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《サンパウロ市》慢性病や制限ある新高齢者増加=肥満や運動不足などが原因?=予防を心がけ、重症化回避を

インフルエンザの予防接種を受ける高齢者(参考映像、Venilton Küchler)

インフルエンザの予防接種を受ける高齢者(参考映像、Venilton Küchler)

 2000年以降、5年毎にサンパウロ州立総合大学(USP)が行っている調査によれば、サンパウロ市では慢性病や種々の制限に悩む新高齢者が00年より増えていると16日付現地紙が報じた。
 USPが行っているのは、健康と快適な生活、高齢化に関する、Sabeと呼ばれる調査で、汎米保健機構(Opas、英語はPAHO)のプロジェクトの一部だ。ブエノスアイレス、サンチアゴ、モンテビデオなど、7都市で行われる調査の対象は、60~64歳の「新高齢者」と呼ばれる年齢層人だ。
 サンパウロ市の新高齢者は約160万人(13%)で、2016年の調査の概括は2週間前、サンパウロ市市議会で報告された。
 最新調査では、慢性病患者や日常生活に制限を感じている新高齢者が増えている。例えば、糖尿病患者は25%で、00年の18%より7%ポイント増えた。がん患者は3%が8%、関節の痛みなどのある人は32%が33%に増えている。
 専門家は、慢性病増加は肥満や運動不足などの生活習慣の変化が主因だが、医療サービス利用者が増え、診断例が増えた事も関係があるという。
 一方、入浴や排尿、食事、衣類着脱といった基本的な活動が出来ない人は10%から16%、交通機関の利用、買物、自分の金銭の管理、電話をかけるなどの道具を使う活動が困難な人も23%から36%に増えた。
 また、サンパウロ市の新高齢者の21%(約11万人)は、筋力低下や疲労感、歩行速度低下といった、脆さや危なっかしさを覚えている。筋力低下や関節の疾患は活動範囲を狭め、外出も制限する。
 調査責任者のイエダ・ドゥアルテ氏は、今回の結果は、高齢化に即した公共政策の欠如や、喫煙を格好良いと考えたり、仕事などに追われ、運動しなくなったりした事などが、形となって表れたものだという。また、高齢者が日常の活動に不便を感じるのは当たり前位に考える医療関係者がおり、治療不能になる例もあると指摘する。高齢化が進み、寿命も延びる中、予防治療や早期治療は従来以上に重要度を増している。
 老人医療専門でサンパウロ連邦大学教授のマイーザ・カイララ氏によれば、ブラジルでは60歳以上の人が14%(2940万人)いるが、2030年は18%(4150万人)に増える。だが、高齢化への備えは不十分で、高齢者の脆弱さを知らせ、予防するような公共政策が不足している。サンパウロ市の状況は深刻だが、他の地域の実情はより深刻で、高齢者の生活の質を高めるような政策はまだまだ足りないという。

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