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《ブラジル》癌末期の父の前で結婚式=安心した父は翌朝、天国へ

式の直後のグラウコ氏と父親に話しかけるガブリエラ氏(16日付G1サイトの記事の一部)

 新型コロナウイルスの感染拡大抑制のため、結婚式など、人が集まるイベントの開催が禁止されている中、サンパウロ市内の病院で本当にささやかな結婚式が行われた。
 今月5日に行われた結婚式の会場はアレマン・オズワルド・クルス病院で、花嫁は、同病院に入院していた56歳の操縦士、グラウコ・パリェッタ氏の娘、ガブリエラ氏(22)だ。
 ガブリエラ氏の結婚式は5月の末の予定だったが、グラウコ氏が癌の末期で、5月の式には出席出来ないと判断した家族と病院関係者が、特別に院内での式を準備した。
 グラウコ氏の前立腺癌が見つかったのは昨年の4月。発見後2カ月で病状が急速に悪化するのを見た医師達は、化学療法や放射線療法など、あらゆる手段を尽くして治療を試みた。
 だが、治療効果は思わしくなく、今年の2月には肝臓にも転移。状況は更に複雑となり、家族には約1カ月前、「全ての手を尽くしたが、回復する見込みはない」と告げられた。3~4週間前からは、ターミナルケア専門のスタッフが病状を見守る状態になっていた。
 ガブリエル氏は婚約者のタレス・トニニ氏(26)と相談し、グラウコ氏も参加出来るよう、病院で結婚式を挙げる事を決めた。

 オズワルド・クルス病院は、癌患者、特に末期の患者の希望には可能な限り応える事をモットーとしており、結婚式やサンタクロースによる病室訪問なども実現してきたが、新型コロナウイルスが蔓延する中での挙式には、色々な意味の制限があった。
 だが、病院のスタッフも加わって進められた準備が整い、5日に挙式。上半身を起こした状態でベッドに横たわり、看護師達の手を借りて廊下を進む父親の傍らにはブーケを抱えた花嫁が寄り添う。
 式場となる部屋で待っていた花婿は、証人役の仲人が奏でる音楽の中、看護師達が導くベッドに続いて入って来た花嫁を迎え、牧師の前に。
 指輪の交換と宣誓を行う二人を、双方の両親と牧師、証人、看護師達が暖かく見守るという、本当にささやかな、だが、真心のこもった式は、最後の灯火が消える前の父親を心の底から慰め、安心させたのだろう。
 グラウコ氏は式直後、新郎新婦に「すばらしい式だったよ」と言葉をかけたが、眠りに落ちた後は目覚める事もなく、6日朝、天国に旅立った。
 式の2日前に父親がかつてないほど青ざめているのに気づいていたガブリエラ氏は、「花嫁姿を見て、安心して逝ったのね」と、回顧している。(16日付G1サイトより)

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