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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(237)

 総領事館に経済的援助を申しでたり、暴力沙汰を起こすものもでた。多くの会員が日本からきたとき泊った移民収容所に収容された。そして、1年少しで解散した。
 その出来事は正輝に自分がいまだに裁判の判決を受けていないことを思いださせた。子どもたちの出生届を役所に提出したことで国外追放から完全に解放されたと考えていたが、その後どうなっているのだろうか? 裁判はカメが歩くよりノロノロしていた。サンパウロ第一地区裁判所のマノエウ・トマス・カルバリャル判事の名簿の順に1日に三人の裁判を行うという案は実現しなかった。
 被告人はほとんどサンパウロ圏外に在住する。被告人に執行令状を渡すには、サンパウロの裁判所が各地の裁判所に送らなければならないのだが、令状の住所に住んでいない場合が多い。抑留されてから長い間たっているので、引っ越した者が多く、本人に届けるのに時間がかかりすぎた。
 正輝がいい例だ。1954年3月31日、サンパウロ第一地区裁判所のプリニオ・ゴーメス・バルボーザ判事は正輝の出頭をもとめて次のような令状をアララクァーラ司法区の判事に送った。
 「保久原正輝、黄色、41歳、両親、保久原忠道、タル、農業、沖縄生まれ、日本人、本地区(アララクァーラ)在住は1954年5月4日、午後1時、尋問のためクローヴィス・ビヴィラックア広場の裁判所に出頭のこと」
 この執行命令は4月5日、アララクァーラ第一公正役所で登録された。翌日、サンパウロ州アララクァーラ司法区のジョアン・ピーレス・カマルゴ判事は、部下に被告保久原正輝に知らせるよう命じた。その結果、部下は次のような調査を提出している。
 「当執行命令に関し、当市は保久原正輝被告について数々の処置を講じたにもかかわらず、手渡すことができなかった。当人はこの司法区には住んでおらず、調査の結果、現在サントアンドレ市、セナドール・フラッケル街891番地に居住している。子息保久原マサユキと同居し、洗濯業に従事している」
 この住所変更により、正輝のサンパウロ第一地区裁判所による召集令はサントアンドレ司法区裁判所に回された。そのため、尋問は1954年の終わりになった。勾留後も同じ住所にいた者たちは、第一地区裁判所で彼より先に尋問を受けることができた。

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