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《ブラジル》Anvisa=コロナバック治験を一時中断=正式通達前にメディアへ漏洩?=サンパウロ州政府「政治的な策略では」

コロナバック輸入に関して発表した9日のドリア・サンパウロ州知事(左)とコーヴァス・ブタンタン研究所所長(Governo de São Paulo)

 国家衛生監督庁(Anvisa)は9日夜、中国のシノバック社が開発中の新型コロナウイルスのワクチン「コロナバック」の治験を一時中断したと発表したと10日付現地紙、サイトが報じた。
 コロナバックは治験の最終段階に入っているワクチンの一つで、ブラジルでは1万3060人が治験に参加。8州が購入に関心を示している。
 Anvisaからの治験中断命令は、治験責任者のサンパウロ市ブタンタン研究所に通達されないまま、9日晩メディアがいきなり報道した。治験者の1人に「重篤な事態」が起きたための中断で、ワクチン接種との関係が明らかになるまでの暫定処置だ。
 現地紙サイトによれば「重篤な事態」とは10月29日に起きた33歳の治験者の死亡のこと。ブタンタン研究所所長のジマス・コーヴァス氏は、治験者が死亡した件は6日にAnvisaに報告したとし、ワクチンまたは偽薬接種から25日後に亡くなっており、接種直後にも特別な副作用はなかった事から、ワクチン接種と死因は無関係と報告したと報じられている。
 同所長は同時に、「治験継続の件で話し合いたい」という連絡も「治験中断を考えている」という通達もなかったと明言。治験者が接種されたのがワクチンか否かや、治験者の個人情報は明かせないが、事前の会合も通達もなく治験中断が発表されるのは極めて異例で、「今回の措置に驚いている」と語った。Anvisaとのビデオ会議は10日の朝になって行われたという。

 コロナバックはサンパウロ州政府が治験の実施や購入を決めたワクチンで、連邦政府にも同研究所を通じた国内生産のための資金援助やワクチン購入を求めていた。
 保健省は10月にワクチン購入や研究所への支援の意思を伝えたが、翌日にボルソナロ大統領が約束を破棄させ、新型コロナの感染拡大抑制や安全性の問題以上に政治的な意図が働いているとの憶測が流れた。ボルソナロ大統領とサンパウロ州のジョアン・ドリア知事は年のはじめから、新型コロナ対策で対立している。
 大統領は治験中断を喜び、10日にはソーシャルネットワークに「また一つ、ジャイール・ボルソナロが勝った」と書き込んだ。この言葉は、支持者から「コロナバックを買うのか」と尋ねられ、「死や障害、異常。これがドリア氏がサンパウロ州民に強制しようとしている予防接種だ。大統領は予防接種は義務化すべきではないと言っている」との言葉の後に記したものだ。
 コーヴァス・ブタンタン研究所所長やドリア知事は10日も、Anvisaが治験中断の理由とした重篤な事態はワクチンとは無関係との認識を再確認。シノバックも「安全性には自信を持っている」との声明を出した。
 サンパウロ州政府内では、治験中断はコロナバックの承認を遅らせるための策略との見方も出た。だがAnvisaは10日、9日に受け取った報告書では予防接種との関係が明確に否定されたと言えず、外部の専門家の判断も添えられていなかったため中断を決めた事、メディアが報道する半時間余り前にメールで通達した事などを説明した。

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