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《ブラジル》コロナ禍CPI=ANVISA長官が大統領に反旗=政権に不利な証言続々=「日系女医が影の保健相」疑惑のヤマグチ医師召喚か

トーレス長官(Jefferson Rudy)

 11日、上院のコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)に、国家衛生監督庁(ANVISA)のアントニオ・バーラ・トーレス長官が召喚された。トーレス長官はこの席で、かねてから疑惑視されていたボウソナロ大統領が保健省とは別に持っていたとされる委員会の存在を指揮していたのがクロロキン推奨派の医師ニーゼ・ヤマグチ氏であると指摘したのをはじめ、ボルソナロ大統領のコロナ対策を真っ向から否定した。12日付現地紙が報じている。
 コロナワクチンの使用許可などを出し、世間の注目度も上がっているANVISAは、現在の理事の大半がボルソナロ大統領に選出されていることから「連邦政府寄り」の印象を持たれがちだった。だが、この日のトーレス長官の答弁は、ボルソナロ大統領のコロナ対策に真っ向から反抗するものだった。
 トーレス氏は席上、ANVISAは「連邦政府から独立した機関」であることを改めて強調。その上で「監督庁が行う判断は、あくまでも技術的な観点によるものだ」とした。
 同長官は、「ボルソナロ大統領との関係は良好だ」としつつも、「私たちはあくまでも科学の範囲内で判断を行う」とし、ボルソナロ氏の唱える反隔離や「ワクチンを使わずに集団免疫確保」など、俗にいう「否定主義(ネゲーショニズム)」的な考えには同意しない姿勢を示した。大統領が頻繁に行っていた、マスクなしでの群衆を伴う散歩などに対しても、「不適切なものだ」と言い切った。

 最も注目が集まったのは、トーレス長官が保健省とは別の「影の委員会」の存在について触れたときだった。この委員会の存在は4日に行われたCPIで、ルイス・エンリケ・マンデッタ元保健相が指摘して以来、注目されている。
 トーレス長官はその存在を否定せず、その委員会を牽引していたのが、ニーゼ・ヤマグチ医師であることをあきらかにした。ヤマグチ氏は昨年4月、マンデッタ氏が保健相を解任された際、「次期保健相の有力候補」として名前が挙げられ、話題となった人物だ。
 ヤマグチ氏はその時から、クロロキンを推奨する医師として知られていたが、トーレス長官によると、ヤマグチ氏はクロロキンをコロナ感染症の治療薬として認めさせるべく、認証規定を変えるための報告書をANVISAに提出していたという。
 同長官は、「クロロキンがコロナ治療薬として推薦できないことは種々の研究結果でもあきらかだ」として、ヤマグチ氏の要請を認めなかったことをあきらかにした。
 トーレス長官はまた、「いかなる薬やワクチンでも、大統領から承認を強要されたことはない」と語り、緊急使用を却下したスプートニクVも同じであるとした。
 同CPIではトーレス長官の発言後、ヤマグチ氏の行動を問題視する声が急速に高まっており、オマール・アジス委員長が12日に同氏を召喚する意向を表明。同氏召喚の有無は13日に決まる見込みだ。
 
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