・説得力を発揮して国民が納得できるよう自らの言葉で、丁寧に説明することをお願いしたいものです。(出典https://www.tanakashigeru.com/blog/archive/6100/

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