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文芸

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(97)

ニッケイ新聞 2014年2月13日 「しかし、酷い鬼婆だ」 「ところがです。このお婆ちゃんが、一ヶ月して、バスで、二日がかりで彼の所にお供え物を持って来たのです。それも、十キロのお米、その頃珍しかった自分で作った味噌、大根やキュウリの漬物やらで二十キロ近くもある荷物をかかえてです」 「へー! それで彼は?」 「その日、善一和尚は ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(96)

ニッケイ新聞 2014年2月12日 【??『般若心経』?】 「で、フルカワどうする?」 もったいぶった口調で、 【考えてやってもいいが、それから、車は?】 「中嶋和尚の安全の為に大型車を用意する」 【よし、承知した】 「それから、罰金は自分で払うんだぞ!」 【そのくらい常識だ! それで、他の費用は?】 「正当な領収書があれば、費 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(95)

ニッケイ新聞 2014年2月11日 「そうです。それで、修行僧達が集まり、その教えを文字にまとめ経典が生れました。その後も三回、同じ事が行われ、経典の数も増え、教えの解釈にも差が出て宗派が生まれ、沢山の御経が出来たわけです」 「その中の一つが『ハンニャ』なんですね。仏教の話を聞いているうちに、古川との喧嘩がアホらしくなりました」 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(94)

ニッケイ新聞 2014年2月8日 「素晴らしい記者なんて、あいつに関してそんな事ありませんよ」 「そう言っている私もまだ『悟』りの『さ』の字も分かりませんが、今、客観的にジョージさんとあの新聞記者とのやり取りを見ていますと、『般若心経』でうたっている、みんな『空なのだ、だから、気にしなくてもいいじゃないか』と、少し分かったような ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(93)

ニッケイ新聞 2014年2月7日 「(紹介しろ)」 「(中嶋さんだ)」 「(やっぱり、想像した通り例のボーズだな、どこに住んでいる?」 「どうでもいいじゃないか。取材は止めてくれ! それに、フルカワには関係ないと言っただろう」 「なんで? ジョージの知合いは俺の知合いだろうが。それで?」 「・・・。俺達、ゆっくり酒を飲みにきたん ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(92)

ニッケイ新聞 2014年2月5日 出発してからしばらく沈黙が続いた。トメアスの時と同じで、一行は『ナンマイダー』でむすばれた群衆との別れを惜しんだ。 第十四章 真理 アマゾンから帰って数日後、サンパウロのジョージのアパートで、中嶋和尚が麻の法衣にアイロンをかけていた。 「戻りました」ジョージが普段より早く仕事から戻ってきた。 「 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(91)

ニッケイ新聞 2014年2月4日 「・・・なんまいだぁ(ミーミーミーミ)、なんまいだぁ(レーレーレーレ)、なんまいだぁ(ドードードード)、なんまいだぁ(ドードードード)、なんまいだぁ(ドードードード)』 ― 『ナンマイダー』は、手拍子も加わって大合唱となってしまった。そして、祭檀を包み、祭壇の奥に広がる密林に伝播していった。 十 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(90)

ニッケイ新聞 2014年2月1日 「(『ナムアミダブツ』と唱えて下さい)」 アナジャス軍曹は測量班で一番年上の男に、 「(あの『ブッダ』のミサは熱気があって、理屈なしに安らぎを感じ、すごくよかった)」 「(さっそくミサをしてほしい。事故で亡くした同僚達の為にも)」 「(で、この集まった群衆は?)」 「(ここでは滅多にないチャンス ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(89)

ニッケイ新聞 2014年1月31日 【(軍曹!あの測量班の飯場です)】無線機が鳴った。 「(罠かもしれないぞ注意しろ! 障害物を取り除け!)」 【(了解!)】二人の兵士はジープから飛び降り容赦なく障害物を壊し始めた。 「(なにする!やめろ!)」そう叫びながら男が飛び出てきた。 男は測量班の炊事係りであった。 「(命令だ、先を急ぐ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(88)

ニッケイ新聞 2014年1月30日 「中嶋さんが心を乱すなんて」 「日蓮が創した『日蓮宗』と、親鸞が創した『浄土真宗』は『般若心経』を使用していません」 「彼等も先輩の僧侶に怒ったでしょうね」 「親鸞や日蓮聖人は、『浄土三部経』や『法華経』等を基にして、それをさらに『南無阿弥陀仏』や『南無妙法蓮華経』と凝縮、簡素化して普及させま ...

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