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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム

 ニッケイ新聞の百周年特別企画「百年の知恵」連載シリーズ第四弾は、日本移民のアイデンティティ形成を分析する『移民とナショナリズム』だ。「遠隔地ナショナリズム」という現代的な考え方をコロニアに当てはめたとき、日系社会独自の出来事と思われていたことが、実は、世界で話題となっている移民現象全体に共通している可能性が浮き彫りにされてくる。例えば、祖国を愛するがゆえに同胞を傷つけあった勝ち負け抗争の心理面などを、この観点から改めて考え直してみたい。(編集部)

百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=最終回 百年の経験を見直す=移民の心の旅はまだ途上

ニッケイ新聞 2008年8月30日付け  幼少で移住した準二世として常に「移民にとっての故郷」の意味を常に問い続けてきた歌人、清谷益次さんは二十三年前、次のような考え抜いた言葉をしたためた。  「私にとってのブラジルは、いったい何であったのか。環境にたやすく順応できる年令にありながら、私は深くも知らない日本に心を寄せ続け、その故 ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム 第25回 エスニック化する世界=帝国崩壊とルーツ回帰

ニッケイ新聞 2008年8月29日付け  前節では、世界各地で勃興してきているナショナリズムがグローバリゼーションと表裏一体の関係であることを概観してきた。では、資本主義とナショナリズムはどんな関係にあるのか。  アンダーソンは『比較の亡霊』(作品社、〇五年)の中で、グローバル化の進展に伴い、国民国家において古典的なナショナリズ ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム 第24回=グローバル化と表裏一体=ナショナリズムを超えて

ニッケイ新聞 2008年8月28日付け  身近な生活圏への外国人急増に対する反動として、ナショナリズム傾向が強まる傾向はどこの国でもみられる。  〇一年四月の大泉町長選挙前には「いまや大泉はブラジルの植民地である」という文章が、反外国人派の新人候補を支持する日本人商店のサイトに掲示され、地元ブラジル人コミュニティに大きな衝撃を与 ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第23回 昔コーヒー園、今は工場=「身」も「心」も変わる日本

ニッケイ新聞 2008年8月26日付け  「日本人」という言葉には血統重視のニュアンスがあると前節で説明したが、その日本社会自体が変わってきた。  先日の厚生労働省の統計調査で、日本で生まれた赤ちゃんの三十人に一人が混血であると発表された。国際結婚は東京都区部や大阪、名古屋両市では、十組に一組にもなる。ブラジルの日系社会同様、純 ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第22回 国民の権利を求める移民=問い直される選挙の意義

ニッケイ新聞 2008年8月22日付け  「日本国民」たる最大の根拠である国籍だが、日系人には数万人もの二重国籍者がいる。そのため、日本以外で〃世界最大の票田〃といわれる在聖総領事館で在外選挙を取材した折、不思議な「日本国民」に遭遇することがある。  日本国籍を持っているから投票にはきたが、実は当地生まれでブラジル籍もあって大統 ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第21回 血統重視の「日本人」=国籍と一致しない自己認識

ニッケイ新聞 2008年8月21日付け  一般に「日本国民」と「日本人」は同意義だと了解されているようだが、実は完全に同じではない。法的に規定されているのは「日本国民」という単語であり「日本人」ではないという。  国籍を誰に与えるのかという決め事を明文化したのが国籍法であり、そこには国家形成の歴史背景や、時の移民政策や同化政策と ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第20回 「生まれる」と「なる」=アイデンティティの選択

ニッケイ新聞 2008年8月20日付け  日本の日本人にとって一般的に「日本人」であることは自明で、「日本人に生まれた」と運命的に感じているだろう。  「日本人」であることは、性別などの属性と同様にアイデンティティの根幹を成している。「××社営業部長」「三重大卒」などのようにその時の努力で変わる肩書きよりも、より基底をなす要素と ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム 第19回=相対的に形成される認識=「二世、三世、ジャ・セイ!」

ニッケイ新聞 2008年8月19日付け  従来、日系社会では「一世、二世、ノン・セイ(知らない)」という言い回しで、三世になると日系アイデンティティが失われる傾向があると表現してきた。  日本のデカセギ・コミュニティでは、それを逆手に取って「二世、三世、ジャ・セイ(もう分かった)」という表現で、ブラジル人アイデンティティの獲得を ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第18回 ジャポネースがサンバ=〃祖国〃で完結する同化

ニッケイ新聞 2008年8月15日付け  日本の日本人が持つ「日本人」イメージとポ語「ジャポネース」の意味が異なることから、デカセギ日系人は両側から押し出されるようにして、本国のブラジル人よりもブラジル人性の強い「ブラジル精神」を形成しつつある状況を説明した。  それを端的に表現するコメントとして、日系人がデカセギ体験を通して気 ...

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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第17回 ジャポネースと日本人=日本生まれの「ブラジル精神」

ニッケイ新聞 2008年8月14日付け  「本格サンバやって来る 二十四日、伊賀で国際交流フェスタ」という見だしの記事が中日新聞十三日付けネット版に掲載された。このように日本の国際交流イベントでブラジルをテーマにした時、サンバ隊を呼び、「本場のサンバ」などと報道されることがよくある。  ところが、ブラジル側の日系コミュニティでは ...

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