ホーム | 日系社会ニュース | 文協=初のオンライン全伯代表者会議=大半が停止、資金難に直面=「日系社会全体のためにも動いて」

文協=初のオンライン全伯代表者会議=大半が停止、資金難に直面=「日系社会全体のためにも動いて」

オンライン全伯会議の参加者

オンライン全伯会議の参加者

 ブラジル日本文化福祉協会(石川レナト会長)の第622回理事会が11日午後6時半から、Zoomを使った初めてのオンライン会議として、全伯主要日系連合会の代表者ら73人(最大時)が参加する形で開催された。コロナ禍による外出自粛が始まってから3カ月弱、ようやく全伯日系社会の主要団体代表が顔を合わせる会議が開催され、「活動停止、イベント延期で運営資金が枯渇し、財政難に」と異口同音に訴える声が3時間にわたって延々と出された。

 水本セルソ副会長が司会を務め、野口泰在聖総領事の挨拶に続いて奥原ジョージ副会長が、文協危機管理委員会を設立して会長及び7人の副会長らが毎週ビデオ会議を行い、会員特典制度「文協プレミアム」を4月から開始し、5月には初めてオンライン文協文化祭りを開催して3万人以上から視聴され以前とは違う客層を惹きつけた件、「ブラジル移民史料館」と「日本館」の維持管理が危機的になっていることから「アミーゴキャンペーン」と題したクラウドファンディングの支援キャンペーンを始めた件が報告された。
 また文協が主催して、20日20時から「国際日系デー」を祝うためのオンラインイベントをユーチューブとフェイスブック上で生中継する件も紹介された。
 まず西部アマゾン日伯協会(アマゾナス州マナウス市)から錦戸健会長が「当会はコロナで全ての活動を停止した。次の土曜日に会議を開いて今後を話し合う。こうして全伯日系団体が一堂に会して話し合うのは意義がある」と評価した。
 南日伯援護協会(南大河州ポルト・アレグレ市)の谷口浩会長は「活動は停止したが、日本語学校はオンライン授業を続けている。ヤキソバ宅配事業を始め、資金の足しにしている。若者に活動のバトンを渡すべく工夫している。今後とも日系非日系を問わず、日本文化を広めるイベントがあれば積極的に協力して日本文化普及に尽力する気持ちは変わらない」と熱く語った。
 汎ソロカバナ日伯連合文化協会(サンパウロ州プレジデンテ・プルデンテ市)の纐纈俊夫会長は「実質的に活動停止。ただし日本食デリバリーで収入を補てんしている。今年はアルヴァレス・マッシャード招魂祭が記念すべき第100回を迎えるのに、残念なことになった。なんとかオンライン開催の道を探っている。こうして全伯代表が顔を合わせるのは素晴らしいアイデアだ」と称賛した。
 汎アマゾニア日伯協会(パラー州ベレン市)の生田勇次会長も「こうして顔を合わせるのは良い試みだ。この機会に昨年アマゾン90周年に頂いた協力に感謝したい。コロナに打ち勝つために各日系団体が連帯、慈愛、隣人愛の精神を発揮すべき時。いずれ過ぎる。楽観して向きあいましょう」との心構えを呼びかけた。
 マット・グロッソ州代表に続いて南マット・グロッソ州のカンポ・グランデ日系文化体育協会の安慶名ネルソン・タモツ会長は「今年入植100周年記念イベントを8月18日に盛大に行うように去年から準備していた。でも難しい。全てキャンセルした。どう運営資金を集めて活動再開、存続させるかに頭を悩ませている」と苦悩の表情をみせた。
 バイーア州、ブラジリア、ミナス州代表に続いて、パラナ日伯文化連合会(リーガ・アリアンサ)の岩倉ファビオ副会長は、今年が同州と兵庫県との姉妹友好提携50周年の節目だが難しくなっていることに触れ、「傘下59団体が90日間活動を停止し、収入がなくなって困っている。だが今の所経費は払えている。我々の最大の問題は財政面でなく、いかに若者に日本文化を継承するかだ」と意気込んだ。
 このように約30の連合会が次々と窮状を報告し、オンライン会議開催に対して賞讃する一方で、「文協は自分のためのキャンペーンをやるだけでなく、日系社会全体のためにもっと動いて欲しい」という声も出ていた。
 石川会長は「皆さんの声をしっかりと聞かせてもらった。若者を活動にいかに取り組むかなど、コロナ後には以前より力強く活動できるよう対策を練り、今後の運営に活かしたい」と語って締めくくり、山下譲二副会長が「コロナ危機が若者への世代交代を後押ししてくれていると感じる。多くの有益な提案を頂いた」と閉会の言葉をのべて閉幕した。

□大耳小耳□関連コラム
    ◎
 オンライン全伯会議を取材して興味深かったのは、日本語学校に関する報告だ。「授業を中止している」ところから、「今までオンライン授業など誰もやってことがなかった。手探りで始めて、あまりうまくいっていない」という声、さらには「オンライン授業が好評で、『コロナ後も続けてほしい』という声まで出ている」との報告も。いきなり「オンライン授業を自宅から始めてほしい」と言われた教師も、さぞかし大変だっただろう。高齢の教師ほど対応が難しかっただろうと推察する。デジタル化を一気に後押しするコロナ禍は、いろいろな試練をコロニアに与えているようだ。

image_print