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連載小説

どこから来たの=大門千夏=(55)

 薄汚い男たちが手に手にコップを持ち、あるいはピンガ(サトウキビからつくる蒸留酒)の瓶を持ってじっと車を見ている。酒飲みの最中だったのだ。金曜日の夜はサラリーマンと同じ、気分が解放され同僚どもが集まって酒飲み会をするのだろうか。さしづめ今夜は「乞食の宴会日」か。  おそるおそる車を降りると、途端にホホを刺すほどの冷たさが襲ってき ...

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どこから来たの=大門千夏=(54)

 「あれほどかわいがって育てたのに私を捨てて行った」と死ぬまでこの言葉をくりかえし、私のしたことを許そうとはしなかった。  父が亡くなってからやっと自分の来し方を反省し、母への悔恨の気持ち、それから長女の責任も感じて毎年母を訪ねた。  手を変え品を変え母の心の慰めになるように努力してきたが、必ずいやみを言われ、時には意味も分から ...

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どこから来たの=大門千夏=(53)

 その上、母の濃厚な愛情はいささかうっとおしかった。その分、妹たちは愛情不足を募らせていたわけだ。  親に一言も文句を言ったことはないが、心の中では反抗心が渦巻いていて、いつか知人のいない誰からも強制も束縛もされない自由を満喫できる街に行く。小学生の時から一人で決めていた。少し大きくなると地図を広げて、広島から遠いところ…そうだ ...

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どこから来たの=大門千夏=(52)

 それは直径、三?四mくらいの山のような茶色い塊が時計と反対方向にゆっくりと回っている。丁度チベット人が持っているマニ車みたいな形である。近づいてゆっくりよく見ると、生きた蛇が絡まりあって、大きいの小さいの、長いの短いの、太いの細いの、もごもごとうごめきながら巨大な塊となって回っているではないか。壮観。もちろん夢は総天然色。   ...

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どこから来たの=大門千夏=(51)

 エジプトのツタンカーメン王の王冠にはちゃんと蛇がついている。蛇はある種の「力」、神通力を持っているから、これをつけることで王としての威厳を高めていたわけで、いずれにしても太古の昔から「蛇さまさま」なのだ。  知人に「蛇大好き婦人」がいる。親指くらいの細い蛇を飼っていて、行くと、「ね、かわいいでしょう。触ってみて」と言う。いやに ...

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どこから来たの=大門千夏=(51)

 エジプトのツタンカーメン王の王冠にはちゃんと蛇がついている。蛇はある種の「力」、神通力を持っているから、これをつけることで王としての威厳を高めていたわけで、いずれにしても太古の昔から「蛇さまさま」なのだ。  知人に「蛇大好き婦人」がいる。親指くらいの細い蛇を飼っていて、行くと、「ね、かわいいでしょう。触ってみて」と言う。いやに ...

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どこから来たの=大門千夏=(49)

 しかし母はめげず私を教育するつもりだったらしい。小学三年生の頃「女の子は漬物桶のぬかを混ぜる位の事はしなくてはいけない」と言って、私に毎日一回手で混ぜることを命令した。  台所の隅に置いてある陶器の壺の蓋をあけると、中には汚ならしい黄土色のべとべとどろどろしたものが入っており、悪臭を放っているではないか。私は目をつむり息をしな ...

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どこから来たの=大門千夏=(48)

 でもあれから四〇年経った。  あきらめもついたので、ある時この事を娘に話したら、言下に、「行かなくって良かったじゃあないの!」と、言うではないか。  「ええっ。どうして 」行きたかったわーというにきまっているはずなのに。  「ブラジルにいたから大学迄ゆけたのよ。アメリカに行っていたら私たち二人とも大学には行けてないわ。両親にと ...

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どこから来たの=大門千夏=(47)

アメリカ移住  一九七三年の第一次オイルショック以来,ブラジルでは経済の低迷が続いた。国民の貧困化がすす み「未来の国」の生活はいっこうに良くならない。それどころか生活はますます厳しくなって行った。  その頃、私たち家族がつきあっていたのは台湾から来たエンジニアの人たちがほとんどで、日本人との付き合いは少なかった。  彼らの興味 ...

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どこから来たの=大門千夏=(45)

 私のように背丈の小さいものですら、城のドアを通る時は、ちょっと頭を下げるようにして通る。せせこましい。  この時、あれれれ? この感触なんだか知っている。頭を少しかがめて通り過ぎる。しばらく歩くと、また隣の部屋に行くために頭を下げて通る。…何処かでしたことのある動作だ。  しばらく行くと今度は幅の狭い階段があって、母と二人で横 ...

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