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山口県人会創立90周年=330人で卒寿をお祝い=母県から知事ら43人来伯

90周年を祝い乾杯

90周年を祝い乾杯

 ブラジル山口県人会(要田武会長)が8月26日、サンパウロ市内のホテルで創立90周年記念式典を行った。式典には日本から参加した43人の慶祝団を含め約330人の防長系人らが駆けつけ、県人会の節目を祝った。来伯した村岡嗣政(つぐまさ)知事、河村建夫衆議院議員、山口県ブラジル親善協会の橋本憲二会長のほか、山田彰駐ブラジル全権大使も出席した。

 日伯両国歌、山口県民の歌を斉唱後、先亡者に一分間の黙祷を捧げた。要田会長は挨拶で「代が替わっても故郷は山口県。防長精神をブラジルの地で受け継ぎ、守り続けている会員の皆様を心強く思う」と語った。
 来賓祝辞では村岡知事が「90周年の契機に、先達の御苦労と山口県人としての誇りに思いを馳せ、未来に向け新たな一歩を踏み出してほしい」と述べた。
 山口県海外移住家族会、中南米日系人支援議員連盟会長、日ブラジル会議員連盟幹事長の河村衆議は「これからも100周年、110周年と活動を続けて欲しい。日伯、山口県との友好関係を強めて欲しい」と期待した。
 山口県ブラジル親善協会の橋本憲二会長は「1908年の笠戸丸で30人の山口県人が到着して109年。今年山口県人会は90年という歴史を刻んだ。先駆者の記憶を忘れてはならない」と語りかけた。周防大島の日本ハワイ移民資料館にブラジル山口県人会の協力でブラジル移民の展示室が開設されたことに触れ、来場を呼びかけた。
 その後、山田彰駐伯日本全権大使、森田宗治山口県議会副議長、三木潤一下関市副市長、岡正朗山口大学学長、県連の山田康夫会長が挨拶を述べた。祝電は安倍晋三首相、リオ五輪の前年に親善協会に山口県に招待され、同五輪について山口県で講演を行ったアンドレ・ラーゴ駐日ブラジル全権大使らのメッセージが披露された。
 功労者表彰では井上ロベルトさん、落合亀之さん、河内要さんが村岡知事から表彰状と記念品を受け取った。高齢者表彰では152人を代表し鈴木朝子さんが表彰された。

慶祝訪問団の皆さん

慶祝訪問団の皆さん

 今年度の青年部リーダーである小野ヴィヴィアネさん、清本アレックスさん、奥田ナンシーさんが県費留学研修員OB謝辞を行い、「サッカーがお好きということで」と村岡知事に「MURAOKA」と名前が入れられたサッカーユニフォームを贈った。
 要田会長、来賓らで鏡割りの後、出席した在聖日本国総領事館の関口ひとみ首席領事が「サウーデ、ビバ、乾杯!」と乾杯の音頭を取り、昼食会に流れた。
 南麻州ヴァルゼア・アレグレ市から16人を引き連れ参加した同市日本人会会長の金崎英司さん(下関市、79)は「90周年を記念し、県から移民した先輩方に敬意を払いたい」と語った。
 来伯した防府天満宮の鈴木宏明宮司(熊毛郡平生町、60)は、「移住当初は言葉にできないほど大変だったはず。県人会ができたことで、精神的な支えになっていたのでは」と思いを馳せた。

 

深甚なる敬意=山口県知事 村岡 嗣政

村岡知事

村岡知事

 ブラジル山口県人会創立90周年記念式典が、盛大に挙行されるに当たり、山口県民を代表して、心からお祝いを申し上げます。
 また、この度は、山口県から同行いただいた皆様と共に、こうして祝意を表すことができますことを、誠に嬉しく思っています。
 ブラジル山口県人会におかれましては、1927年に創設以来、ふるさと山口への強い思いを抱かれながら、幾多の試練に立ち向かい、困難を克服され、ブラジル社会において確固たる地位と信頼を築いてこられたところであります。
 90年もの長きにわたり培われた輝かしい業績の数々は、ひとえに、先達の御労苦や、要田会長をはじめ、皆様方の御努力のたまものであり、ここに、深甚なる敬意を表する次第であります。
 私は、知事就任以来、今回が初めてのブラジル訪問になります。
 一昨日、24日には、サンパウロ市内にある「移住先没者慰霊碑」を参拝し、先没者の皆様の御苦労に対し敬意を捧げるとともに、昨日は、ブラジル山口県人会を訪問し、役員の皆様との懇談や県人会館の竣工式、更には、先亡者法要などを通じ、皆様の「ふるさと山口」を思う心を肌で感じたところです。
 さて、本県では、未来に向けて、県と在外県人会の連携や、在外県人会相互のネットワークの強化に努めており、2年前には、私も出席し、アメリカ・ロサンゼルスにおいて、「第4回在外山口県人会世界大会」を開催し、ブラジル山口県人会の皆様にも多数御参加いただいたところです。
 次回第5回は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に併せ、山口県において開催する予定ですので、この機会に是非、山口県にお越しいただきたいと思っています。
 ブラジル滞在は今日が最後になりますが、今回の訪問を通じ、私は、歴代の県人会の皆様の御努力を肝に銘じ、ふるさと山口県を、将来にわたって元気な山口県にするために邁進していかなければならないという思いを新たにしたところです。
 どうか、ブラジル山口県人会の皆様におかれましても、本日の栄えある創立90周年記念式典を契機に、改めて、先達の御労苦と山口県人としての誇りに思いを致され、未来に向けた新たな一歩を踏み出していただきたく存じます。
 終わりに、ブラジル山口県人会の今後益々の御発展と、御参集の皆様の御健勝、御活躍を心から祈念しまして、お祝いの言葉といたします。

 

防長精神を守り続け=ブラジル山口県人会会長 要田 武

要田会長

要田会長

 ここにブラジル山口県人会が創立90周年の記念式典を挙行いたしますに当たり、一言ご挨拶をさせて頂きます。
 本日ここに村岡嗣政山口県知事、守田宗治県議会副議長、河村建夫衆議院議員、三木潤一下関市副市長、戸澤昭夫下関市議会議長、岡正朗山口大学学長、林芳正文部科学大臣夫人林裕子山口大学教授、美祢市出身の歌手入山アキ子さん。
 そして、橋本憲二山口県ブラジル親善協会会長、及び慶祝訪問団の多くの方々、また、ブラジリアより山田彰日本国大使、関口ひとみ総領事代理、全国都道府県連合山田康夫会長、中国地方の会長様にご臨席を頂き、かくもこのように立派な式典を挙行することが出来ましたことを山口県人会会員一同、感激の念で一杯で心より嬉しく思っております。慎んで御礼を申し上げます。
 ブラジル山口県人会が発足いたしまして、幾星霜、漸く90周年を迎えることが出来ました。先輩達のご苦労のお陰で、現在は、この式典も3世4世の青年達が取り仕切ってくれるようになりました。また、高齢者表彰の皆様も2世の方々が殆どです。代が変わっても私たちの故郷は山口県です。こうして、防長精神をブラジルの地で受け継ぎ守り続けていっておられる皆様を私は心強く思います。
 皆様、本日はブラジル国内各地よりよくお集まりになって頂きました。
 山口県人会は本日の皆様のパワーを頂き、益々発展、飛躍してまいります。
 今後とも、末永くよろしくお願い申し上げます。
 終わりにあたりご臨席の皆様に心より感謝を申し上げ、皆様のご健康とご多幸をお祈りいたします。

 

20年越しの祈願叶う=盛大に寄宿舎竣工式祝う

祝詞を捧げる鈴木宮司

祝詞を捧げる鈴木宮司

 ブラジル山口県人会(要田武会長)で8月25日午後、同県人会館の『寄宿舎竣工式』が行われた。寄宿舎の増築は約20年前から企画されており、同県人会創立90周年記念式典前日にお披露目となった。増築とともに、老朽化した会館の塗装直しなど整備も行われ、リニューアルした会館で慶祝団一行ほか式典参加者を迎えた。
 竣工式では日本三大天満宮の一つと言われる防府天満宮の鈴木宏明宮司が祝詞を捧げた。村岡嗣政知事は挨拶で、同県人会館が文化財に登録されていることに触れ、「ご苦労もあったと思うが、これから益々活動に励めるはず。県としても、さらに山口県人会との交流を深めていきたい」と語った。
 日本で募金活動など整備費援助に努めた山口県ブラジル親善協会の橋本憲二会長は、「これからも会館が大いに役立っていってほしい」と期待した。要田会長は「皆さんの協力で寄宿舎ができた」と涙ながらに感謝を述べ、「青年部の育成に力を入れ、上の階は山口県の文化を発信するような場所にしたい」と展望を語った。
 会館内でのテープカットは要田会長、村岡知事、橋本親善協会会長によって行われた。その後、ブラジル山口県人会の過去帳を前に、山口県長門市の瑞雲萬歳山大寧寺護國禅寺(ずいうんばんぜいさんたいねいごこくぜんじ)の岩田啓靖(けいせい)住職が先亡者供養を行い、「移住者7886人、一世の方はほとんど亡くなられましたが、90年間の気持ちをここで祈りましょう」と呼びかけ、来場者らは焼香に並んだ。
 同県人会の伊藤紀美子事務局長は式典中、「駐ブラジル山口県大使館のようなつもりで頑張りたい」と今後の活動に意欲を見せた。
 新寄宿舎は3階建て18室、白を基調とした各部屋に家具のほかに台所付き。会館から繋がる1階の壁には、協力者の名前が書かれた記念プレートが飾られた。

 

入山アキ子歌謡ショー=会場の演歌ファン大喜び

会場を魅了した入山さん

会場を魅了した入山さん

 ブラジル山口県人会創立90周年記念式典後の昼食会では、北原民江さんによる筝曲演奏、中村洋子さんらによる日本舞踊、山口県出身の演歌歌手、入山アキ子さんによる歌謡ショーが行われた。入山さんは持ち曲「ザンザ岬」などをこぶしの利いた歌声で披露。会場の演歌ファンから大きな拍手と歓声を受け、「ブラジルのファンの演歌への情熱が伝わった」と感動した様子で話した。
 山口県ふるさと大使でもある入山さんは山口県美祢市出身、元看護士(防衛省技官)。2008年にテイチクレコードからメジャーデビューした。今年5月にはブラジル山口県人会館整備費のため山口県でチャリティコンサートを行い、収益約300万円を寄付した。
 並木路子の「りんごの唄」で始まったメドレーでは会場に降り、来場客と握手や写真撮影に応えた。また場内各所の演歌ファンと一緒に歌うなどし、来場客を一層虜にした。
 舞台に戻った入山さんは「日本でもまだ人前で歌っていない」と新曲「知床岬」を披露し会場を喜ばせた。
 最後に会場全体で「ふるさと」を合唱。入山さんは「歌い続けてきたおかげで、今日この舞台に立てて良かった」と笑顔を見せ、再訪伯を誓った。

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