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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(5)

不吉な兆し

 連合会の移住地用の土地選定は、無理を犯して始めたが、やはり端(はな)から問題を孕んでいた。地質である。バストス移住地の土は、粒子が大きくて保水力が弱く、作物に必要な栄養分が流れてしまう砂地が多かったのである。
 普通の農作物には不向きであった。最初に予算をケチった結果である。それと、1万2千アルケールもの広さの原始林を、一人で僅か3日で調査したため、十分に地質を把握できなかったこともあろう。
 バストス移住地の開設に先立って、連合会は現地機関としてブラジル拓殖組合、通称ブラ拓を1928年4月1日、サンパウロ市内に設立していた。バストスには事務所を置くことになり、その主任に畑中仙次郎が起用された。
 畑中はカミニョンに当座の必要品を積み込み、一旦、前居住地の平野植民地へ行き、協力者を物色、山中権吉と吉永宗義を誘い、現地へ向かった。ほかに、雇ったカマラーダ(非日系)をカミニョン2台に満載していた。
 現地に着くと、既述の公道の支道の終点から移住地の入り口までの7㌔に、幅5㍍の道をつける工事を始めた。仕上がるまでに4週間かかった。次に移住地の中央部へ向けて、幅8㍍、7㌔半の道を2カ月かけて通し、バラックを数棟建てた。
 さらに、その中央部の40アルケールの樹林を伐採、焼き払った。事務所、職員の合宿所、日本から来る入植者の収容所などの諸施設用の土地である。が、その建設作業は遅れた。そこへサンパウロからブラ拓派遣の職員、土木技師、測量技師ら20名近くがやってきた。が、施設だけでなく機材も不備であり、生活も仕事も難渋を極めた。
 やがて季節は1928年末から翌年にかけての雨季に入り、30年来という豪雨が連日襲った。
 河川は氾濫、鉄道はアチコチで水に浸かり、道路は泥濘と化した。諸工事は進まず、食糧輸送も途絶えがちとなった。
 それでも移住地の中央部から、初年度の入植者200家族用の土地へ通じる支線28㌔を拓き、その土地の区画割りをした。一家族用の区画つまり一ロッテは10アルケール=24・2㌶=で、ほぼ24町歩に相当した。
 この間、合宿所でピストルの暴発事故が起こり、職員一人が死亡している。

現地測量隊(1928年)

現地測量隊(1928年)

 地質、建設作業の遅れ、施設・機材の不備、豪雨、事故死と、前途の乱れを予感させる不吉な兆しが次々と現れていたのである。
 しかしブラ拓は、移住地の西隣の930アルケールの土地を買い増すなど、積極的な姿勢を崩さなかった。総面積は計1万2、930アルケールとなった。バストス事務所の仕事と職員もドンドン増やしていた。それに伴い畑中主任の肩書は、短期間で支配人と変わった。各業務部門別に主任を置き、畑中をその上司としたためである。
(つづく)

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