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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩

『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=(31・終)=外山 脩

バストス日系文化体育協会

未だ投げ出してはいない    バストスの文協の正式名称はバストス日系文化体育協会という。会長の海老沢さんは、地元の人からは「グアタパラさん」と呼ばれている。バストス生まれではなく、35年前、グアタパラから移って来た。それで、そう呼ばれるようになった。ブラジル移住は1964年、6歳の時だった。  2017年、会長に選ばれた。その少 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=(30)=外山 脩

日系の町ではなくなっている  バストスは2018年、移住地開設90周年を迎えた。  その90年という長い歳月をかけて苦心惨憺つくりあげた町であるが、実は「経済を除けば、すでに日系の町ではなくなっている」と住民は言う。  それも最近でなく、筆者は20世紀末の時点で、そういう説を耳にした。その象徴的現象として、行政が殆ど日系人の手を ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=(29)= 外山 脩

 前項で水本豊氏が言っている様に、卵の販売価格の監視を受けていた処は総て潰された。  では、それ以外は無事だったかというと、そうでもない。そこに至る経緯は、色々あったであろうが、やはり「恩典付き融資で規模を拡大した。ところが、その停止や市況の悪化で資金繰りが苦しくなり、高利の銀行融資でしのいでいたが、狂騰金利や預金封鎖で、行き詰 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=(28)=外山 脩

政府に潰された!    水本の奇跡には、先に記した創造心以外に二つ要因があった。一つは連邦政府が1960年代後半から始めた農業奨励策=恩典付き融資=である。利子をインフレより低く設定、投資・運転資金を貸し付けた。差額分は利益となった。農産企業(含、組合)、農業者は何処も誰も、これで一挙に事業規模を拡大した。無論、水本も利用した。 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=(27)= 外山 脩

創造心  筆者は水本豊氏に、二度会った。2012年バストスで、2013年サンパウロで。  氏は、それより30数年前、事業の本部も住まいもサンパウロに移していた。バストスには、仕事の関係で、時々行っていた。以下は、二度に渡って聞いた氏の回想談の一部(要旨)である。  「バストスの養鶏は、私が子供の頃は何処でも、飼料は子供が手や小型 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(26)

水本の奇跡    1960年代半ば過ぎ、バンデイランテ産組もその出張所も消えたが、バストスの養鶏産業は興隆期に入っていた。さらに先に触れた様に、かつて鶏飼いを手伝っていた子供たちが成人になる頃から、規模を急拡大するグランジャが、次々現れた。なお「養鶏場」は、その頃から「グランジャ」と表現される様になって行った。本稿でも、以下、そ ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(25)

主婦と子供の姿  バストスに於ける養鶏の初期の光景を──人の話や資料類から──想像すると、主婦と子供の姿が浮かび上がって来る。庭先や鶏舎で鶏の世話をする主婦、それを手伝う子供たち…。この、まことにささやかな養鶏がブラジル最大の卵の生産地に変身して行くのだから、劇的である。  しかも、バストスが抱えていたマイナス面が、プラスに転化 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(24)

破竹の勢い  1946年1月、バンデイランテ産組の理事会は、バストスに出張所を開くことを決定、所長に水間久を指名した。水間は固辞したが、専務の原田は辞令を送付した。すると水間は上聖、理事会で、存亡の危機にあるバストスの経済情勢をつぶさに説明、こう申し入れた。  「この辞令では活動できかねる。バストス出張所に関する一切の権限を与え ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(23)

ブラジル一!  話をもう一度、終戦直後に戻す。  何度も書いたことだが、当時この国の蚕糸業は崩壊、バストスもバストスそのものが半ば壊滅してしまっていた。大半の住民が生きる方途を求めて、次々と他へ移動して行く中、残留組は死中に活を求めて新産業を模索していた。そして一時、西瓜・ポン柑に光りを見い出した。が、結局、西瓜は、その主たる出 ...

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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(22)

新たな危機!  世界一となったブラタク製糸にも、実は新たな危機が近づいていた。生糸の販売量の恐ろしいほどの減少である。1991年の1、000㌧台から以後漸減し、21年後の2012年には半分の500トンを割った。  その間、従業員も2、850人から916人と三分の一以下になっていた。  もっとも、これは同社だけの現象ではなかった。 ...

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