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県連ふるさと巡り=リベイラ沿岸とサンタカタリーナの旅=第6回=タンガラー=独語読み書きする6世!?=兄妹でイタリア民謡歌う

ニッケイ新聞 2008年5月16日付け

 ふるさと巡り三日目の四月二十一日昼、一九四五年頃にイタリア移民が建てた水車小屋を九八年に改装して観光レストランにした「ランショ・モイーニョ・ヴェーリョ」に到着。バスを降りると、四人のコーラスが「サンタルチア」などのイタリア民謡を歌って歓迎してくれた。
 ところが三曲目からドイツ語の曲になり、「イタリア移民なのに?」と不思議に思って休憩時間に尋ねてみると、実は右側の若い女性一人以外はドイツ系子孫兄妹なのだという。
 父親譲りのバンドネオン(アコーディオンのような楽器)を弾く長兄ベノ・ボーシングさん(70)は「自分は六世か七世」というが、「ドイツ語の読み書きまでできる」という。初代は一八二四年に着伯しており、「ポ語の読み書きができなかった」という父親の代に南大河州モンチ・ネグロからタンガラーに国内移住してきた。
 イタリア系をウリにした町だが、実はそれほど伝承されておらず、継承に熱心で歌が大好きなドイツ系がお手伝いしているという興味深い構図のようだ。
 レストラン社長のネイ・セルジオ・ガラファッシさん(44、三世)は「父はイタリア語を話したが、家の中はポ語で会話していた。ボクはもうイタリア語は分からない」という。
 昼食後、歓迎会が行われ、パンセーリ市長が再登場し「二回でも三回でも来て下さい」と呼びかけた。
 同地最有力企業の一つ、製紙工場SOPASTAを経営する原沢ネルソンさんも姿をあらわし、「イタリア系、ドイツ系の町で受け入れてもらって満足している。日系であることに誇りを感じている」と語った。直接雇用だけで二百三十人もおり、再生紙を中心に段ボール箱、梱包材などを作っている。ネルソンさんは原沢和夫援協元会長の甥にあたり、父親の故・原沢文夫さんは新潟県人会の会長をしたことがある。
 ドイツ系兄妹らは「タンガラーの歌」を歌い、イタリア舞踏グループ「フェリチタ」がフォークダンスを披露し、一行のメンバーや市長も混ざってにぎやかに踊った。最後は恒例の「ふるさと」を合唱し、別れをつげ、フライブルゴのホテル・レナールに戻った。
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 夜八時からホテル内で、夕食をかねたドイツ移民との交流会が行われた。リンゴの里らしくミラネーザはもちろんファロッファにまでリンゴが入っていた。
 ドイツ移民を代表として体験を語ったのはバレ・メーレさん(76、ドイツ南部ビュルテンベルブ州出身)。「ドイツで神父から、ブラジルに行けば道端で金が見つかるといわれてきた」としゃべると、一行から笑いがもれ「やっぱり同じね」とばかりに目配せする人の姿がみられた。
 「それは大変な誇張だった。連れてこられたのは原始林の真ん中で最初は食べるものもなく、みんなすごく苦労した。十年たったら戻ると故郷に言い残してブラジルに来ていた母は、いつも戻りたいといっていたが、二次大戦が始まり、十年後に死んだ」などと語ると会場はシーンと静まりかえった。
 町唯一の日系夫婦、平山操さん(みさお、63、二世)と妻みちよ(54、二世)も姿をみせた。九〇年から七年間埼玉県などにデカセギをしている時に、ポ語のトゥド・ベン紙に同地の広告が出ていたことから下見にきて気に入り、十年前からここに住んでいる。
 デカセギ以前にサンパウロ市で広告代理店に勤務した経験のある操さんは、日本で働いた資金でタウン誌「ミニニュース」を創刊し、現在三千部を発行している。
 操さんは「サンパウロは危ないし騒がしい。ここは静かで気に入っています」、みちよさんも「ここでは日本と同じように紅葉もあります」と微笑んだ。
 一行の岩本ふきこさん(75、兵庫出身)は、ドイツ移民の体験談に関して「女らしさより、生活力のあるたくましさを感じた。みんな苦労している」としみじみ感想を語った。
(つづく、深沢正雪記者)



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