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コロニア10大ニュース

12月28日(火)

 記憶に残る首相伯=日伯センター建設問題も

ニッケイ新聞社は年末恒例のコロニア十大ニュースを選んだ。一年間様々な出来事を取材し続けた編集部が、コロニアにまつわるニュースから選び出した。やはり、八年ぶりにブラジルを訪れ、コロニアとも積極的に交流を持った小泉純一郎首相の滞在が圧倒的に支持されトップになった。また、一年を通じてコロニアの「総意」とは何かという重いテーマを突きつけた移民百周年祭典協会の動きと日伯総合センター事業が、二位に続いた。デカセギによる犯罪の悪化や新潟の大地震、各地を襲った集中豪雨に伴うコロニアでの義捐金集めなども選出された一方で豪華キャストによるNHKドラマのブラジルロケやアテネ五輪サッカー出場を果した日系三世の田中マルクス闘莉王が日本でも大きく取り上げられ「日系社会」に注目が集まった一年でもあった。

 (1)小泉首相來拍、感涙

八年ぶりの首相来伯が実現した九月、コロニアは「小泉旋風」に沸いた。九月十四日サンパウロ入りした小泉首相は、チエテ川の視察などを終えた後、午後はプラドーポリス市周辺を農業視察。途中、上空からの視察に留める予定だったグァタパラ移住地に予定を変更して、急遽着陸。日の丸や鯉のぼりを用意して地上から熱烈な歓迎をみせた日系人ら約二百人と交流を図った。時間にしてわずか十分程度だったが、年配の一世は涙ながらに「ありがとうございました」と小泉首相の心憎い配慮に感激。移住地の日系人全員が、かつてない興奮に包まれたという。
 さらに翌十五日には午前十時過ぎにイビラプエラ公園の開拓先没者慰霊碑で献花などを行った後、コロニアの「総本山」ともいえるリベルダーデ区の文協ビルを訪問。到着時には、大講堂だけでなくビル周辺にも日伯両国旗を手にした多数の人が小泉首相を出迎えた。いとこが住むブラジルへの熱い思いやグァタパラ移住地での歓迎など約十分間のスピーチの途中、「涙をもって迎えてもらった……」と語ると感極まったのか約三十秒間、感涙に咽びながら、スピーチを中断。目頭を熱くした来場者も多数見られ、一気にコロニアと首相との心の距離が縮まった。
 コロニア各界との交流に留まらず滞在最終日の十六日にはブラジリアで日伯首脳会談やルーラ大統領主催の午餐会に出席。両国トップがブラジルで膝をつき合わせるのは八年ぶりの機会だけに、熱のこもった会談が行われ、共同声明も発表。二〇〇八年を「日本ブラジル交流年」と定め、これを充実させるための有識者による「日伯二十一世紀協議会」を設立することなども盛り込まれるなど、今後の幅広い日伯関係に期待をもたせる小泉首相の来伯となった。

 (2)百周年事業巡り議論

 四月三日の百周年祭典協会臨時総会で四記念事業を承認、総額百九億円というコロニア史上かつてない莫大な総工費となった。また定款を改正し、理事長である上原幸啓文協会長を頂点に、副理事長団体の枠を五十まで増やし、うち三十二団体が就任した。
 なかでも、最優先記念事業と決定された日伯総合センターを巡って紛糾した〇四年度後半だった。事前の説明や議論がなく、いきなり臨時総会で決定された経緯や、七十億円もの総事業費をどう集めるのかなど多くの疑問が残された。
 総合センターの土地代にと、八月七日の理事会で「一万ドル記帳」を五百口集めるキャンペーンが打ち出され、上原理事長、渡部和夫補佐ら五人が署名したが、その後、まったく進展無しで、資金集めの方法に関する納得いく説明がなされていない状況が続く。
 当初の計画ではパウリスタ通り周辺、一万平米、ツイン・タワーという構想だったが、十一月二十三日の臨時総会では半額の事業費になり、場所はヴィラ・レオポルジーナ区、商業ビル二棟に挟まれた建物だけが同センターというプランに変更、承認された。
 ところが、「コロニアの総意がない」「決め方に問題がある」などと異論がまきおこり、十二月二十三日に県連が臨時代表者会議で「再考を求める」決議をするなど異常な事態になり、祭典協会の運営方法が問題にされはじめた。
 〇五年五月のルーラ大統領訪日に合わせて総合センター定礎式を予定する祭典協会には、日系社会の世論を分断させない手腕が問われている。

 (3)高倉候補、無念の涙

 七月に行なわれた第二十回参議院選挙でパラグアイの邦字紙「日系ジャーナル」経営の高倉道男(63)さんが、自民党比例区から初出馬したが、同党比例区候補で最も少ない一万二千四百十六票しか得られず落選した。
 高倉さんは▼在外選挙制度の改革▼日系二世、三世の日本就労ビザ取得義務の廃止▼在外高齢者の老年福祉年金支給▼二重国籍の認知▼出稼ぎ就労子弟の教育問題改善▼海外に対する総合的な日本文化戦略の確立▼苦境にあえぐ中小企業の海外進出の促進▼日本不登校児(14万人)を南米で教育する▼海外日本人の安全対策強化――などを公約にサンパウロや出身地の大分県、デカセギの多い愛知や静岡県を中心に選挙運動を展開したが実らなかった。
 落選後は、「昨年から選挙活動していれば、可能性があったのではないか。悔しさは残るが、在外選挙権の重要性などを日本にアピールできた。なんとしても、この動きを続けたい」などと結果を振り返った。
 高倉さんは七六年パラグアイに移住、同新聞社を創立した。海外日系新聞社協会前会長。オイスカ・インターナショナル・パラグアイ総局会長、「日系人代表を国会に送る運動」代表でもある。

 (4)デカセギ犯罪凶悪化

 在日ブラジル人の検挙件数は全体の一七・七%(四三八二件)、検挙人員は一一・六%(九二六人)となり、国籍別にみると中国人(検挙件数四三・六%、検挙人員五二・三%)に次いで二位となったことが、「平成十五年(一~十一月)の犯罪情勢」(警察庁刑事局刑事企画課)によって分かった。
 さらに、凶悪な犯罪だけを扱った統計「犯罪統計資料(平成十五年一~十二月)」によれば、〇三年の国籍別検挙人員総数一五一八人のうち、ブラジル人は二五四人(一六・七%)を占め、中国人の八五一人(五六%)に次ぐ二位。
 犯罪の質に変化が現われた。ブラジル人による重要犯罪(殺人、強盗、放火、強姦、略取誘拐、強制わいせつ)が増加。〇二年の九十二人から、〇三年は百十人と約二割増えた。殺人は八人から十六人へ倍増、強盗は七十四人から八十四人へ、強姦は四人から七人になり、デカセギ犯罪は凶悪化している。
 こうした状況を受けて、トヨタ自動車はデカセギ子弟を対象に職業訓練し、就職斡旋するという先進的な取り組みを開始。デカセギ犯罪への社会の対応が迫られている。

 (5)初の公館投票が低迷

 サンパウロ総領事館管内で初めての在外公館投票が、七月の第二十回参議院議員選挙で行われた。在外選挙が認められてから四度目での実現だった。
 郵便投票との併用になるだけに高い投票率が期待された。というのも、昨年、同総領事館がサンパウロ市近郊に住む有権者三百人を対象に「公館投票が実施されれば足を運ぶか」と質問したところ、約八割が「公館投票なら行く」と回答。七千人の投票が予想された。
 だが、公館投票を行ったのは千九百九十九人で、郵便投票は含まない公館投票に限れば、一七・二%と極めて低い投票率に終わり、コロニアの政治離れを表すものとなった。
 同総領事館管内の選挙人登録証所持者は一万千六百三十二人(五月現在)。日本国外の選挙人登録者七万五千人のほぼ六人に一人を占め、「海外最大の票田」となっている。

 (6)NHKドラマ ハルナツフィーバー

 今年は日本の著名人の来伯ラッシュだった。小泉純一郎首相、人気作家で長野県知事の田中康夫氏。今をときめく女優の米倉涼子さんの姿も記憶に鮮やかだ。
 ブラジル移民史を描くNHK開局八十周年記念ドラマ「ハルとナツ 届かなかった手紙」(05年秋日本放映)で主役ハルを演じる米倉さんは六月十三日から一カ月間、ブラジルに滞在。十歳で家族と共に来伯したハルの十六歳から五十五歳までの人生を演じた。
 ブラジルロケはカンピーナス市の東山農場などで五月二十三日に始まり、七月半ばまで続いた。ブラジル日本文化協会が支援委員会を立ち上げ、エキストラ募集には、最高齢の百一歳男性を含む約一千人が殺到するなどコロニアはハルナツ・フィーバーに沸いた。
 フォーリャ紙などブラジル大手マスコミも日本のテレビ局が「ノヴェーラ」をブラジルで撮影していると注目。NHK側も七月の記者会見で、「現段階では未定だが、グローボを含めた各局と交渉できれば」と明かし、ブラジルでの放映に期待感を示した。

 (7)サンパウロ市議、日系4人に

 十月の地方統一選挙サンパウロ市議選(定員五十五人)で、過去最多と並ぶ四人の日系市議が当選した。
 羽藤ジョージ市議(PMDB)は二万八千票を集め六期連続、ウイリアム・ウー市議(PSDB)は四万五千票の上位十三位で余裕の再選を果した。
 また、神谷牛太郎元市議(PFL)が三万九千七百票を獲得、緑の党(PV)から出馬した野村アウレリオ元市議も一万七千票で、それぞれ返り咲いた。
 当選祝賀会で四市議は移民百年祭に向け、市議会や日伯議員連盟などと連携したいと抱負。リベルダーデ区の再開発やゲートボール・ラジオ体操の振興、カラオケ、日本文化の継承に対しても尽力すると誓った。

 (8)相次いだ義捐金活動

 日本漢字能力検定協会が公募した年末恒例の「今年の漢字」に「災」が選ばれたように、今年の日本は災害が多発した。集中豪雨に始まり、過去最多の上陸数十を記録した台風では二百人以上の死者を出した。そして、さらに追い討ちをかけたのが新潟県中越地震で死者四十人以上、一時十万人以上が避難生活を余儀なくされた。
 被災状況はブラジルにも克明に伝えられ、同胞の窮状に「義捐金を送ろう」との声がすぐにあがった。豪雨で甚大な被害を受けた福井、新潟に始まり、台風の被害が大きかった兵庫県へ支援。これらは主に各県人会が進めてきたが、震災支援では全伯的な盛り上がりを見せた。
 新潟県人会とブラジル日本文化協会の呼びかけに対し、二十二日現在で十二万八千レアルを超える義捐金が集まっている。ブラジル日系老人クラブ連合会も独自に各支部などに募金を訴え、沖縄県人会ではチャリティー・コンサートを開いた。また、中越地震の被災者を勇気づけようと、NHKが二十四時間の特別番組を企画、そのなかでリベルダーデ広場で募金を呼びかける新潟県人会員などの姿が中継された。

 (9)6年ぶりに練習艦隊

 四月二十日に東京を出航した海上自衛隊練習艦隊(東郷行紀司令官)練習艦「かしま」(林宏之艦長)が七月十五日、六年ぶりにサントスに入港。凛々しい制服姿の隊員総勢三百三十四人をサントス日本人会(遠藤浩会長)の関係者らが、盛大に出迎えた。
 サンパウロでも十五、十六日午後には各県人会で、十六日、十七日昼には文協でそれぞれ歓迎会が催された。四十四県人会は手料理などを用意して熱烈歓迎したが、文協では二日間とも共催日系二十八団体代表の欠席が目立つ、寂しい歓迎会になった。
 東洋街の散策などサンパウロを満喫した隊員を乗せた「かしま」は十八日にサントスを出港。約二ヵ月後の九月、東京へ帰港した。

 (10)サッカー闘莉王が五輪代表に

 八月に行われたアテネ五輪。帰化した日系人としては初めてパウメイラ・ドオエステ市出身の田中マルクス闘莉王がサッカー日本代表に出場した。昨年、日本で高校時代を過ごし、Jリーグ入りした闘莉王は「自分を育ててくれた日本に恩返しがしたい」と昨年、帰化したばかり。高い守備能力と持ち前のガッツが評価され、今年三月のアジア最終予選で急遽、代表入り。守備の中心として厳しい予選で奮闘した。
 本大会でもレギュラーとして予選リーグ三試合に出場し、五輪の聖地に確かな足跡を残した。今年に入ってから一気に注目度が高まった闘莉王。新聞や雑誌、NHKの特別番組など各メディアがその「開拓者魂」を大きく報道した。さらに闘莉王を日本に連れて行き、指導した高校時代のサッカー部監督で二世の宗像マルコス望さん、実父であるパウロ隆二さんにも取材が集中するなど、サッカーを通じて「日系社会」への関心が高まる効果も見られた。
 惜しくも五輪では予選敗退したが、Jリーグで所属する浦和で、闘莉王は後期優勝を果す原動力になっただけに、来年度はジッコ率いる日本代表への昇格。さらには二〇〇六年のW杯出場が期待される。

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