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特別寄稿=日系社会存続のためのヴィジョン22(22世紀に向かって)=日系社会の戦略的再構築・統合のための提言=サンパウロ市在住 足立操

6月に開催された初のオンラインブラジル全土日系団体代表者会議の様子

①日系社会の現状と問題点

1.「今、日系社会の存続が危うい!」。こう言うと「何をそんなバカな!」と思われる方が多数おられると思います。
 しかしながら、日系社会の現実を冷静に見つめ直すとリアルに日系社会の存続の危うさが浮かび上がってきます。みなさんの周りの身近にある日系団体を注意深く観察してみてください。このままでは存続が危ぶまれる団体があちらこちらに散見されると思います。
 その大きな要因は端的に言うと、1)財政問題(資金不足)と2)後継者問題(理事、職員を含む有能な後継者人材の不足)の2つです。
2.先ずは財政問題(資金不足)ですが、極論すれば現時点でサンパウロ援協以外の殆ど全ての日系団体は財政的に行き詰まっています。
 つまり、サンパウロ援協以外の日系団体には30年後、50年後、100年後の将来設計図を描く資金的な余裕はなく、青息吐息、自転車操業、その日暮らしに近い状態です。
 但し、サンパウロ援協とて決して安泰ではなく、現在、ブラジルの医療業界の地図は急激に大きく塗り替わっており、主たる資金源である日伯友好病院の経営次第ではサンパウロ援協の財政基盤が急激に大きく揺らぐことも懸念されます。
(ドル高レアル安を背景に豊富な資金を持つUnited Health、Rede Dor等の外資の参入がすさまじく、ブラジルの弱小病院はどんどん買収され、増築、改築、スタッフが総入れ替えされ、最新医療設備を備えたピカピカの新病院として生まれ変わり、病院間の生存競争は激化の一途を辿っており、近い将来、日伯友好病院の経営悪化が懸念されます)。
 そうなれば早晩、日系社会全体が総倒れ、総崩れ、消滅の危機に直面することになります。
3.後継者問題(理事、職員を含む有能な後継者人材の不足)は財政問題(資金不足)と表裏一体の関係にあります。
 つまり、日系団体は資金がないので職員に安い給料しか支払えない、従って有能な人材は高い給料を求めて日系の商社、銀行、メーカー等に就職、結果として日系団体の職員には有能な人材が集まりにくい。
 従い、喫緊の各種プロジェクト、或いは30年後、50年後、100年後を見据えた日系社会全体の将来設計図が描けない、日本政府含む日本側カウンターパート等とまともな交渉や議論、意見交換が出来る人材がいないという悪循環がずうっと続いています。
(今や外国語の素養として英語に堪能であることは必須要件ですが英語のできる人材がほとんど皆無状態)。
 理事に関してはこれまで主体的な役割を担ってこられた一世理事はほぼ全員が高齢化。一方、二世、三世理事の数は増えつつあるものの日系社会の活動に於ける実績は一世理事が敷いた路線を引き継いでいるのみで、成果は乏しく、その手腕、実力は未だ未知数と言わざるを得ません。
4.先般、日本財団の助成金を得て、人文研が日系社会全体の実態調査を行い、その結果、ブラジル全土に大小織り交ぜて500程度の日系団体が存在し、それぞれが苦労しながらも、何とか活動を継続している旨の報告がなされました。
 この報告を聞いて筆者は、このまま500の日系団体が従来通り、バラバラに活動を続けていけば、これまで手弁当で必死に活動を支えてきた一世人口の減少に伴い、近い将来、大半の日系団体が財政難(資金不足)から共倒れ状態になり、その活動を休止,停止、或いは廃止せざるを得ない状態に追い込まれるのではないかと直感的に危惧しました。
 つまりは日系社会の衰退、消滅です。

②ヴィジョン22(500の日系団体を集約・統合する新組織の創設)

1.22世紀に向けて日系社会が隆々と継続・発展し続けていくためには今、何をなすべきか、何をしなければならないか。以下、具体的に私案を提示します。
 大切なポイントは3つで、1)ブラジル全土に散在・現存する500程度の日系団体を一つの新組織(非営利団体)に集約・統合すること、
2)新組織(新団体)は「ディヴィジョンカンパニー制」(部門別会社制度)を採用すること、
3)理事の権限は法規に準拠しつつも名目上の必要最小限にとどめ、実務上の大半の権限は優秀な職員である事務局長及び各部門の部長、課長に付与し、部門ごとに競わせ、部門ごとの決算・評価を行うこと、です(但し、対外的には部門別決算を合算した決算を公表します)。
 つまり、この新組織(新団体)は商社機能に近い機能を持つ、極めて優秀な頭脳集団組織を目指しています。このディヴィジョンカンパニー制度は日本を代表する大手企業(トヨタ、伊藤忠商事、武田薬品工業、ソフトバンク等)が採用している制度で業務内容が多様化し、広範多岐に亘り、事業活動拠点が広範囲に分散し、全体として巨大化、肥大化した組織を束ねるには最適な制度です。
2.現在、ブラジル日系社会は大まかに言うと5つの日系社会がブラジル全土に点在し、それぞれに有力者を筆頭にヒエラルキーが形成され、それぞれ、独自の判断で独自の活動を行っています。
 極論すればブラジル日系社会は衰退しつつも群雄割拠の状態です。具体的には「サンパウロ日系社会」「パラナ日系社会」「アマゾニア日系社会」「リオ日系社会」、「ポルトアレグレ日系社会」の5つです。

 皇室や日本政府要人のご來伯、或いは日系社会全体に関わる重要案件が持ち上がった時、日本政府として、一体、5つの日系社会の中でどの日系社会とコンタクトしたらよいのか、戸惑うこと多々あり、と伺っています。(先般の日本ブラジル移民110周年記念式典への真子内親王殿下のご臨席をめぐってパラナ日系社会とサンパウロ日系社会が綱引きを演じたことは記憶に新しい恥ずかしい出来事でした)。
 このようなバラバラ状態では日本政府〈或いは日本政府に代わる大手財団〉の信頼を得て、強力な支援を受けることなど、到底無理な話です。一つに纏まることさえできない日系社会に対して誰も大きな支援などしてくれるはずもありません。
 日系社会は今、早急に一つに纏まる必要があります。日系社会を一つに統合する必要があります。今こそ日系社会の各団体が「小異を捨てて大同に就く」必要があるのです。
3.新組織(新団体)に関して具体的に述べると、まずは大きなスキーム(枠組み)としてサンパウロ日系社会を本部(ホールディング)とし、他の4つの日系社会を支部とする新組織である非営利日系団体(仮称;ブラジル日本友好親善文化教育福祉交流協会)を創設します。
 そして本部の組織は会員制をベースに例えば評議員50名、理事25名、事務局(事務局長)(事務局傘下に人事、経理、財務、法務、広報等、全ての必要な管理部門を配置し、本部及び支部の全ての部門の管理業務を一元管理)、その下に「ディヴィジョンカンパニー制」(部門別会社制度)を取り入れる。
 例えば【医療ディヴィジョン(部門)】(日伯友好病院、サンタクルス病院、自閉症児療育施設等)、
【福祉ディヴィジョン(部門)】(憩いの園、子供の園、希望の家、サントス厚生ホーム、あけぼのホーム、さくらホーム、スザノイペランジャホーム等)、
【日本文化・日本語ディヴィジョン(部門)】(文協、熟連、各生け花協会、各茶道協会、日伯文化連盟、ブラジル日本語普及センター等)、
【対日交流ディヴィジョン(部門)】(県連、県人会等)
【広報ディヴィジョン(部門)】(ニッケイ新聞等)等々、必要なディヴィジョン(部門)を設置してサンパウロ日系社会の全ての日系団体を網羅し、包含した組織とします(将来的には必要に応じて部門内で重複する事業所の統廃合を行なっていきます)。
4.ディヴィジョン(部門)のトップ(部門長)は理事会副会長が兼務するが、権限としては大きな方針の決定と助言にとどめ、配下の部長(及び職員)に実務上の大きな権限と責任を持たせ、日々の実務は事務局長の統括の下、部長が部下(職員)を陣頭指揮しながら、遂行していきます(定款或いは職務権限規程にも事務局長以下の部長、課長等の幹部職員の権限と責任を明確に規定します)。
 部門別決算と評価がなされますのでディヴィジョン(部門)の部長は他ディヴィジョンの部長と絶えず、競い合い、切磋琢磨しながら、日系社会発展のために誠心誠意、業務を遂行していくことになります。そして年度末にはディヴィジョン毎(部門毎)に決算を行い、成果を評価します。
 一方、対外的には本部の全てのディヴィジョン(部門)の決算及び支部の決算を合算した決算を公表します。
5.4つの支部は本部の組織に倣って、同様に「ディヴィジョンカンパニー制」を取り入れ、いくつかのディヴィジョン(部門)から成る支部組織を創設します。そして地方の全ての日系団体をこの支部組織内に集約し、網羅します。
 この組織では支部長(本部の理事会副会長が兼務)がトップで配下に部長(職員)と職員を配置し、実務を遂行します。支部長と部長の権限については本部の部門長及び部長のそれに準じるものとします。

③財政問題(資金不足)解決のための方策

昨年の県連日本祭りで披露されたレプレーザ文協の華やかな阿波踊り

 上述したように新組織(新団体)を創設し、有能な職員にしっかり働いてもらい、民間企業並みの給料を支払うには運転資金が必要です。又、各部門が福祉活動、文化・教育活動、交流活動、イベント開催等、さらには各種プロジェクトを遂行するにしても資金が必要です。さらには4支部への助成金も必要になるでしょう。
 これら、諸々の大きな経費を新組織が自前で捻出できるのであればそれに越したことはないのですが、当面は医療部門からの利益のみでは新組織全体の経費を賄うことは非常に難しいと思われます。
 従い、独り立ちできるまでの間は日本政府(或いは大手財団)からの助成金を拠出していただく制度(仕組み)を構築する必要があります。とは言っても、まずは新組織として自助努力が第一義ですので以下、唯一の稼げる部門である医療部門の経営戦略について私見を述べます。
 一番のキーポイントは医療部門(日伯友好病院、サンタクルス病院、アマゾナス病院等)の経営トップ(病院長)には医師ではなく、民間企業出身の百戦錬磨の経営のプロフェッショナルを据えることです。この経営トップには高額な報酬を保証する代わりに、毎年、ノルマを課し、必ず、一定額の利益を捻出してもらいます。
 もし、ノルマを達成できない場合は即座に別の優秀な経営者に交代させます。このように病院長には弛まぬ経営努力を続けることにより、盤石の経営基盤を構築し、しっかりと黒字を出し続け、新組織全体を資金面できっちりと支えられる経営体制づくりを行なってもらいます。
 さらに複数の日系病院の連携・統合により、有形無形の様々なメリットが考えられます。共同購買(医薬品、医療器具、備品等)によるコストダウン、共同使用(最先端高級医療機器、手術用ロボットDa Vinci等)による無駄の排除と効率的な資機材の運用、電子カルテの導入、AI医療診断システムの導入等(INFERVISION) 。
 さらに大きなメリットは医療保険会社との医療費交渉に於いては単独交渉の場合に比べ、圧倒的に有利な条件で交渉が行えるということです(又、将来的には医療保険の取り扱いも検討すべきと考えます)。これらのメリットが総合的に作用し、相乗効果を生み、結果として黒字決算が期待できやすくなります。
 しかしながら、当面は上記医療部門の利益のみでは新組織全体の運営費を賄うことは不可能ですので、不足分に充当するため、必要な相応の助成金を日本政府(或いは大手財団)から、拠出していただく方策をとる必要があります。
 それには日本側から見て、確かに助成金を拠出するに相応しいプロジェクト、仕事を新組織が行なっているという認識を日本側にしていただく必要があります。具体的には日伯政府間レベル案件への参画、日本語普及事業・日本文化の普及伝搬事業の推進、及び日本企業ミッション、学術ミッション等のアテンド並びに共同プロジェクトの企画・立案・推進等、さらには在日ブラジル人との連携及び支援事業の企画・立案・推進等々が考えられます。
(いろいろな事案を進めるに際し、ニッケイ新聞の活用と連携は絶対に欠かせません。日系社会に於ける唯一の広報機関であるニッケイ新聞を利用しない手はありません)。
 これらの日伯双方にとって有益なプロジェクトや事業を日本政府に代わって(或いは協働で)遂行するという名目で日本政府(或いは大手財団)から、一定期間、毎年、一定額の助成金(当初は100億円程度)を貰えるような制度を創設します。
 その際、出来れば新組織を日本政府のブラジルに於ける公的な出先機関というような位置づけが獲得できればベストです。そして将来的には在ブラジル日本国大使館、在ブラジル日本国総領事館、在ブラジル日本国領事館、JICA等の日本政府の出先機関の公務の一部を受託(或いは協働)して行なえるような高度な組織にすべきと考えています。
5.上記、日本側から見て非常に重要な事業のひとつと思われる日本語普及事業を積極的に推進するための私案を提示します。
 具体的には日本からの助成金を活用して、現在、日伯文化連盟、ブラジル日本語普及センター、地方の日本語教室等々に分散している教室を組織上、統合一本化し、教科書も統一し、経営を一元管理しながら、大サンパウロ圏内に100程度の日本語教室(各教室100名の受講生)を開講し(将来的にはブラジル全土の主要都市に日本語教室を展開していきます)、教師にもしっかり自活できるだけの給料を払い、生徒には相応の授業料を払ってもらい、優秀な卒業生には日本企業への就職が約束されるというような一貫した取り組み、仕組みをサンパウロ商工会議所とも連携しながら、構築していくことが肝要と考えます。
 この事業は当初は日本からの助成金を活用することになりますが、将来的には運営費を授業料で賄える自立した事業に発展させることが可能であると考えています。
 又、副教材として唯一の邦字新聞であるニッケイ新聞の活用と連携も当然のこととして視野に入れるべきでしょう。ニッケイ新聞とコラボレーションすることで日本語普及事業には無限の可能性が広がっていくことでしょう。
 上述した日本側からの助成金の拠出を実現するために絶対に必要不可欠なのが有能な職員です。職員の採用に際しては民間企業と同様に広く公募制とし、ガラス張りで公明正大な採用試験を実施し、高度な業務に耐えうる有能な人材を雇用すべきです(実力のない縁故職員や理事のご機嫌を伺うゴマすり職員は必要ありません。必要なのは自ら考え、企画立案し、提案し、実行できるポジティブでクリエイティブな人材です)。
 彼らには信賞必罰をベースに日系企業社員と同等の給料を保証しますので、特に事務局長、部長、課長クラスには一流大卒で外国語として日本語以外に当然、万国共通語である高度な英語の素養も求められます。彼らには日本側カウンターパートと対等に渡り合い、交渉し、議論し、意見交換し、日系社会及び日伯双方にとって有益なプロジェクトを企画立案し、推進する能力が求められます。
 事務局長、部長、課長クラスに高い給与を保証し、大きな権限を与えることにより、日系社会の中から、有能な人材が新組織に集まり、その能力を最大限発揮してくれることにより、結果として新組織の活動は常に躍動感に溢れた、チャレンジングでポジティブなものになることでしょう。
 有益なプロジェクトが成功するたびに日伯双方の関係はより緊密になり、日本側からすれば次のプロジェクトへの期待がさらに高まり、助成金を拠出しやすくなり、この助成金を使ってさらに有益なプロジェクトが遂行できるという好循環が生まれていきます。

ブラジル全土の主要日系連合会の代表者ら73人(最大時)が参加した

④日本政府との交渉窓口(日本国大使館、総領事館、領事事務所、JICA等)

 ここで大切なことは2つあり、
1)交渉窓口が新組織本部の理事会会長に集約、一本化されることにより、双方の意思伝達が迅速、簡潔になり、非常に仕事がしやすくなること、
2)実務レベルに於いては権限委譲された有能な職員(事務局長、部長、課長)が前面に出て責任を持って実務を遂行することにより、大幅に仕事の能率と質の向上が見込まれることであります。以下、具体的に記載していきます。
 日本政府との交渉窓口は当然のことながら、新組織本部の理事会会長がその任に当たることになりますが、窓口を一本化することにより、これまで日本側から見てどの日系社会とコンタクトすべきか迷っていたような事案も躊躇なく、まずは理事会会長に届けることにより、その後は会長(或いは事務局長)から適切な部門、或いは支部に転送され、そこで適切にスムーズに処理、対応することになります。
 新組織全体に関わる事案については一義的には理事会会長が最高の権限と責任を付与されて、理事会執行部(事務局長も意思決定に参画)と協議しながら、基本方針の策定等、組織としての対応をしていくことになります。

 一方、実務レベルに於いては有能な職員である事務局長、部長、課長に大幅に権限を委譲し、彼らが日本側カウンターパートと対等な立場で議論し、意見交換しながら、具体的なプロジェクトの企画・立案・推進等、全て責任を持って遂行していくことになります。
 日本政府以外の公的機関及び第三者機関等との交渉及びプロジェクト遂行に於いても上述通りの対応をとるものとします。

北はベレン、マナウスから、南はポルト・アレグレまで

⑤新組織「ブラジル日本友好親善文化教育福祉交流協会(仮称)」はなぜ、今、必要か?

 ブラジル日本移民112年が経ち、今、500の日系団体はそのすべてが「金属疲労」ならぬ、「組織疲労」を起こしています。もともと、自然発生的に次々と設立された日系団体ですが、前例踏襲で金太郎飴よろしく、全て似たような組織(会員、総会、評議員会、理事会、配下に職員)で全ての権限は会員、総会、評議員会、理事会が握り、職員はただ命じられるままに機械的、受動的に与えられた職務を遂行する(逆に与えられていない職務は絶対に遂行しない)、残念ながら、これが現存する500の日系団体の事務方の実態であります。
(定款には会員、総会、評議員会、理事会の権限と責任は規定されておりますが職員に関する規定は一切、記載されておりません。つまり、事務局長の権限と責任すら規定されておらず、職員の立場は極めて脆弱且つ無責任な状態です)。
 評議員、理事である一世の皆様が矍鑠として元気で活動され、会員からの物心両面に於ける支援が十分に期待できた20
年以上前の時期はこのような組織でも十分に機能し、活動を継続していくことが出来ました。
 ところが、今や一世人口は高齢化の進展とともに大幅に減少し、2つ、或いは3つの日系団体の評議員、理事を兼務される方々の平均年齢が75歳以上(大きな日系団体の場合)となり、判断能力の衰え、IT、SNS時代に於ける実務遂行能力の欠如は歴然としており、このような高齢化した役員の方々が陣頭指揮・運営される組織がこの先、30年、50年、100年と隆々として存続していくはずがありません。
 今こそ、22世紀に向けて、日系社会がブラジル社会に於いて一定の存在感と影響力を保ちながら、30年、50年、100年と存続し続けられるような新組織(新団体)を人為的、戦略的に創設する必要があるのです。未だ、気骨のある一世の方々が生存されている、今こそが最後のチャンスなのです。
 斯かる新組織を後世にレガシーとして残すことこそ、数少ない一世の方々に託された最後の大切な、大切な使命ではないでしょうか。これは日本政府含む、あらゆる日本側公的機関との友好関係及び人脈を長年に亘って培ってこられた一世の方々にしか出来ない日系社会の命運を賭けた大プロジェクト(大事業)なのです。
4.ブラジル日系社会は日本が海外に持つ日系社会の中では群を抜いて断トツに大きな日系社会であり(190万人の日系人、政界、法曹界等への人材進出、誠実・勤勉・正直等の社会的信用力)、110年余りをかけて先達たちが築き上げてきた日系社会の社会的信用力を日本側(日本政府、日本の各業界等)はもっと、もっと、利用、活用すべきと考えます。
 しかし、これまでは残念ながら日本側と日系社会の関係は儀礼的、表面的な関係に留まっております。その原因はズバリ言うと一つに纏まり切れず、5つの日系社会に分散し、バラバラに機能してきた日系社会の実力不足が主たる原因です。
 これをもっと、深く掘り下げた、中身のある、実質的で対等な関係に高めていく必要があります。そのためには現在の日系社会が根本的に大きく変わる必要があります。一つにまとまる必要があります。
 つまり、一刻も早く、既述した新組織を創設し、この高度で実力を伴った頭脳集団である新組織こそが日本側のあらゆる要望、提案、交渉等の窓口、受け皿になるのです。不幸にして、今までの日系社会はこのような受け皿になりうる一元化された実力(能力)ある組織ではありませんでした。
5.繰り返しになりますが、このままの状態で500の日系団体をバラバラに存続させていくと、一世人口が消滅した段階で間違いなく、大半の日系団体が衰退し、遂には消滅していきます。その段階で慌てて新組織を創設しようとしても間に合わないし、出来ません。
 そもそも、新組織を創設しようというアイディアを出す奇特な日系人も現れないと思います。なぜなら、彼らにとって飽くまでも母国はブラジルであり、ブラジルに於いて日本語、日本文化、日系社会をどうしても普及・存続させなければならない理由が見当たらないからです。
 だからこそ、今、一世を中心にして500の団体を統合する新組織(新団体)を創設し、この新組織を二世、三世、四世等の後継者に引き継ぎ、最大限に活用してもらいながら、100年後を見据え、日本語、日本文化、日系社会の普及・存続のミッション(使命)を彼らに託していくのです。

コロナ禍で財政問題を抱えたと訴える代表者ら

⑥500の日系団体執行部及び日系社会の皆様へ

 これまで長々と私見を述べてまいりましたが、これも偏に112年続いた日系社会を衰退、消滅させたくないとの筆者の切実な気持の吐露の結果だとご寛恕願います。又、記述内容によっては日系人の方々に対し、失礼な表現も散見されるかもしれませんが、これも新組織の創設が「焦眉の急」と認識する筆者にとっては、一世の方々、現存する日系団体執行部の方々、さらには日系社会の全ての皆様に拙なる私見をご理解、納得いただくための方便であり、ご寛容の程、お願いします。
 現存する日系団体の執行部の方々に於かれましては、日系社会の現状を冷静に且つ、しっかりと認識していただき、このブラジル社会で今後、30年、50年、100年と日系社会が存続していくための抜本的な方策として、今、何をなすべきか。是非、真剣に考えていただきたいと思います。そして、画期的で素晴らしい代案があれば是非とも提示し、実行していただきたいと思います。
 一方、万一、拙なる私見にご賛同いただけるのであれば「小異を捨てて大同に就く」の精神で周囲を説得し、賛同者を増やしていただきたいと思います。そして一刻も早く、日系社会が一致団結し、一丸となって新組織(新団体)の創設に向けたムーブメント(運動)を起こすべしと考えておりますので、継続的なご支援をお願い致します。
 現存する日系団体執行部の諸兄にはどうか、くれぐれも、自らが関わる団体のみの存続を考えるのではなく、大所高所に立った視点から、日系社会全体の存続のためには今、何を、どうしなければならないのか、グローバルマインドを持って(国際的観点に立ち)、将来に禍根を残さぬよう、30年先、50年先、100年先を見据えた公正な判断をしていただきますよう切にお願いする次第です。
 コロナ災禍の真っただ中ではありますが、ここブラジル日系社会が22世紀に向けて隆々として存続・発展し続けていくことは日伯関係の深化と拡大を目指す安倍晋三首相率いる日本政府の大方針とも合致し、さらには日本国の国益にも適っており、22世紀への日系社会の生き残りを賭けて、今こそ、新組織(新団体)の創設を実現すべく、日本政府も巻き込みながら日系社会が総力を結集し、大同団結すべき時であると考えます。
《ブラジル日系社会はひとつ》

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