ホーム | 文芸 | 連載小説 (ページ 4)

連載小説

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(30)

 こうして樽、ウシ、正輝は後に俗によばれる「構成家族」という形でやってきた。ブラジルの移民政策はこちらに腰かけ的なデカセギでではない永住する家族を優先するものだった。しかし、日本の習慣として長男は家からを出したくないという考えがあり、ごく一般的なかたちの家族移民はむずかしかった。また、移民してやってきた日本人には短期間に、できる ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(29)

 しかし、なによりも敬意を表されるのは、親の代であれ、子の代であれ長兄だった。標準語では長男、そして、沖縄の方言では嫡子とよばれる。日本の家族、そして沖縄の家族の家系の存続は彼らの双肩にかかっていた。長男が継いだ家の権利はその長男、そしてまたその長男が次々、引き継いでいく。習慣的に長男は生まれながらの後継者だということは議論の余 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(28)

 興味深いことに、外交面で日本は30年間の二つの戦争に勝ったことで、他の強国と肩を並べるようになった。1914年8月3日にドイツがロシアとフランスに、そして、翌日、英国がドイツに宣戦布告したいわゆる第一次世界大戦に乗じて、日本はドイツにアジアの海洋から戦艦の退去を要求した。それを拒否された数日後、ドイツとの戦闘を決定した。  9 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(27)

 その規則にそうために寺内正毅首相が音頭をとり、すでにサンパウロ政府と交渉中だった東洋移民会社と、当時活発に移民事業にとりくんでいた南米移民を合併し、海外興業株式会社(KKKK)を設立した。それは、日本が国家的事業としてブラジル移民をあつかいはじめた第一歩だった。それ以後、移民問題は政府が取り扱うことになった。  結果は目にみえ ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(26)

 そして1908年6月18日、笠戸丸がサントスに入港した。ブラジル初めての正式な移民が下船したのだ。781名の契約労働者と12人の自由渡航者だった。793人の先駆者のうち324人が沖縄出身だった。1914年まで9回にわたってサントスに着いている。総計1万4892人で、771人が沖縄生まれの人間である。  この陰には、移住事業を盛 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(25)

 1883~1890年には36万7000人の百姓が税金の滞納で、土地を没収された。  1884~1886年には生産可能な農地の7分の1が抵当としてとりあげられた。  金持ち地主は競売により没収された土地を買占め、その地所を区画に分け、むかしの借地のような形で農産物を栽培させた。1883~1908年まで農産地の借地の率は37%から ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(24)

 彼はいつも競馬場にいた。ある物ない物すべてを賭けていた。動産、不動産、すべての財産を賭けごとにつかい、借金だけが膨らんでいった。そして家族まで失ってしまった。  それは長男である哲夫の将来に大きく影響した。沖縄の習慣に従い、長男としてこの地にとどまり、ブラジル移住を断念しなければならかった。家名をひき継ぐということは父の借金を ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(23)

 しかし、正輝、その家族、隣近所の人、新城の村、沖縄全土の人々がどんなに愛国心をもっていたとしても、島を容赦なくおそう自然の脅威、あるいは政府の性急すぎる社会的、経済的変革のあおりを受けて、それが正当か否かは別として、施行された土地分割や生活手段の変わりように耐えることができなかった。それは辛抱強い、運命をあまんじて受ける沖縄人 ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(22)

 ときには、ご先祖さまは家族が抱えている問題はすべて見通しで、家族の対応はその問題に即しているからそのままつづけるようといって、みんなを安心させた。  学校では当時の他地方の日本人の子どもと同じように、天皇制の重要性をならい、まず、天皇の神性を浸透させるために天皇崇拝が欠かさずおこなわれた。  天皇制政府は八世紀にはじめて日本の ...

続きを読む »

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(21)

 日露戦争は1904年2月10日、にはじまった。対戦は朝鮮と中国の地で、海上では日本と朝鮮の間の対馬海峡で火蓋がきられた。ロシア軍は朝鮮を侵略した。日本海軍はロシアの手中にあった旅順を攻めた。地上では日本陸軍はまず、中国の遼東半島を、そして3ヵ月で旅順を手にした。日本軍は遼東半島からロシア軍を北へ北へと撤退させていった。最終的勝 ...

続きを読む »