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日本の水が飲みたい=広橋勝造

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(32)

ニッケイ新聞 2013年10月26日 「私がブラジルに着いた日、ジョージさんが強盗から救ってくれたんです」 「へー、そうだったのですか・・・」 「西谷さん、ここからトメアスまで何時間くらいかかるのですか?」 「昔はトメアス配耕地からサンパウロまで、うまくいって四日かかりましたが、今回の旅はサンパウロから北に一千キロ離れた首都のブ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(31)

ニッケイ新聞 2013年10月25日  西谷が驚いた顔で、 「えっ、今はバスが運行されているのですか! で、そのジョージさんの友人とは旅行社の方ですか?」 「いえ、刑事時代の相棒で、二年前までサンパウロ州の小さな町の署長をしていた奴です。如何したことか、今は、連邦警察の北方面の副司令官になっているんですよ」  西谷が目を丸くして ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(30)

ニッケイ新聞 2013年10月24日 「仏壇です。大仏堂で特別安くしてくれました。よろしいですか?」 ジョージは、今更、仏壇を外させる勇気はなかった。 「かまいません」そう言ったジョージが、 「中嶋さん、ちょっと、お願いがあるんですが」 「どうぞ」 「実は、拝んでもらいたいものがあるんです」 「なにをですか?」 「刑事時代の亡く ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(29)

ニッケイ新聞 2013年10月23日  中嶋和尚は、この法要の謹行により、お『釈迦』さま直々の免状と不思議な力を授かった。 「中嶋和尚、ご苦労さまでした。お茶を用意しております。こちらヘどうぞ」西谷の顔が前よりも明るくなっていた。  法要を始める前よりも頬がくぼんだ中嶋和尚だが、一回り大きくなった様に、西谷は思った。 「不思議な ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(28)

ニッケイ新聞 2013年10月22日  中嶋はジョージのアパートを出ると直ぐに方向が分からなくなった。数珠を左手に掛け、立ち止まり、目を瞑ると今まで経験した事がない自己暗示の幻覚が現れ、聴覚や嗅覚も驚くほど鋭くなった。  中嶋は、科学万能主義者では絶対に説明出来ない不思議な力で、左方向から漂ってくる僅かな線香の匂いを嗅ぎ取った。 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(27)

ニッケイ新聞 2013年10月19日  アパートに戻ると、中嶋は昨夜洗った法衣にアイロンをかけ、身に着けると数珠を手にした。 「中嶋さん、それは?」 「数珠です」 「カトリコ(カトリック教徒)も『ロザリオ』と云って同じ物を使いますよ」 「そうですか。これは私の一番大事な仏具です」 「しかし、長いなー」 「珠は一〇八個あります。半 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(26)

ニッケイ新聞 2013年10月18日 「そうなんですか」 「それで、これから中嶋さんをどうすればいいか・・・」 「残念でしたね。せっかくブラジルまで来られたのに・・・、それで、中嶋さんはいつ日本へ戻られるのですか?」西谷はそれが当然だと云う顔で言った。  中嶋は突然両手を合わせ一般的な経文を読誦(どくじゅ=そらで読む)し始めた。 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(25)

ニッケイ新聞 2013年10月17日  宿利は驚いた顔で、 「伝道和尚はとっくに日本へ帰っておられますよ」又、ノートを確認しながら、「一九九〇年には日本で洞山寺(架空の寺)の住職になられて・・・」顔をしかめ、首を捻って「もう他界されておられますね・・・」  その最後の言葉にジョージは宿利和尚以上に顔をしかめ、 「えっ! 日本で亡 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(24)

ニッケイ新聞 2013年10月16日  ひと摘みしたジョージが、 「この材料は?」 「冷蔵庫にありました」 「えっ、本当ですか。料理上手の女にふられてから、ずっと買って無いので」 「そうでしたか、だからほとんどが期限切れでした。ですが、もったいないと思い、充分吟味してから使いましたのでご心配なく」 「料理、おじょーずですね」 「 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(23)

ニッケイ新聞 2013年10月15日  午前中に仕事を終わらせ、後を頼りのカヨ子さんに任せ、ジョージは余りにも無責任と云うか、無謀な中嶋に怒りをおぼえアパートに戻った。 「朝のコーヒーまで用意していただいき恐縮です」 「おっ、アパートがきれいになって、中嶋さんが!?」  ジョージは、見違えるようにピッカピカに掃除されたアパートを ...

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