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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年7月18日付け

 移民百周年記念式典開催で、サンパウロ市のサンボードロモが沸いていたと同じ時期、NHKのテレビで、家をローンで購入するブラジル人デカセギが少しずつ増えている、と報道していた。二十四年もの長期ローンをくんでいるというのである。この「長さ」は、支払いが親子二代になるな、といったことまで想像させる▼なぜ家購入に踏み切ったのか、その理由の第一に子どもの教育を挙げていた。子どもは、もはや、ポ語よりも日本語になじんでいる、それが最大の理由。永住である▼識者は、人が生きていく上で、母語(ぼご)が必要だという。二つの国の言葉をどちらも不完全に身につけたのでは、将来なにかと困る、といっている。一つの言葉で自身の意思をきっちり伝えられるようでなければ、どこの国で生きるにせよ、危ういという考え方である。家を子どものために長期払いで購入することを決めた人たちは、その辺のことを肌で感じ取っているのではないか、と思われる▼デカセギは、八〇年代の後半から増え出して二十年。ブラジルへの日本人移民の数をすでにしのぐ。しかし、笠戸丸のサントス着港日のような日はない。永住人口も次第に増えようというのに、在伯日系人のように「記念日」が存在しない。日本の永住者たちにそうした日が設けられてもおかしくはない▼ともあれ、わが家購入者には、大きな決断があった。こういう人たちが、みずからの「移民の日」を設定し、みずから祝う気持になるのはいつの日か。(神)

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