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文芸

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(87)

ニッケイ新聞 2014年1月29日 中嶋和尚は二度続けて『般若心経』を盾として、大自然の挑戦に逆らった。どうしてこの経典を唱えたのかは彼自身も分からなかった。 二台のジープは競ってエンジンをかけた。 「出発です」 タイヤ交換を手伝っでズボンを少し汚し、シャツを汗で滲ませた西谷の声に中嶋和尚は我に戻った。 「あっ、はいっ」 エンジ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(86)

ニッケイ新聞 2014年1月28日 中嶋和尚は、何かを探すよう様に目をしっかりと開き、前方のどこまでも続く密林の風景に見入っていた。舗装工事の為の測量班が立てた目印の杭や、作業員が作った雨よけの小屋が点々と現れた。しかし、密林の中に仏様の存在を感じる事はなかった。 密林を強引に引き裂いて作られた街道に立ちはだかる大木が切り倒され ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(85)

ニッケイ新聞 2014年1月25日 「夢、とか大志だ」古参の一世が省吾を助けた。 「そう、夢を取り戻し、こんなドンチャン騒ぎになるとは想像もせんかったです。皆、なにか強い力を授かった様な、うちが小さかった頃の開拓時代の貧しく苦しかったばってんが、底抜けの楽しさと希望を取り戻した様な、そんな気がしたと。オショウサン、ありがとうござ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(84)

ニッケイ新聞 2014年1月24日 「仏教では輪廻と云って、人は、死ぬと六道のうちの何れかの世界に生まれ変わってきますが、西山さんはその六道の中の地獄のような密林の『地獄道』、飢えの苦しみを味わって『餓鬼道』、それらと戦って『修羅道』、牛馬の様に働いて『畜生道』と、一度に経験されたのですね」 「そんな酷い苦労はしていませんが、そ ...

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刊行=マンガで学ぶ東洋の知恵=「Mestres do Oriente」

ニッケイ新聞 2014年1月23日  東洋思想の普及を目ざすサトリ出版社(Editora Satry)が18日、漫画『Mestres do Oriente』(太田寿著、155頁)を刊行した。一冊15レアル。  同書は、日本で15万部を売り上げたベストセラー「こころの道」(木村耕一著)を元に制作された。豊臣秀吉など戦国武将や歴史上 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(83)

ニッケイ新聞 2014年1月23日 『宴会やお祭りが好きな仏様や神様がたくさんおられます。それで、この宴会が開かれたのです。この酔っ払いの方達は、もしかして酒好きの仏さま達の化身かも知れません。お願いです。成仏して、輪廻転生によって、また、人間に生まれ変わって来てください』 《我々も生まれ変わって新しい人生が・・・、始められるの ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(82)

ニッケイ新聞 2014年1月22日 『成仏して、仏様達に守られ、苦しみの無い浄土で安らいで下さい』 《成仏出来ません。先に死んだ幼い妹も含め、まだ行方不明の霊がいっぱい居るのです。妹の霊はどこに宿ったのか、それともこのジャングルをさ迷い続けているのか・・・妹を残したままでは、とても・・・》 『行方不明の霊がまだ!?』 《はい、ま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(81)

ニッケイ新聞 2014年1月21日 「と、云うのは?」 「彼は十三歳の時、事故で両親を亡くし、それ以来、ブラジル生れの幼い弟や妹達の面倒見て立派に育て上げ、頑張って来たトメアスのシンボルです」 「お名前は?」 「沢田照夫です」 「辛かったでしょう」 「いえ、大勢の仲間の無念な死と比べれば、大した苦労ではありませんでした」 「先駆 ...

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刊行物「ふろんていら」

ニッケイ新聞 2014年1月18日  詩歌サロン「ふろんていら」第39号が刊行された。  俳句、川柳、短章、短歌、詩の5部構成。俳句から3句「幸せに満ちたる声のマモン漬」(間嶋稲花水)「逢う度に好きになる君緑雨なり」(津野丘陽)「青バナナ恋の味覚はまだ知らず」(伊那宏)ほか。

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ピンドラーマ=1月号

ニッケイ新聞 2014年1月17日  コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』1月号が発刊された。「各国移民レポート」では、昨年移民開始50周年を迎えた韓国を特集。その他、サッカーやグルメ情報、ポ語講座など毎月のコーナーも掲載。問い合わせは同出版社(11・3277・4121)まで。

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