《ブラジル》コロナ禍CPI「クロロキン女隊長」矛盾連発=パズエロ証言と噛み合わず=アプリ削除の真相は闇の中=同薬擁護発言に上議反発
上院でのコロナ禍に関する議会調査委員会(CPI)は25日、保健省のマイラ・ピニェイロ氏を召喚し、喚問を行った。「クロロキン女隊長」の異名をとる女医の証言はエドゥアルド・パズエロ前保健相の証言との食い違いが多く、クロロキンに関する見解でも委員から矛盾を指摘される光景が見られた。25日付現地サイトが報じている。
マイラ氏は証言の冒頭で、「このCPIの姿勢には偏りがある。マスコミが一方的な印象を操作している」と批判した。これに対し、レナン・カリェイロス報告官は、「別にこれは(第二次世界大戦後の)ニュルンベルク裁判ではないのだから」となだめた。
マイラ氏は自身の立場に関して、「パズエロ前保健相は辞任後もなお、保健局に籍を置いている」とした上で、「ボルソナロ大統領から特に圧力を受けたことはない」と、パズエロ氏が先週行った証言を繰り返した。
だが、マイラ氏は「保健省では、ボルソナロ大統領が主張するような集団免疫の手段をとることは賛成していない」としながらも、学校に関しては集団免疫の考えに肯定的で「コロナ禍での閉校には反対だ」と答えた。
同氏は続いて、1月14日に起こったアマゾナス州マナウスでの医療崩壊の件について答えた。同氏によると、医療崩壊前の1月3〜5日にマナウスを訪れ、視察を行ったが、その際には酸素不足などの報告は受けなかったという。
パズエロ前保健相はマナウスの医療崩壊の危機は1月10日に連絡を受けたと語っていたが、アマゾナス州保健局からは、「1月8日に連絡を取っている」と否定されていた。
マイラ氏はまた、同氏が担当していたとされるアプリ「TrateCov」に関し、「自分が作ったものではなく部下が作ったものだ」と説明した。パズエロ氏は先週、マイラ氏が作ったと語っていた。
このアプリはマナウスでの医療崩壊が起こる直前に運用開始され、マナウスでは同アプリに明記されていた「クロロキンによる早期治療」などに従って、クロロキンが大量に投与されたが、マイラ氏は「マナウス訪問の際も、市内の保健機関でクロロキンによる早期治療を勧めたりはしなかった」と語った。
パズエロ氏は先週、1月21日に同アプリが運用停止されたことを「ハッキングされたから」と語っていた。だが、マイラ氏は「ハッキングとはサーバー内部に侵入することであり、今回は素人の手口でそれはない。1月20日に、あるジャーナリストが不適切な形でデータの一部を選び出して、文脈から外れた形でネットに公開したから、運用を停止させた」と語るなど見解の不一致が目立った。
「本当に患者の命を救うものだというならば、なぜ、アプリを停止したのか。また、なぜ再開しなかったのか」とオマール・アジス委員長が問いかけたが、それに対する答えはなかった。
マイラ氏は自身が推奨役とされるクロロキンに関しては、「治療薬としては扱えないが、初期症状には良い。それは多くの研究でも証明されている」と擁護した。だが、委員たちは「世界保健機関(WHO)や国内の学会などは勧めていないではないか」と反論。さらに「クロロキンは抗ウイルス剤」と発言したマイラ氏に対し、医師でもあるオットー・アレンカール委員が「いかなる研究でも抗ウイルス剤として扱っていない」と誤りを指摘する場面もあった。
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